賃貸物件の運営を成功させるカギは「経営者としての自覚」
尾嶋健信
2016/01/04
「賃貸物件の運営=社長の仕事」という自覚を持つ
賃貸物件の運営がうまくいかない人の多くが、経営者としての自覚を持っていないようです。サラリーマンの副業として賃貸物件の運営を行なっている人は、事業に対して融資をする「事業ローン」ではなく、本業の給与をもとに融資をする「アパートローン」を使うことが多いので、「副業」「投資」ととらえてしまい、「事業」という認識が足りないように思います。
実は自覚が足りないのは、代々土地を持ち続けている地主大家さんも同様です。家業として代々引き継がれるものなので、個人事業の延長ではあるものの、自分自身では大きな資産投資や事業計画の立案の経験不足のため「社長」という自覚が生まれにくいのです。このように、「賃貸物件の運営=社長の仕事」という自覚を持つことが、事業を成功に導く秘訣です。
何も知らない状態で管理会社への丸投げは危険
とはいえ、賃貸物件の運営は経営者(所有者)自身がプロフェッショナルでなくても、なんとなく事業が継続できてしまうものです。というのも、管理会社へ運営を丸投げしたり、一定期間の家賃を保証するサブリース契約をしたりすることが可能なので、他人任せになりがちなのです。
この他人任せという発想は必ずしも悪いことではなく、これができるからこそ副業にできるというメリットもあります。しかしながら、社長として必ず知っておくべき知識がないまま他人任せにしてしまうと、よい結果にならないことがほとんどです。それが空室物件を生んでいる原因にもなっています。
賃貸物件の運営のノウハウを知ったうえでの外部委託は問題ないのですが、そのノウハウを知らずに丸投げするのは経営放棄……、非常に危険なのです。
賃貸物件の運営で大事なのはチームワーク
賃貸物件の運営には、さまざまな人物が登場します。もし経営者が「私だけは損をしたくない、高く貸したい」と思っているならば、その人からどんどんメンバーが離れて行ってしまいます。チームをまとめられなければ、空室も埋まらなくなります。
まず入居希望者いないことには賃貸物件の経営はできませんので、「入居者」がいます。次に「管理会社の担当者」が、入居希望者が入居した後にちゃんと家賃を払う人かどうか、トラブルを起こさない人かどうかを審査します。この審査は入居申し込み時点でも大切で、不良入居者(家賃滞納や騒音トラブル、ごみの分別ができないなど)を排除する役割を果たしています。
また、入居者を斡旋する「不動産仲介会社の営業マン」(入居者を物件につけることから「客付業者」とも呼ばれる)も重要な働きをします。入居希望者の募集のために、賃貸物件のポータルサイトに登録したり、来店したお客さんの希望に合った物件を紹介したりします。
さらに賃貸物件の運営では、「リフォーム業者」選びも大切です。空室物件の原状回復はもちろん、時代のニーズに合ったリフォームを提案してくれるような業者や、大家側からの提案・相談に快く乗ってくれる業者だと、なおのことよいでしょう。
大家だけが優れていてもうまくいかない
このように、賃貸物件の経営はチームワークが大切です。大家だけが優れた能力を持っていたとしても、入居者がいなければ空室は埋まりませんし、管理会社の担当者がいなければ物件の維持・管理もできません。不動産仲介会社の営業マンがいなければ入居希望者と物件のマッチングも行なわれず、リフォーム業者がいなければ空室対策もできないのです。
チームメンバーにはそれぞれの事情があるので、あなたに協力してもらえるように働きかけていかなければなりません。社長としての自覚がなければ、まぐれの満室こそあれど、継続していくことはできないのです。
この記事を書いた人
満室経営株式会社 代表取締役
1970年、神奈川県逗子市生まれ。青山学院大学経営学部卒業。 大学卒業後、カメラマン修行を経て、実家の写真館を継ぐ。その後、不動産管理会社に勤務。試行錯誤の末、独自の空室対策のノウハウを確立する。 2014年時点で、500人以上の大家さんと4000戸以上の空室を埋めた実績を持つ。著書に「満室革命プログラム」(ソフトバンククリエイティブ)、「満室スターNO1養成講座」(税務経理協会)がある。 現在、「月刊満室経営新聞(一般社団法人 日本賃貸経営業協会)、「賃貸ライフ(株式会社 ビジネスプレス出版社)」にコラム連載中。 大前研一BTT大学不動産投資講座講師。