「量産タイプ」と「1000番台」――機能と価格差は? キャラクターやハイテク機能付き……壁紙選びで知っておきたい基礎知識
内村恵梨
2020/02/09
壁紙のメーカーの違いと得意分野は?
まずは日本国内で使用されている壁紙の主要メーカーと、それぞれの特徴をご紹介します。
<国内主要壁紙メーカー>
・サンゲツ
・リリカラ
・東リ
・シンコール
・ルノン
・トキワ
サンゲツは業界最大手のメーカーです。クロス職人の方は、サンゲツを好んで材料選びをする方が多いように思います。定番で、施工性が良いというイメージだそうです。スヌーピーの壁紙もあります。全国8か所(品川、大阪、名古屋、福岡、仙台、金沢、広島、沖縄)にショールームがあります。
リリカラはデザイン性が高いのが特徴で、ミッフィーやウィリアム・モリスの壁紙などブランドコレクションも豊富です。東京、大阪、福岡にショールームがあります。
東リは床材の歴史が長く、シェアも高いメーカーです。「リアルデコ」という石目や木目調の素材をリアルに表現した壁紙や、不燃認定壁紙など、商業施設にも適したラインナップが豊富。札幌、東京、名古屋、大阪、岡山、高松にショールームがあります。
シンコールは、リラックマやキキララ、ハローキティ、ウォーリーなどのキャラクターものが豊富なのに加え、夜になると柄が光る蓄光壁紙など、子供部屋に喜ばれそうなラインナップが豊富です。ローラアシュレイのビニール壁紙もあり、乙女心をくすぐります。北海道、仙台、新潟、金沢、東京、名古屋、大阪、広島、福山、高松、福岡、沖縄にショールームがあります。
ルノンは、ディズニーのキャラクターがさりげなく柄に入った大人っぽいディズニー壁紙や、「空気を洗う壁紙」という消臭効果の高い壁紙のシリーズが人気です。
トキワは「コットンソフィーナ」という通気性に優れた自然素材の壁紙や、「デニムウォール」という、デニムメーカーとコラボした新素材デニム壁紙、アニメ「ワンピース」の壁紙なども取り揃えています。
どのメーカーも種類は豊富で、実際の壁紙をまとめたカタログが用意されています。でも、カタログだけを見ても、実際に壁紙を貼ったときの雰囲気はつかみにくいので、メーカーのショールームに足を運んで、大きなサンプルを見て参考にするのもおすすめです。
価格の違いはどこにある?
一般住宅で使われることの多いクロスは、「ビニールクロス」と呼ばれ、表面に塩化ビニール樹脂の層があり、紙の層が裏打ちしてあります。ビニールクロスは施工性が良く種類も豊富、手入れもしやすいので、住宅の90%で使用されていると言われます。
ビニールクロスは大きく分けて「量産」タイプと「1000番台」タイプに分かれます。「量産」というのは言葉の通り、大量生産されているベーシックな商品です。価格も仕入れ値で140円/m程なので、予算をかけられない物件や、手軽にリフォームしたい、という時にはもってこいです。
材料に厚みがあり、下地の凸凹もひろいにくいので、職人さんにとっても施工しやすく、DIYの方にも扱いやすい材料です。色の種類はあまり多くありませんが、部屋の一面だけアクセントカラーを入れたい場合にも使えるブラウン/グレー/ネイビーなどはそろっています。
サンゲツを例にすると、カタログの表紙に「SP」「EB」と書いてあるのが量産クロスのカタログです。
一方、「1000番台」と呼ばれるクロスは、量産以外のものを指します。標準価格(定価)が1,000円/mなので、1000番台と呼ばれていますが、実際の仕入れ値は300円/m程です。量産カタログよりも色柄が豊富で、消臭や抗ウイルス、マイナスイオン、傷に強いなどといった機能性を備えたものも多くあります。
また、1000番台の中でもさらに大きく2種類にわかれ、リフォーム(貼り換え)向きの厚みのある素材のものと、新築施工向きの薄い素材のものとがあります。
サンゲツのカタログを例にあげると、「リフォームセレクション」というカタログはリフォーム向きの少し厚みのある壁紙がラインナップされ、「ファイン」「リザーブ」などのカタログは主に新築時に選ばれる薄めの壁紙が多いです。
1000番台のカタログの中には、画鋲を刺しやすい弾力性を持つ「掲示板クロス」や、書き込みのできる「ホワイトボードクロス」、マグネットで掲示などができる「マグネットクロス」などもありますが、これらの特殊なクロスは価格が他のものより高くなります。
機能もさまざま、その効果のほどは?
上記では、1000番クロスには機能がついたものがあるとお話しましたが、量産クロスにも防カビや表面強度アップ、抗菌、撥水コートしたものなどはあります。1000番台ではそれに加え、たばこやペットのにおいの消臭やマイナスイオンがでるものなどもあり、どんどん進化しています。ここからは機能性クロスの、それぞれの機能についてご紹介していきます。
■防カビ
カビの発生、繁殖を防ぐ
■軽量
材料が軽量化されているので、施工する人に負担が少ない。天井が貼りやすいなど
■表面強度アップ
一般ビニル壁紙に比べて表面が丈夫でキズがつきにくい
■フィルム汚れ防止
特殊フィルムが表面にラミネート加工されているので、汚れがふき取りやすく、キズにも強い
■ウレタンコート
汚れ、傷に強く、貼りあがりもきれい
■スーパーストレッチ
下地が動きひび割れしやすいところなどに
■消臭
壁紙表面に消臭剤を加工。生ごみやトイレ、ペット臭、タバコなどのニオイを吸着・消臭する
■抗アレルゲン
表面に薬剤が塗布されており、アレルギーを引き起こす物質(花粉、ダニなど)と接触したときにその働きを抑制する
■抗ウイルス
抗ウイルス性成分が、壁紙の表面に付着したウイルスを減少させる
■マイナスイオン
壁紙の表面にマイナスイオンを発生させる天然鉱石を配合。リラックス効果が期待できる
■吸放湿
壁紙に配合された吸水性ポリマーが湿気をコントロール
■通気性
湿気が壁紙を通り抜けるので、下地の石膏ボードが吸放湿
どのメーカーさんも、上記のような機能のついたクロスを開発し販売しています。ただ、実際どのくらいの効果があるのか?というところ。
クロス職人さんに聞いたところ、表面強化や汚れ防止などは、実際に傷がつきにくく、汚れも落ちやすいようですが、消臭や吸放湿系の機能は、そんなに大きく実感はできない、とのこと。まったく、効果がないというわけではないでしょうが、そのあたりはそれぞれの気持ち次第なのかもしれません。壁に接触する部分の空気には何らかの働きかけがあったとしても、部屋の中の空間全て、というわけにはいかないのでしょう。
防カビも、結露してしまうような部屋だと、どうしたって防ぎようがありません。除湿器や換気扇をまわす、二重窓にする、など他の対策が必要です。
また、機能性クロスは素材が薄めのものや、表面が硬いものなど、施工性が良くない場合があるので、下地の凸凹が出やすかったり、ジョイント部分(クロスとクロスの継ぎ目)が目立ちやすくなったりする可能性もあります。
機能性クロスがどうしても気になる場合は、まずは施工業者さんに相談してアドバイスをもらうことをお勧めします。
失敗しない壁紙の選び方のポイントは?
ここまでで、壁紙にはさまざまな種類があることがお分かりいただけたかと思います。最後に壁紙を選ぶ際に絞り込んでいくためのポイントをお伝えします。
1.部屋をどんな雰囲気にしたいか決める
家具との相性や、実現したい部屋のイメージを思い浮かべ、おおよその色や柄を考えます。
2.予算感を決める
金額を抑えて量産クロスにするのか、上質な雰囲気を出すために1000番台などを使うのか、を決めていきます。
3.場所によって機能クロスを採用するか決める
家の壁の中で汚れやすい部分や傷つきやすい部分には、機能クロスの導入を検討します。
4.施工業者さんにお願いする場合は、おすすめをピックアップしてもらう
国内の主要壁紙メーカーだけでもいくつもあるので、一から自分で選ぼうとすると悩んでしまいます。1~3で方向性を決め、希望やイメージを施工業者さんに伝えて、おすすめをいくつかピックアップしてもらうといいでしょう。
一般的な白系のシンプル壁紙であれば、どのメーカーもそんなに大きくは変わりません。特別な柄物や、機能性クロスを取り入れたい場合は、具体的に希望を伝えましょう。
下地の状態や施工場所によっては、希望の壁紙が適さない場合もありますし、施工難易度が高い材料だと施工料金が上がることもあります。
いかがでしたか? 今回は数多くある壁紙(クロス)の種類についてご紹介しました。これだけの種類があるということをまず知ることで、選択の幅が広がりますね。壁紙は部屋の印象を大きく左右するので、ぜひ納得のいくものを選んでみましょう。
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この記事を書いた人
匠アカデミージャパン 事務局長 (運営:株式会社イマジンネクスト)
匠アカデミージャパンは2016年に開校した内装リノベーションのスクール。 単にDIYのノウハウを教えるスクールではなく「人生100年時代の大人の学び直し」の場として、副業やセカンドキャリア、定年後の生き生きとしたライフスタイルに生かせる技術を身につけることを提唱している。 講習内容は、クロスや床材の張り替えや、賃貸住宅大家さん向けワンルームの原状回復コースなど、まったくの経験のない方に対してDIYを超えた職人の技を伝授。照明プランニングや内装コーディネートのセミナーなども開催中。 http://www.takumi-ac.jp/