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今後、アパートはますます供給過多に

決断するならいま! 地方の築古木造アパートをすぐに売却すべき、これだけの理由

牧野寿和牧野寿和

2017/06/22

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築古木造アパートが危ない!

賃貸物件を所有している人にとって、空室は頭痛のタネです。

私が住んでいる名古屋市内でも、ここ10年くらい前から、築古アパートの空室が目立つようになってきました。それにもかかわらず、相続対策のためか新築アパートが次々と建設されています。

懇意にしている不動産仲介業者の話では、近頃では、これまでなら建てればすぐに入居が決まっていた新築アパートでさえ、なかなか入居者が見つからないとか。なかにはずっと空室を抱えたままの物件もあり、家賃の値崩れが始まっています。

実際、新築アパートと築古アパートの家賃の差は縮まっていて、その差は2万円にも満たないようです。

これから人口が減り、世帯数も減少すると言われているなか、アパートの新規建設がこのまま続いたら、今後、アパートはますます供給過多になり、さらに家賃は値崩れしていくでしょう。特に築古アパートの経営は、さらに厳しさを増していくことは確実です。

オーナーが直面する悩みと3つの選択肢

そのまま経営を続けていても、当面の間は何とかやっていけるかもしれません。ですが、家賃が下がっていけば持ち出しが発生して、経営はどんどん厳しくなっていくことが考えられます。

望むと望まざるとにかかわらず、私も含めて築古木造アパートのオーナーは、賃貸経営から撤退することも含めて、今後の戦略を考えなければならない状況に置かれているのではないでしょうか。

考えられるオーナーの選択肢としては次の3つがあります。

・リフォームする

・アパートを建て替える

・アパートを売却する

築古木造アパートのオーナーにとって、建て替えてまで賃貸経営を続けるメリットはあるのか、もしくは、思い切って売却してしまったほうがいいのか、それぞれの選択肢について、検証してみましょう。

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リフォームにどこまでお金をかけるべきか?

オーナーにとって、どこまでリフォームにお金をかけるかは悩みのタネと言えるでしょう。リフォーム業者のなかには、費用をかけて思い切ったリフォームをすれば、魅力的な部屋になるので早く入居者を決めることができますというセールスをかけてくるところもあります。

ですが、業者のその言葉を簡単に信じてはいけません。オーナーのなかにも、そういった考えを持っている人もいるようですが、それは勘違いと言えます。

たしかに、築古木造アパートといえども、部屋は商品です。部屋をよく見せるためには多少費用をかけることは必要です。しかし、そこに過剰にお金を掛けることはないことがポイントです。

築古アパートに入居を希望する人は、家賃の安さを求めている人が多くいます。新築アパートやマンションのように、建物や設備が新しいことを期待して入居するわけではありません。ですから、築古といえども手入れが行き届いている、また小奇麗だと評価される程度のリフォームでいいのです。

リフォームの費用を抑えることができるのは、築古木造アパートのメリットとも言えるでしょう。

リフォームにお金をかけても回収が大変


© tatsushi – Fotolia

もし、業者の言葉通りにリフォームしたとしましょう。たとえばリフォーム費用を100万円かけたらどうなるでしょうか。
確かに部屋はきれいになるかもしれませんが、だからといって、賃料収入が上がるわけではありません。このご時世に築古木造アパートの家賃を上げることは簡単ではないからです。

それよりも、かけたお金の回収が大変です。

仮に、家賃が1カ月5万円なら、リフォームをしてすぐ入居が決まっても、100万円の投資を回収するには単純計算で少なくとも20カ月(1年8カ月)かかります。つまり、1年9カ月後からしか実質的な収入にはなりません。

それどころか、もしも入居者が決まらなかったら、いつまでたっても100万円のリフォーム代を回収することもできません。

築古木造アパートのリフォームは、このように高額なお金をかけても、家賃収入には結びつかないものなのです。

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リフォーム費用をできるだけ抑えるには?

リフォームにかかる費用を抑えるには、オーナー自身が、リフォームにかかる費用を知っておくことが必要です。たとえば畳の表替え、壁の塗り替え、網戸の張り替え、シンク(流し台)の取替え、エアコンの交換などの費用がどれくらいかかるものか、相場を調べておきましょう。

通常、退去後には管理会社がリフォーム代の見積もりを出してくれます。ですが、その見積もりは割高になっている場合が多いようです。そして、しつこいようですが、その通りにリフォームしたからといって家賃を値上げできるわけではありません。

私も以前、管理会社が出してきた見積もり通りにリフォームしたことがあります。だからといって家賃を上げましょうという話にはなりませんでしたし、特にメリットを感じたことはありませんでした。

そのため、現在は管理会社を変えて、リフォームの内容はすべて私自身が決めています。もちろん、退去があった場合には管理会社から、リフォームの提案があります。基本は部屋の清掃と畳の表替えなどですが、部屋の状況によっては、流し台の交換や壁の塗り替えの提案をもらうこともあります。

畳の表替えは自分ではできないので業者に依頼しますが、その場合でも、自分でも業者から見積もりを取り、契約管理会社の見積もりと比較して、安いほうに依頼します。

また、部屋の掃除などは自分でしますし、壁などの補修もできる限り自分でやります。管理会社に頼むと5万円近い見積もりになる補修であっても、100円ショップやホームセンターで材料を買って、自分で修理すれば、1000円程度の費用ですむ場合もあります。

また、退去時の立会いも管理会社まかせにせず、自分も同席するようにしています。

自分の目で部屋をチェックして、もし明らかに入居者の責任で修理すべき箇所があれば、管理会社の立会いの下、その場で退去者に修理費用を負担してもらうよう確認を取っています。

シビアなようですが、そうすることで本来負担する必要のない費用まで持ち出すことがないようにしているのです。

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建て直して賃貸経営を続けるべきか?

築古アパートを経営していると、多くのハウスメーカーが建て替えの提案にやってきます。提案にくる営業マンは、口をそろえて固定資産税や相続税の軽減のメリットを強調します。

一括借り上げで●●年間の家賃保証というサブリース契約を提案するハウスメーカーも多いのですが、サブリース契約をめぐるトラブルが頻発しているのは、すでにメディアなどで報道されていますので、ご存知のことでしょう。

実際に、複数のハウスメーカーに、建て替えの提案書を作成してもらったことがありますが、どの提案も表面利回りは高いので、一見魅力的に思えます。

しかし、修繕費などを過去の実績をもとに見積もって、私がシミュレーションをし直してみると、家賃収入からローン返済と固定資産税を支払うと、ほとんど手残りがなくなってしまうのは明らかでした。

アパートローンを借りずに、自己資金だけで立て直した場合であっても、前述した通り、いまは新築であってもそれほど高額の家賃を取れるわけでありません。しかも、私の周りの状況を見ても、築後5年もすれば、家賃は20%近くも下がってしまい、それこそ築古アパートと変わらない家賃になってしまいます。

これから人口が減り、世帯数も減っていくこと、さらに新築アパートでも空室が埋まらない状況のなか、こうした問題にどう対応したらよいか、どの営業マンに尋ねても明確な答えは出てきません。

現在の状況を考えれば、よほど立地のいい物件でない限りは、建て直しは決しておすすめできません。もし、あなたの物件が現状でも空室に悩まされているとしたら、建て直してまで賃貸経営を続けるメリットはないと言えるでしょう。

売却する場合のメリット、デメリット

そこで現実的な選択肢として考えられるのが売却です。

そもそも、不動産投資を行なう上では「出口戦略」、つまり売却の問題を避けて通ることはできません。

実際に私のところにも、築古木造アパートのオーナーが売却の相談にいらっしゃることがあります。今後、収益が望めないので売却をしたいが、思うような価格がつかないので何か方法はないか、というのです。

オーナーチェンジ、つまり入居者がいるままで建物、土地共に売却する方法もありますが、築古木造アパートでは、建物の資産価値はありませんし、家賃からみて収益の期待もできませんので、なかなか希望通りの価格はつかないでしょう。そうなると、更地にして売却をしたほうが、高値がつく可能性もあります。

ただし、その場合は入居者に立ち退いてもらわなくてはなりません。

売却をすれば、現金が入ってきてそのお金を自分の思うまま運用できるメリットがあるとはいえ、入居者へ支払う立退き料などの経費、売却後にかかってくる多額の税金を負担しなければなりません。

また、アパート経営だけで生計を立てている専業大家の場合、売却の準備を始めてから売却してお金が手元に入るまで無収入となる可能性もある、というデメリットもあります。

次ページ ▶︎ | それでも採算が取れないのなら一刻も早く売却すべき 

それでも採算が取れないのなら一刻も早く売却すべき

このように考えると、築古木造アパートの経営は八方塞がりのように思えてきます。

とはいえ、いまならまだ間に合います。私は、築古アパートのオーナー向けに空室対策のお手伝いもしていますが、現在はまだ、オーナー自らが不動産仲介業者に自分の物件を売り込む営業活動をしていけば、空室を埋めることは可能です(もちろん、すべての物件が可能なわけではありません)。

当面は、できるだけコストを抑えたリフォームを行ない、家賃を多少下げてでも賃貸経営を続けていくことはできるでしょう。

その間に、急いで手を打ちましょう。将来的に、いつかは物件を建て直さなければいけない日が来ますが、建て直しても採算が取れないのであれば、選択肢は売却しかありません。

不動産投資は、トランプのババ抜きと同じで、保有していても儲からないババ物件をつかんでしまってはいけません。ババをいかにつかませるかというのも不動産投資の世界の一側面です。

そして、現状でもジリ貧、建て直しをしても採算が取れない物件は、ババ抜きのババと同じです。

賃貸経営が立ち行かなくなり、売るに売れない状況になってからでは遅いのです。まだ経営が成り立っているいま、一刻も早く手放すべきでしょう。

一時に比べるとだいぶ落ち着いてきたとはいえ、まだまだ世の中的には不動産投資に注目が集まっています。売却するならいまがチャンスと考えることもできます。大切な資産ではありますが、1日も早く決断されることをおすすめします。

具体的な売却のコツについては、別の記事で改めてお話ししましょう。

 

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この記事を書いた人

CFP、一級ファイナンシャル・プランニング技能士

1958年名古屋生まれ、大学卒業後、約20年間旅行会社に勤務。出張先のロサンゼルスでファイナンシャルプランナー(FP)に出会い、その業務に感銘を受け、自らもFP事務所を開業。 その後12年間。どの組織にも属さない「独立系」FPとして、誰でも必要なお金のことを気軽に考えてもらうため「人生を旅に例え、お金とも気楽に付き合う」を信念に、日本で唯一の「人生の添乗員(R)」と名乗り、個別相談業務を行なうとともにセミナー講師として活動している。 また、賃貸不動産の経営もしており、不動産経営や投資の相談にも数多くのアドバイスやプランニングをしている。

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