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平均寿命は通過点? 令和5年(2023)「簡易生命表」を読み解く

朝倉 継道朝倉 継道

2024/08/22

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厚労省が最新の日本人の平均寿命を公表

日本人の平均寿命は、男性81.09歳、女性87.14歳。

厚生労働省が、先月、令和5年(2023)分の「簡易生命表」を取りまとめ、公表している。その内容からいくつか目につくところを挙げていきたい。

なお、前年と比較して、男性は0.04歳上回り、女性も0.05歳上回ったというのが上記の数字だ。他国と比べては、男性は5位、女性は1位となっている。

平均寿命の上位各国
男性 1位 スイス 82.3歳
2位 スウェーデン 81.58歳
3位 ノルウェー 81.39歳
4位 オーストラリア 81.22歳
5位 日本 81.09歳
女性 1位 日本 87.14歳
2位 スイス 85.9歳
3位 フランス 85.75歳
4位 スペイン 85.74歳
5位 韓国 85.6歳

平均寿命とは大きな差がある――死亡年齢最頻値

なお、最近はかなり理解が進んできたが、ここで発表されている平均寿命とは「0歳における平均余命」を指す言葉だ。よって、新生児や乳幼児の頃などに亡くなる人のわずかな年齢も、母数には加わるかたちとなる(それらが平均を押し下げる)。

そのため、われわれがざっと周りを見渡したうえで「このくらいの年齢で亡くなる人が多い」と感じる辺りからは、少しずれた印象ともなりがちだ。

そこで、こうした印象に最も近い数字を挙げるとすれば、「死亡年齢最頻値」がそれに当たるだろう。文字どおり、亡くなる人の数が最も多い年齢のことだ。今回の簡易生命表においては、以下のとおりとなっている。

性別 死亡年齢最頻値 平均寿命
男性 88歳 81.09歳
女性 92歳 87.14歳

見てのとおり、平均寿命との差がかなり開いている。

よって、いわゆるライフプラン―――とりわけマネープランを考える際の設定としては、平均寿命ではなくこれらをフィニッシュラインの下限に据えておくのが無難といえるだろう。実際、多くの人が平均寿命を超えて生きるということだ。

長生きとは何歳以上をいうのか?――寿命中位数

日本人が、平均ではなく「平均的」にどのくらいまで生きるかにあっては「寿命中位数」というデータもある。

出生者の内、半数までが生存すると現状期待される年齢として算出されるもので、これを超えて生きている場合、その人は「長生き」と認定されてよいことになるだろう。

性別 寿命中位数 平均寿命
男性 83.99歳 81.09歳
女性 90.02歳 87.14歳

見てのとおり、女性は90歳を超えている。80代そこそこで亡くなると「まだ若いのに」と、女性は惜しまれることにさえなりそうだ。

高齢者でいる期間――男性約20年・女性約25年

平均余命を見てみたい。2つの年齢をピックアップする。

65歳の平均余命 男性 19.52年
女性 24.38年
75歳の平均余命 男性 12.13年
女性 15.74年

なお、上記のうち、65歳といえば「前期高齢者」となる年齢だ。75歳で「後期高齢者」となる。

しかし、見てのとおりだ。65歳時にあっての平均余命は、いまや男性にして20年近く、女性にして25年近くにも及んでいる。これらの期間を老後と呼ぶにはいかにも長い。余生とするにはあまりに果てしない年月となる。

そこで、課題が2つある。

ひとつは制度の問題となる。65歳以上を高齢者と定義した上でのさまざまな制度設計には、いい加減無理が生じている。先般、経済財政諮問会議でも提言されたが(5月)、高齢者における年齢の公的基準の引き上げは、反発が出やすいものにはなるが、もはやあって然るべきだろう。

さらには、健康寿命となる。読者も知るとおり、亡くなるまでの寿命ではなく、高齢化に伴う健康上の問題によって、日常生活に制限が生じるまでの期間を指してこのように呼ぶ。

健康寿命は、統計上、男性で平均寿命を9年程度、同じく女性で12年程度下回るかたちで近年は推移していることが知られている。よって、先ほどの死亡年齢最頻値や寿命中位数に照らせば、それらと健康寿命との差はさらに増えてしまう。すなわち、われわれが老いて死を待つ間、不健康でいる時間は、平均的にかなり長い。

そこで、この差をぜひわが国は今後縮めていきたいものだ。健康との両立が長く続いてこそ、長生きはより幸福なものになる。

波平さんは54歳

簡易生命表の中にある、平均寿命の年次推移を見ると、昭和22年(1947)においては、男性が50.06歳、女性が53.96歳となっている。ちなみに、この前の年、漫画「サザエさん」の連載が始まっている。

同作に出て来る、主人公サザエさんの父親である波平氏は、設定上54歳とされているが、その容貌等を見るに現在は信じがたい。75歳を超えたおじいちゃんであってもおかしくないくらいの雰囲気だ。

また、その波平氏のパートナーであるフネさんは、夫よりも若干年下の妻である設定とのこと。明確ではないものの、当初40代後半の人物として描かれ始めたらしい。しかしながら、彼女も波平氏同様に、いまどきの目から見るとまことに優雅なおばあちゃんの貫禄にあふれている。

われわれ日本人は、戦後の高度成長期以降、豊かさとともに世界が羨む長寿を手に入れた。と、同時に、われわれ自身が驚くほどの「若さ」も手に入れている。言祝ぐべきことといってよく、これを活かさない手はもちろんない。

とりわけ、筆者は多くの意見同様、このことをスポーツも含めた教育市場においてのチャンスと感じている。リスキリングなどという、何やら切迫したイメージの話ばかりでなく、大学はじめ教育機関は、もっと明るいアプローチをもって「若さ」が溢れるいまの時代に絡んでいくのがよいだろう。大人が学ぶことは、いわゆる老害防止のためにも大いに役立つはずだ。

厚労省「令和5年簡易生命表」については、下記リンク先にて概況をご覧いただける。

厚生労働省 令和5年簡易生命表の概況

(文/朝倉継道)

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この記事を書いた人

コミュニティみらい研究所 代表

小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。

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