やはり凄まじかった2023年の猛暑 東京は記録を幾つも更新 涼しい勝浦市が話題に
朝倉 継道
2024/01/19
記録的高温の年となった昨年
年が明け、昨年――2023年の天候について、その異様さを示す数字が気象庁から公表されている。春から秋にかけ、暑い時期が長く、大変厳しかった印象が残る去年のデータだ。
まず、国内の年平均気温となる。
全国153の観測地点のうち、実に7割を超える109地点が高さ記録を更新している。加えて、5地点が過去の最高に並ぶ数字を残した。
なおかつ、記録更新やタイ記録への到達がなかったところも含め、全ての地点において年平均気温の平年差はプラスとなっている。
そのうえで、国土を4区分した(北日本、東日本、西日本、沖縄・奄美――の各予報区分)結果を挙げると、そのうち3地域において以下のとおりとなっている。
北日本 | 46年の統計開始以降1位 |
東日本 | |
西日本 | 46年の統計開始以降1位タイ |
なお、これらについては、先般1月4日付の気象庁報道発表資料「2023年(令和5年)の日本の天候」において、さらに詳しい。
異様な線を描くグラフ
こうした状況を受け、あるグラフが異様な線を描いている。「日本の年平均気温偏差の経年変化」と、いうものだ。
(気象庁各種データ・資料「日本の年平均気温偏差の経年変化(1898~2023年)」より引用)
このうち、濃いグレーの折れ線は「平均気温の基準値(91~20年の30年平均値)からの偏差」を表している。
見てのとおり、そのもっとも右に位置する昨年=23年のデータが、より暑い方向、すなわち上に向かって異常な跳ね上がりを見せている。
偏差の値は、+1.29℃とのことで、1898年の統計開始以降、最高の数字となっている。読み間違えてはいけない。1898年だ。明治31年となる。
なお、これにかき消された格好だが、上記の「跳ね上がり」のすぐ脇にも注目したい。上方に向かっての偏差(正偏差)が大きな年が、近ごろ集中しているのが分かる。並べるとこうなるわけだ。
1位 | 2023年(+1.29℃) |
2位 | 2020年(+0.65℃) |
3位 | 2019年(+0.62℃) |
4位 | 2021年(+0.61℃) |
5位 | 2022年(+0.60℃) |
なんと、全てが過去5年以内の数字となる。
つまり、昨年まで、われわれは例外的な4年間と、超例外的な1年をすでに過ごしてきたことになる。そのうえで、これが6年に伸びるのか? 判明するのは今から1年ほどのちのこととなる。
東京では暑さランキング1位が次々更新
次に、東京の数字を拾ってみよう。気象庁がわかりやすいランキングをまとめている。(気象庁・過去の気象データ「観測史上1~10位の値・東京」)
観測史上1~10位の値(年間を通じての値)が、どの年に記録されたかについて、さまざまな項目にわたって網羅し、順位付けしたものだ。
東京における「暑さ」に関する部分を見ると、以下においての1位が、昨年のデータによって更新されている。
年平均気温(高い方から) | 17.6℃ | (2位 04年 17.3℃) |
項目 | 年間日数 | 2位の記録 |
日平均気温25℃以上 | 95日 | (2位 10年 92日) |
日最高気温25℃以上 | 143日 | (2位 22年 140日) |
日最高気温30℃以上 | 90日 | (2位 10年 71日) |
日最高気温35℃以上 | 22日 | (2位 22年 16日) |
日最低気温25℃以上 | 57日 | (2位 10年 56日) |
見てのとおり、昨年の東京においては、実に1年の4割近くが夏日(日最高気温が25℃以上の日)で、そのうち8割近くが真夏日(同30℃以上)や猛暑日(同35℃以上)だった。
さらに、今回1位の座を奪われた2位の記録にも注目しておきたい(カッコ内)。6項目全てが00年を過ぎてからのもので、そのうち5つは10年代以降となる。
猛暑の年、話題となった千葉県勝浦市
そんな昨年の猛暑のさなか、話題になった町がある。千葉県の勝浦市だ。
この町は、一般的には「温暖」がイメージされる南房総エリアの海沿いにある。東京の中心部からは車で1時間半と少し程度(東京湾アクアライン経由)、さほど遠くない。
この勝浦市における近年のキャッチフレーズといえば、「100年以上猛暑日がない町」だ。この町は、実際に涼しいのだ。
東京よりもやや南に位置し、軽井沢や奥日光のような高原地帯でもないのに、夏はある程度の避暑が可能なほどの気候に恵まれるこの町にあっては、昨今メディアの注目を浴びる機会がめっきり増えている。
さきほどの東京のデータと比べてみよう(23年)。
年平均気温 | 東京 | 勝浦 |
17.6℃ |
項目 | 年間日数 | |
東京 | 勝浦 | |
日平均気温25℃以上 | 95日 | 76日 |
日最高気温25℃以上 | 143日 | 112日 |
日最高気温30℃以上 | 90日 | 48日 |
日最高気温35℃以上 | 22日 | 0日 |
日最低気温25℃以上 | 57日 | 32日 |
見てのとおり「日最高気温35℃以上年間日数」が、勝浦市の場合ゼロとなっている。この昨年の記録をもって、同市の“猛暑日がない”年数については、統計開始以来118年をカウントした。
ちなみに、この町が涼しい理由について、原因は付近の海にあるとのこと。水深が陸地近くから急に下がっているのだそうだ。
そのため、海中の深い場所にある冷たい海水が、夏の南風に押し流された上層部の温かい海水の下から上昇し、それが空気を冷やすらしい。
冷えた空気が海風となって陸に届くことで、辺りでは涼しさが維持されるのだそうだ。
(勝浦の気候についてさらに詳しくは、気象庁・過去の気象データ「観測史上1~10位の値・千葉県勝浦」を参照)
世界の気温は?
以上、「やはり凄まじかった2023年の猛暑」と題して、全国、東京、さらに千葉県勝浦市のデータのうちいくつかを紹介した。今は1月後半、凍える大寒の季節だが、次の夏はさほど遠くない。もう半年もしないうちに、またやって来ることになる。
ところで、日本以外の「世界」においては、昨年の暑さはどうだったのだろう?
答えは、わが国と同じだ。
たとえば、アメリカのNASA(航空宇宙局)は、1月12日付のリリースで、「23年は現在の観測記録が始まった1880年頃以降、地球上が最も暑い年になった」としている。
さらに、気象庁による「世界の年平均気温」も間もなく更新されるはずだ(2月予定)。国内同様、異様なグラフがそこには掲げられることになるだろう。
暑さが、人間の知的活動や知能にマイナスの影響を及ぼすとの研究結果も、信頼度はさまざまながら、近ごろはあちこちに見られる。
人生設計を描くなかで、猛暑からいかに逃れるかをポイントのひとつに加える人も、これからは増えていくのかもしれない。
(文/朝倉継道)
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この記事を書いた人
コミュニティみらい研究所 代表
小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。