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遊休不動産の活用法

用途の見直し~民泊での運用

川久保文佳川久保文佳

2018/07/31

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イメージ/123RF

不動産の運用について、某不動産会社によると中古マンションでの築年数における下落率は、築1年目で10%、築20年では50%以上になるという統計が出ています。それ以降の経過物件については、下落率の変化があまりなく、横ばいに推移するようです。
その一方で、住み終えた不動産や築20年以上の投資用のマンションの収益率は下落の傾向にあります。この原因は、賃貸物件を探している人が、古いマンションや戸建てではなく、リノベーションや新築物件を希望する人が多く、結果入居率が低下。家賃を下げてでも入居を促すため、収益率が下落しているということのようです。しかも、収益率が下落した物件は、収入が減るばかりではなく、固定資産税や管理費などの費用の負担がオーナーに重くのしかかります。
そこでこうした物件を資産として優位に活用し続けるには、違う用途への転用によって、物件の価値を高めるという施策が必要となってきます。

遊休不動産の利用として、需要のある分野というと、不動産会社に敬遠されがちな高齢者用住宅、障害者用住宅、生活保護者向け住宅、外国人就労者用住宅などがあります。これらの物件は中長期の運用になり、安定した固定の収益が得られというメリットもあります。日本賃貸住宅管理協会の調査によれば、6年以上同じ物件に居住する65歳以上高齢者の割合は62.1%で、一般ファミリー世帯の16.2%を大きく上回っています。また、生活保護受給者に対する住宅扶助金額は東京23区内で、最低で、5万3700円です。

短期の運用なら民泊で

このような中長期な運用ではなく、短期の運用を考えるのであれば、住宅宿泊事業法による一般住宅の宿泊利用(民泊)という方法もあります。民泊への転用に関しては、正規に登録を行うことが必要です。そして、利用を終了するときには廃止届を出します。こうした民泊での活用は、急に売却したい理由ができた場合でも宿泊予約がなければ即時対応が可能です。

2018年6月15日に住宅宿泊事業法が施行され、年間180日以内での民泊運用が本格的に開始されました。民泊での運用については自治体によって利用可能の日数やさまざま条件が異なりますが、いずれにしても、民泊物件のある自治体への各種届出が必須です。届出が完了すると、通知番号が付加され、この番号を元に運営が開始できます。
ただ、民泊として物件を活用するにあたっては、こうした届出だけでなく、マンションの場合、そのマンションの管理規約で民泊使用が禁止になっていないかの確認を忘れてはいけません。
また、その物件が小学校等から100メートル以上離れているなど、各自治体の条例に反していないかどうか(民泊を行う地域の管轄する自治体の保健所に相談)確かめる必要があります。

実際に民泊をはじめる場合に、必要な作業や書類提出が沢山あります。もちろん、個人で届け出を行うことも可能です。しかし、膨大な書類の用意が必要で何度も保健所や消防署、市区町村の建築課などに足を運ぶ必要があるなど、手間がかかります。そのため約15万円~25万円(依頼先・依頼内容により異なる)で行政書士に依頼することも可能です。
こうした民泊の届出をする際、最初に用意しておきたいものとして、室内の内側の寸法の入った詳細な間取り図です。これは、宿泊可能人数を決めたり、消防署で相談をしたり、消防設備の設置などを決める際に必要です。
さらに避難誘導や消火器などの消防設備の追加設置を求められる場合もあります。こうした費用は、建物の構造や広さにより異なりますが、おおよそ50万円~150万円ほどかかり、あらかじめ予算に入れておく必要があります。
加えて、一級建築士によるチェックリストを含めた安全の確認も必要になります。そのため行政書士へ依頼する場合は、こうした費用についても含まれているかを確認しておきます。

これらの書類を整え、いよいよ届出となりますが、その前に、通常7日前までに(各自治体の条例による)、周辺住民への周知を行う必要があります。
これは届出をしようとする物件と同じ建物の外壁から10メートル四方隣接するマンションや住宅などへ指定の内容を含んだ周知内容を記した文書を各戸の郵便受けなどに入れます。
民泊を始めるにあたっては、これら相談から届出番号受理まで早くて3か月から6か月の期間を要します。このように民泊をはじめるには、煩雑な事務作業が必要ですが、賃貸物件として運用利益が出ないマンションや戸建てであれば、検討してみてはいかがでしょうか。

求められる民泊のポイント


リノベをした東京都内の民泊物件 (c)OGW417スタジオ

民泊をはじめるにあたっては、消防設備なども含めて、初期投資に費用が掛かります。そのため民泊として利用する物件は、一定数以上の宿泊費が見込め、早期回収できる2LDKや3LDKなどの広めの間取りの物件がおすすめです。そもそも、民泊は単に安く宿泊できるだけでなく、ホテルなどでは体験できないものを求めて宿泊する外国人たち向けのものです。そのため「泊まってみたい」と思わせる物件であることが重要で、新築やリノベしたただきれいな物件よりも、何らかの特徴があればむしろ古い日本家屋のようなものへの要望が高いという面も持っています。
また、宗教上、外で食事ができないため、自分で炊事をしたいという理由で民泊に宿泊する外国人も多く、こうした利用者は大人数での長期滞在も多いため、家族一緒に大きな空間で過ごせ、その地域の日常を体験し、住んでいるように楽しみたいなどの理由から、民泊を好んで選ぶわけです。

住宅宿泊事業法が施行後、ヤミ民泊の締め出しが強化されています。ヤミ民泊は犯罪の温床になるばかりか、テロ対策という面からもなくしていくことが求められています。
民泊を始めるのであれば、正規法令に沿った届出、運用することが重要です。

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この記事を書いた人

一般社団法人空家空室対策推進協会代表理事/株式会社エアロスペース CEO/ビーモア株式会社代表取締役タナメラジャパン(マレーシアスパコスメ)代表/jasmin(全国民泊同業組合連合会)理事

一般社団法人空家空室対策推進協会代表理事/株式会社エアロスペース CEO/ビーモア株式会社代表取締役タナメラジャパン(マレーシアスパコスメ)代表/jasmin(全国民泊同業組合連合会)理事 北海道函館市生まれ。現在の札幌国際大学 卒業後、リクルート住宅情報事業部にてライターを務めた後、IT企業を経て不動産関連事業へ転身。その一方で、化粧品とサプリメントのコンサルティングや専門家としてのアドバイザー務める。海外派遣先では、フィリピン・タイ・カンボジア・マレーシアなどで日本への輸出入をテーマにセミナーを行うなどマルチに活動している。

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