日本の大都市部「地価」の上昇は続くのか。現状を支える要因と今後の展望を探る

2026/03/26
上昇の一途をたどっているわが国の大都市部を中心とした地価。今後はどうなるのか。外国からの投資、金利、インバウンド需要など、現在の状況を支える要因とともに展望を示していく。一部で見え隠れしている調整の可能性にも触れる。
現在の地価上昇はいつから始まったか
大都市部を中心に、日本の地価が上昇の一途をたどるようになって久しい。先般2月20日に国土交通省が公表した主要都市の高度利用地地価動向報告( 通称「地価LOOKレポート」)によれば、対象となる80地区(全国の都市部住宅地22地区および商業地58地区)の全てにおいて8四半期連続での地価の上昇傾向が確認されている。すなわち2年にわたっての継続だ。加えて、地価「横ばい」地区は少数残るものの「下落」地区が無い状態はそれまでに5四半期続いていた。両方通算では今期が13期目となる。つまり3年と3カ月の間、地価LOOKレポート全地区において地価が下がるような状況は生じていない。
そのうえで、この3年3カ月という期間は、2020年以降しばらく続いていた「コロナ禍」による地価への重しが取れて以降のものとなる。すると、その前はどうだったのかというと、コロナ直前の19年第4四半期まで、やはり下落地区ゼロの状態が続いていた。始まりは14年第3四半期となる。13年4月に日本銀行による「異次元緩和」が始まってから1年余りを経た頃となっている。いわばエンジンが温まったタイミングといっていいだろう。なおかつ、この時期は日本経済がリーマン・ショックの影響から脱したのち、その回復があらゆる市場に行き渡った頃にも当たる。地価はこうした環境のもと、いまに続くトレンドに乗ったといえるだろう。すなわち、コロナに一時期冷や水を浴びせられはしたものの、日本の大都市部を中心とした地価は、すでに11年を超えて実質右肩上がりの途上にある。
安心の国・日本の地価は上がり続ける
さて、そのように上がり続けているわが国の大都市部を中心とした地価だが、今後はどうなっていくだろう。コロナ禍のようなパンデミックや戦争、巨大な自然災害、リーマン・ショックのような世界的金融危機といった突発的要素を除いたうえで展望してみたい。まずは向こう3年程度の予測だ。この間も上昇傾向は維持されるだろう。なお、その最たる要因は海外にある。わが国の低金利と円安、さらには日本の土地・不動産に対する安全な資産としての高い評価だ。
2月初めのこと。ロイター通信が報じたところによると、アメリカに本社を置く世界最大手とされる事業用不動産関連サービス企業グループ「CBRE」の調査結果において、東京が首位に挙げられている。アジア・太平洋地域におけるクロスボーダー(外国への)不動産投資の対象として、最も魅力的な市場とのことだ。なお首位は今回だけではない。7年連続となる。理由は主に資金の借入れにかかわる低いコストとされている。要は円安、低金利がものを言っている。だが、筆者はこれに増して重視すべき点があることを指摘したい。それは、日本の突出した安定性だ。たとえば他国のレベルに比べ著しく混乱の少ない政治と社会、法制度とその執行における高い信頼性、衰えたとはいえいまだ世界上位の経済規模、かつ経済活動が自由なこと、加えて充実した軍備やアライアンス(同盟・同志国関係)による有事の懸念の薄さなど、日本ほど投資家が安心できる国はそうあるものではない。そのことは、自らが一定以上の資金を持つ外国人投資家になったと思えばすぐに理解できることだ。
金利も高いレベルには到達しない
一方、低金利といえば、日銀は現在政策金利を順次引き上げる道を選択している。1月22・23日に行われた金融政策決定会合では、誘導目標0.75%と据え置かれたが、これは前月実施したばかりの利上げを考慮したものと決めつけていい。つまり日銀の姿勢にまったく変化はない。物価や賃金の動向に注視しながらも、わが国の実質金利は現状きわめて低い水準にあるとして、利上げを継続するというのがいまの日銀の明確な方針だ。
とはいえ、今後も日銀は徹底して慎重に動くだろう。なぜなら、アメリカの関税はじめ不確実な要素が世界中に目白押しのなか、日本の現在のインフレについて、その持続性への見極めを誤ることを日銀も政府も恐れている。うかつな利上げによって消費を冷やし、再びデフレを招くわけにはいかないということだ。そのため、目下専門家の多くも今年から来年にかけての利上げは3回、増えても4回に留まるだろうとしている。かつ、予想される上げ幅は0.25ポイントずつになる。いわば石橋を叩いて渡る水準だ。すると、利上げが4回の場合でも27年末時点での金利は1.75%に留まる。28年中にようやく2%に届くかといったところだ。そのうえで、これをアメリカなどと比べると、やはりその時点でも日本の金利が相対的に低い水準にある可能性は高いと筆者は見る。連動して円高への傾向は抑えられ、日本への投資環境にあっては依然低コストが維持される。わが国への海外からの不動産投資が魅力的な状態はまだしばらく続くことになりそうだ。
インバウンド・マンション・再開発
日本の大都市部地価が上がり続けている理由としては、述べたような国外からの投資要因のほかにも重要なものが3つ挙げられる。ひとつはインバウンドだ。訪日旅行客需要に向けた投資となる。なお、これについては現在中国との関係がぎくしゃくしている。中国人観光客の数も目立って減少中だ。だが、これに関しては逆にこうもいえる。中国以外の国とは何ら問題は生じていないということだ。あのロシアとさえこの面では良好だ。ロシアからの昨年の訪日外客数は前年比+96.3%となっている。まさに「爆増」といえるだろう(日本政府観光局――JNTO・1月公表の推計値)。そのうえで、仮に中国人観光客の数が今後回復せず、現在のレベルが通常のものになったとしよう。筆者は、他国の旅行者に加え国内需要の伸びがこれをある程度埋めていくと思っている。すなわち市場は総体として大きくは縮まない。それにともなって不動産投資も継続するわけだ。なお、これは感覚論だが、日本人の消費はモノへの消費からいわゆるコト消費、体験消費といったものにこれからさらにシフトしていくだろう。時間消費とも呼ぶべきものだ。かつ、その中心が旅行となる。なぜなら、観光のみならずスポーツ観戦も推し活も、そのほとんどは大小の旅行をともなう活動だ。昨年の日本人による国内旅行消費額はすでに暦年で過去最高となっている。旅行単価(1人1回当たり旅行支出)もまた同じ結果を示している(観光庁・2月公表の速報値)。
マンションについては、ご承知のとおり旺盛な用地確保の動きが大都市部の地価を長期にわたり押し上げ続けてきている。だが、一方で分譲マンション全体の新設は減る傾向だ。特に首都圏ではそれが顕著に見られている。すなわち、25年の着工戸数は約4万戸に留まった。コロナ禍の影響を受けた20年の約5万4千戸、同じく21年の約5万戸をも大きく下回っている(国土交通省・建築着工統計)。とはいえ、他の大都市圏や地方の拠点都市を中心に、まだしばらくの間マンションはその建設に伴い地価の上昇を促す基盤となるだろう。住人の高齢化を主な要因とする郊外から街の中心部への人口移動が、さらに続くと見られるからだ。
再開発も、これまでの地価上昇において重要な基盤となってきた。とりわけ大都市中心部における街の再開発は、もともと繁華な場所で行われるため自ずと認知度が高くなる。そのため、その経済効果に対する期待値をことさら高める性質を併せ持つ。そのうえで、この「期待」という感情こそが投資を惹きつける基本であるため、地価への寄与も相応に膨らむこととなるわけだ。もっとも、昨今は建設費高騰の波が激しくここに打ち寄せている。その結果、たとえば東京都心においても中野サンプラザ跡地や新宿駅西南口地区といった著名な場所での計画の頓挫が全国レベルのニュースにまでなっている。なお、わが国の建設コストは今後高止まりしたままとなる可能性が高い。よってこれをあらかじめプロジェクトに織り込んでおくいわば平準化は、こうした悶々としたかたちをいくつか重ねながら進んでいくことになるだろう。ただし、一方で先ほどの「期待」はその間も維持される。工事を待つ空き地が新宿駅前に広がっているからといって、それが新宿の地価を押し下げる要因にはならないのだ。住人が消え、やがて山林に戻る土地とは意味が違うということだ。
見え隠れする「調整」の気配
以上、向こう3年程度の予測ということで、この間もわが国においては大都市部を中心に地価の上昇は続く見通しを掲げた。そこで、もう少し手前の話をしておきたい。もしかすると今年以降の近い時期、特に東京の地価においては、いわゆる調整のタイミングが訪れるかもしれない。上昇傾向の中にあっての「谷」の出現だ。
「東日本レインズ」の通称で知られる(公財)東日本不動産流通機構による本年1月度のデータをひもといてみよう。以下は、一都三県および大阪府における「土地」の㎡単価について、当月レインズへ「新規登録」された物件のデータと「成約」報告のあった物件のデータを並べたものだ。

このとおり、新規登録物件に比べ成約物件の単価が低いのは東京都と大阪府になるが、東京においては両者の差がかなり開いているのが見て取れる。前者に対し、後者の数字は13.5%ほど下がっており、売り手が望む価格まで買い手が手を伸ばせずにいる状況が窺える。
さらに、物件の面積を100~200㎡に限った場合の数字はこうなる。一戸建ての敷地の広さをおよそあてはめたものになるだろう。

見てのとおり、差はさらに広がり、成約側が約16.4%下がる結果となっている。
なお、土地に限らず、分譲・中古マンション然り、家賃然り、東京の不動産においては価格に対する供給サイドと需要サイド、それぞれの思惑の乖離が昨今顕著なものとなってきている。こうした状況下では、需要サイドに高値づかみを恐れる心理が広がりやすいため、どこかの線を超えた瞬間、一気に市場が動く可能性が否めない。よってそうした意味での「調整」に警戒が必要な時期が、現状訪れていると筆者は感じている。
増える「値が付かない土地」
最後に、大都市部以外の地域だ。地価はこれからどうなっていくのだろう。答えは簡単だ。そこには進んでいく一方の人口減少ばかりが存在する。観光需要または何かの産業とその関連事業が集中するといった例を除いては、地価は中長期的にも短期的にも下がっていくというほかない。
そのため、大都市部への人口流出も相まって、値段が付かない土地、すなわち金銭的には無価値となる土地がこれからわが国にはどんどん増えていく。これらについて、当面はハードインフラおよびソフトインフラの解体、処分、撤収、続いては治安維持や防衛、とりわけ国境警備体制の強化がわれわれの重要課題となっていくだろう。すると、たとえば北海道では、漫画・アニメの「ゴールデンカムイ」に出てくるようなアイヌモシリの風景が再び各地に戻って来る。ヒグマの闊歩する広大な大地だ。足も踏み入れ難いものになる。
よって、土地に値段は付かないが、それとは違う別の価値がそこには満ち溢れているかもしれない。
この記事を書いた人
コミュニティみらい研究所 代表
小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。





















