ウチコミ!タイムズ

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

親の介護から夫・妻の介護へ。中高年者縦断調査――団塊世代のいまを垣間見る

朝倉 継道朝倉 継道

2023/12/13

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

団塊の世代を包み込む調査対象

厚生労働省がこの11月15日に18回目となる「中高年者縦断調査」の結果を公表している。

この調査の興味深いところは、タイトルどおり、時間を縦断したかたちで集計が行われている点にある。ある年代の人々を対象に、就業状況や世帯の様子、健康といった数字の変化を年ごとに追っていくものとなる。(今回の集計人数16,043人)

ある年代の人々とは、「2005年10月末時点で50~59歳だった全国の男女」を指す。生年月でいうと、1945年11月から1955年10月までの人がこれにあたる。このなかには、いわゆる団塊の世代(1947~49年生まれ)が含まれている。ちなみに、タイトルは「中高年者」だが、現在はすでに全員が65歳を超え、高齢者となっている。

いくつか内容をピックアップしていこう。

増える「単独世帯」「夫婦のみの世帯」

世帯のかたちとしては、「単独世帯」と「夫婦のみの世帯」の増加がさらに進んでいる。

第1回調査(2006年公表)
単独世帯 4.7%
夫婦のみの世帯 21.4%
第17回調査(前回・2022年公表)
単独世帯 12.3%
夫婦のみの世帯 46.7%
第18回調査(今回)
単独世帯 13.1%
夫婦のみの世帯 47.3%

今回の調査では、単独世帯と夫婦のみの世帯を合わせた割合が6割を超えた。第1回調査(26.1%)からの増加が著しい。

そのため、このあとは夫婦のみの世帯における単独世帯化(夫、妻のいずれかが亡くなる)が、漸次進んでいくことが今のところは予想されるが、一方、こんなデータもある。

「親なし子ありの世帯」の数字だ。

第1回調査(06年公表) 39.5%
 
第14回調査(19年公表) 25.0%
第15回調査(20年公表) 24.5%
第16回調査(21年公表) 24.1%
第17回調査(22年公表) 24.0%
第18回調査(今回) 23.8%

このとおり、対象世代におけるその子どもが「親と同世帯にいる」割合が、ここ数年、減少傾向を鈍らせている。

高齢者世帯単独世帯化の進行は、子ども世代の動向によって今後抑えられるのか? 両データの関係と推移が気になるところとなる。

親の介護は減少が進み、配偶者の介護が増加

上記、世帯のかたちとも関連するものといえるだろう。

以下は、「親族の介護をしている人」における「介護の相手は誰か?」についての割合となる(複数回答)。

第1回調査(06年公表)
介護の相手が「親」 91.7%
介護の相手が「配偶者」 (配偶者は第1回目では調査項目に無かった)
第4回調査(09年公表)
介護の相手が「親」 89.1%
介護の相手が「配偶者」 3.0%
第18回調査(今回)
介護の相手が「親」 56.6%
介護の相手が「配偶者」 23.8%

親への「老・老」介護が終わったあと、次には配偶者への「老・老」介護が始まるといった(あるいは両者平行も?)負担の過重な例の存在や増加も、想像される数字となっている。

6割以上が仕事をリタイヤ

就業の状況を見ると、まず「仕事をしていない」の増加が目立っている。

 
第1回調査(06年公表) 「仕事をしていない」  18.2%
第18回調査(今回) 「仕事をしていない」 61.8%

また、これに合わせるようなかたちで、「仕事をしている――正規の職員・従業員として」の割合が大きく減っている。

 
第1回調査(06年公表) 「仕事をしている 正規の職員・従業員として」 38.6%
第18回調査(今回) 「仕事をしている 正規の職員・従業員として」 2.6%

この間、当調査の対象となっている世代は、いわゆる定年退職の波に洗われている。その結果が如実に表れたものといえるだろう。

自営業主はまだ多くが現役

一方で、こちらの数字の減少は大変ゆっくりだ。

 
「自営業主、家族従業者」 第1回調査(06年公表) 15.3%
第18回調査(今回) 11.9%
「会社・団体等の役員」 第1回調査(06年公表) 4.7%
第18回調査(今回) 2.6%

これら、ざっと「経営者」クラスにあっては、調査対象者全員が60歳に満たず、若かった時点でも、すでに全員が高齢者となっている現在においても、いわゆる“現役”である割合がさほど落ちていない。これは、人の働き方、生き方等、人生や社会においてのさまざまな事柄を示唆する数字になるはずだ。

仕事はやめるとしたくなくなる?

こんな数字も挙がっている。今回調査において「仕事あり」と回答した人へ、今後の希望を尋ねた結果だ。

今回「仕事あり」を答えた人
68~69歳になったときも仕事をしたい 80.3%
70~74歳になったときも 同 59.1%
75歳以降になったときも 同 27.2%

このとおり、全体的に働くことへのモチベーションが高い。

一方、今回「仕事なし」と回答している人の場合はこうなる。

今回「仕事なし」を答えた人
68~69歳になったときも仕事をしたい 14.5%
70~74歳になったときも 同 11.2%
75歳以降になったときも 同 5.0%

見てのとおり、数字が愕然と下がってしまう。興味深い結果といえるだろう。

これらは、もちろん一概な分析を許されるデータではない。だが、ひとつ述べるとすれば、われわれの多くは(全員ではない)、一旦定職的な仕事をやめると、その後はよほどのエネルギーが注がれない限り、二度と働きたくなくなる傾向を備えているのかもしれない。

つまり、そう簡単には人生、リフレッシュ&リブートとはいかないのではないかということだ。このことは、年齢を限らず、人生の展望に組み入れておくべき要注意点といえるだろう。

以上、厚労省の第18回「中高年者縦断調査」の結果から、興味深い内容をいくつかピックアップして紹介した。その他の調査結果は下記にてご覧いただける。

厚生労働省「第18回中高年者縦断調査(中高年者の生活に関する継続調査)の概況

(文/朝倉継道)

【関連記事】
選ばれるべきは「住む人が健康でいられる」賃貸住宅 国交省の検討会がスタート
デジタル終活——データやSNSのアカウントはどうすればいいのか


無料で使える空室対策♪ ウチコミ!無料会員登録はこちら

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

この記事を書いた人

コミュニティみらい研究所 代表

小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。

ページのトップへ

ウチコミ!