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2024年「都道府県地価調査」(基準地価) 32年ぶりに「地方」でも地価上昇

朝倉 継道朝倉 継道

2024/09/28

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地方圏(その他地域)・全用途平均が32年ぶりの上昇

この9月17日、国土交通省が「令和6年(2024)都道府県地価調査」の結果を公表している。「基準地価」の呼び名でも知られるものだ。いくつかトピックを挙げていきたい。

まず、主要な変動率を見ていこう。最初は全国平均だ。全用途平均、住宅地、商業地のいずれも3年連続で上昇し、上昇幅も拡大している。なお、カッコ内は前年分の数字となる(他も同じ)。

全国平均
全用途 +1.4%(+1.0%)
住宅地 +0.9%(+0.7%)
商業地 +2.4%(+1.5%)

次に、三大都市圏(東京圏、大阪圏、名古屋圏)平均となる。全用途平均は4年連続、住宅地は3年連続、商業地は12年連続の上昇となった。なおかつ、いずれも上昇幅が拡大している。

三大都市圏平均
全用途 +3.9%(+2.7%)
住宅地 +3.0%(+2.2%)
商業地 +6.2%(+4.0%)

さらに、三大都市圏別にそれぞれの数字は以下のとおりとなる。東京圏、大阪圏での商業地の上昇幅拡大が目立つ。

東京圏
全用途 +4.6(+3.1%)
住宅地 +3.6(+2.6%)
商業地 +7.0(+4.3%)…2.7ポイントの上昇
大阪圏
全用途 +2.9(+1.8%)
住宅地 +1.7(+1.1%)
商業地 +6.0(+3.6%)…2.4ポイントの上昇
名古屋圏
全用途 +2.9(+2.6%)
住宅地 +2.5(+2.2%)
商業地 +3.8(+3.4%)

次に、地方圏全体の平均が以下のとおりとなる。商業地の上昇幅が比較的大きい。全用途平均、住宅地、商業地のいずれも2年連続の上昇となっている。

地方圏全体の平均
全用途 +0.4(+0.3%)
住宅地 +0.1(+0.1%)
商業地 +0.9(+0.5%)

そして、こちらは今回の都道府県地価調査におけるトピックのひとつだろう。地方四市(札幌、仙台、広島、福岡)の上昇幅が今回は軒並み縮小した。ただし、数字自体は相変わらず大きい。なおかつ、全用途平均、住宅地、商業地のいずれも12年連続の上昇となっている。

地方四市(札幌、仙台、広島、福岡)平均
全用途 +6.8(+8.1%)
住宅地 +5.6(+7.5%)
商業地 +8.7(+9.0%)


 
 
 

さらに、これもトピックとなる。地方四市を除いたその他の地方の平均では、全用途平均が32年ぶりに上昇に転じている(92年以来)。商業地の上昇は2年連続で、なおかつ上昇幅も拡大。住宅地も下げ止まりに向かう気配が見てとれる。

その他の地方(地方四市を除く)
全用途 +0.2(0.0%)…32年ぶりの上昇
住宅地 ▲0.1(▲0.2%)
商業地 +0.5(+0.1%)

以上の状況について、国交省は「全体的な特徴」として、以下のようにまとめている。

「全国の地価は、景気が緩やかに回復している中、地域や用途により差があるものの、三大都市圏では上昇幅が拡大し、地方圏でも上昇幅が拡大または上昇傾向が継続するなど、全体として上昇基調が強まっている」

地価下落の県でも下落は鈍化の傾向

いま記したとおり、「全体として上昇基調が強まっている」との国交省のコメントだが、都道府県別に見ると未だ地価の下がっている県が以下のように数多く見られる。

住宅地での「地価下落」(変動率がマイナス)の県(全29県)
東北 青森県、岩手県、秋田県、山形県、福島県
関東 栃木県、群馬県
甲信越・北陸 新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県
東海 岐阜県、静岡県、三重県
近畿 滋賀県、奈良県、和歌山県
中国・四国 鳥取県、島根県、岡山県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県
九州・沖縄 長崎県、鹿児島県
商業地での「地価下落」(変動率がマイナス)の県(全17県)
東北 青森県、岩手県、秋田県、山形県
関東 栃木県
甲信越・北陸 新潟県、福井県、山梨県
東海 該当なし
近畿 和歌山県
中国・四国 鳥取県、島根県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県
九州・沖縄 宮崎県、鹿児島

しかしながら、前回(23年)から今回(24年)にかけての推移をそれぞれ見ていくと、下落幅が拡大、あるいは上昇から下落に転じているのは、能登半島地震による影響が顕著な石川県を含め、以下の4例に過ぎない。

 
都道府県 前回 今回
岩手県(住宅地) +0.1 ▲0.2
新潟県(住宅地) ▲1.0 ▲1.1
石川県(住宅地) +0.6 ▲0.3
島根県(住宅地) ▲0.9 ▲1.0

また、下落幅が前回と変わらないケースは以下4例に過ぎない。

 
都道府県 前回 今回
山形県(住宅地) ▲0.2 ▲0.2
福島県(住宅地) ▲0.3 ▲0.3
富山県(住宅地) ▲0.4 ▲0.4
徳島県(住宅地) ▲1.1 ▲1.1

すなわち、これら8例以外の38例にあっては、今回変動率はマイナスながら、いずれも前回よりも下落幅を縮めている。

よって、これら各地方においても、あくまで「上昇」ではないものの、地価は全体的に下げ止まりに向かっているか、あるいは下落の勢いを鈍化させていることは確かなようだ。つまり、国交省の言う「全体として上昇基調」で、間違いはないだろう。

リゾート系「地価ホットスポット」が各地に

いましがた、地価「下落」県のひとつとして名前が挙がった新潟県だが、実はここに地元で大いに話題となっている地価の“ホットスポット”がある。

「妙高市大字関川」にある基準地がそれだ(住宅地)。上昇率は9.0%で、商業地も含めた県内1位の数字となっている。なお、位置は野尻湖の北西、妙高山麓となる。現状、風景の寂しさが若干否めない、過疎のリゾートエリアといっていい。

この地では、シンガポール等に拠点を置く不動産投資ファンド「PCG――ペイシャンス・キャピタル・グループ」が、報道によれば、スキー場を中心に当面最大700億円規模、段階的には2千億円規模の投資を行う見通しとされている。

一帯は、山と湖が織りなす日本屈指の高原美に恵まれた、リゾートとしてのポテンシャルがもともと高い地域だ。膨らむ今後への期待が、地価に大いに反映されるかたちとなっている。

ほかにも、こうした「リゾート系地価ホットスポット」といえる地域が、今回の都道府県地価調査ではいくつも見られる。

挙げると、長野県白馬村、長野県野沢温泉村、北海道富良野市、北海道倶知安町といったウインターリゾート、静岡県熱海市、群馬県草津町といった温泉リゾート、さらには、沖縄県宮古島市、沖縄県恩納村、山梨県富士河口湖町―――などとなる。

ちなみに、全国すべての基準地における変動率上位、すなわち地価上昇率10位までの順位表を見ると、住宅地では上記宮古島市の基準地が2位、4位ほか、計6カ所ランクインしている。なお、1位は人気の移住先として知られる沖縄県恩納村の基準地で、上昇率は29.0%となっている。

「半導体」による地価沸騰も依然継続

さらに、地価上昇率上位10位までに、住宅地で2カ所(3位、5位)、商業地でも2カ所(9位、10位)の基準地をランクインさせているのが北海道千歳市となる。大手半導体メーカー「ラピダス」の工場進出によって、地価が沸いているエリアだ。試作ラインの稼働が来年4月に予定されている。

同じく、半導体に沸く熊本県の「TSMC(台湾積体電路製造)」進出地域にあっては、商業地での地価上昇率10位までのうち1~3位および5位、7位をこれら(菊池郡大津町・菊陽町)の基準地が占めている。工場では開所式が今年2月に行われ、本格稼働は年末までに始まる予定ということだ。

下落率上位を能登の地震の被災地域が独占

今年7日1日時点の地価を公表する今回の都道府県地価調査にあっては、1月1日に起きた能登半島地震の影響が当然ながら反映されている。

結果として、被災地には厳しい現状が示されることとなった。変動率下位、すなわち地価下落率10位までの順位表を見ると、住宅地では1位の輪島市河井町の基準地はじめ、その全てが能登地域の土地となっている。

さらに、商業地でも状況は変わらず、1~5位、7~10位を能登地域の基準地が占めるほか、残る6位も、能登地域に接する富山県高岡市の基準地となっている。すなわち、こちらでもランキング全てを被災地域が占めるに等しい状況だ。

以上、「令和6年(2024)都道府県地価調査」(基準地価)について、さらに詳しくは下記リンク先にて資料を確かめられたい。

国土交通省発表資料「都道府県地価調査
同 「令和6年都道府県地価調査の概要

(文/朝倉継道)

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この記事を書いた人

コミュニティみらい研究所 代表

小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。

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