空室対策にとって満室状態をキープする努力よりも大切なこと
尾嶋健信
2016/08/31
「エース営業マン」が最強のパートナー
あなたが所有する賃貸物件に空室が出た場合、その空室を埋める「空室対策」が必要になります。その際、強い味方になってくれるのが、そのエリアを担当する不動産仲介会社の「エース営業マン」です。
エース営業マンとは、あなたの賃貸物件の存在を認識しているだけでなく、それが優良物件だと認めてくれていて、お客さんをきちんと内見に連れていってくれる営業マンのこと。できれば、あなたの物件を「決め物件として扱ってくれる営業マンがベストです。
以前の記事でも紹介しましたが、不動産会社の営業マンがお客さんを内見(賃貸物件の内部を見学に行くこと)に連れていく場合、3件ほど回るのが一般的です。それも、どの物件をどの順番で回るか、営業マンは内見ルートを事前にほぼ決めています。
自分の物件を「決め物件」にしてもらうために
最初は「当て物件」を見せてお客さんを失望させ、次に「中物件」で少しだけ希望を持たせ、最後に好条件の「決め物件」を見せて一気に賃貸契約成立に持ち込む。これがいわゆる、不動産営業マンの必勝パターン。このパターンの「決め物件」にあなたの物件を選んでもらえれば、空室が埋まる確率はぐっと高まります。
では、営業マンに対して、あなたの物件を「決め物件」に選んでもらうにはどうすればいいのか。それは前回ご説明したとおり、地道なコミュニケーションで信頼関係を築いていくしかありません。
コミュニケーションの中心は電話での会話になりますが、物件のオーナーとして高圧的な態度で接するのではなく、多忙な時間に電話の時間を取ってもらっているという気持ちで、自分の物件の内容を伝え、内見を得るにはどうすればいいかのアドバイスを求めましょう。そして、そのアドバイスを実行に移しながら、なおも定期的なコミュニケーションをはかり、その物件のセールスポイントを理解してもらうのです。
カギの受け渡しには、キーボックスを使うこと
前回はここまでしかお話しできませんでした。そこで今回は、前回の補足として、「営業マンに内見されやすい物件」についてご説明しましょう。
営業マンがお客さんを内見に連れていく場合、「部屋のカギを不動産管理会社からどう受け取るか?」がポイントになります。
営業マンがカギを受け取る場合、次の3パターンがあります。
(1)お客さんを部屋に連れていく途中で管理会社に立ち寄り、カギを受け取る。
(2)部屋の前で管理会社のスタッフと待ち合わせをして、管理会社のスタッフにカギを開けてもらう。
(3)部屋の玄関ドア付近に備え付けのキーボックスにカギが入っているので、管理会社から教えてもらった暗証番号でキーボックスを開け、カギを取り出す。
この3パターンのうち、営業マンが喜ぶのはもちろん、(3)のキーボックスを利用するパターンです。(1)は管理会社まで出向くために時間と労力が余分にかかります。(2)は管理会社と待ち合わせするため、時間の制約を受けます。対する(3)は、管理会社に気兼ねすることなく、自分のペースで内見ができます。
ゆえに、(3)のキーボックスを備えた物件こそが、「営業マンに内見されやすい物件」といえます。営業マンよっては、「キーボックスのある物件しか内見に行かない」と決めている人もいるほどです。
そこで、あなたの物件を「内見されやすい物件」にするためには、部屋のカギをキーボックスに入れて管理することがポイントになります。カギの管理にキーボックスを使っていない人は、すぐに導入しましょう。
また、すでにキーボックスを導入している人も、キーボックスはすぐに汚れ、傷んでしまう消耗品ですから、こまめに新品と入れ替えましょう。キーボックスは1500円くらいで購入可能です。
「満室」ではなく、「満室にする努力」をキープする
空室対策について、これまで数回に分けて解説してきましたが、ここで再度、私が考える空室対策の定義を掲げておきます。
「空室対策とは、所有する不動産物件に対して、満室である確率を最大限に高める、新規客に向けての対策のこと」
改めて、ポイントを指摘しておきましょう。重要なのは「満室である確率を最大限に高める」というところ。言い換えれば、常に満室状態を維持することが重要なのではなく、満室である確率を最大限に高めていればOK、ということです。
なぜ、わざわざこんな指摘をするかというと、オーナーさんがどんなに頑張っても、空室はかならず生まれるものです。ある空室を苦労して埋めた途端、別の入居者が何らかの事情で退去する、なんてことも珍しくないからです。
空室対策に「これで終わり」はありません。結局はモグラ叩きのように、空室が出ては埋める、の繰り返し。つねに満室状態をキープすることは至難の業なのだと心得ましょう。そうでないと、空室が出た途端、「一日も早く満室にしなければ!」と自分自身にプレッシャーをかけてしまい、ストレスばかりが溜まってしまいます。そんなことでは、賃貸物件オーナーを長く続けることはできません。
満室をキープするのではなく、満室になる確率を高める努力をキープすること。確率を高める努力さえしていれば、それでOKなのだと考えましょう。それこそが、大家業を長く楽しく続けていくコツなのですから。
この記事を書いた人
満室経営株式会社 代表取締役
1970年、神奈川県逗子市生まれ。青山学院大学経営学部卒業。 大学卒業後、カメラマン修行を経て、実家の写真館を継ぐ。その後、不動産管理会社に勤務。試行錯誤の末、独自の空室対策のノウハウを確立する。 2014年時点で、500人以上の大家さんと4000戸以上の空室を埋めた実績を持つ。著書に「満室革命プログラム」(ソフトバンククリエイティブ)、「満室スターNO1養成講座」(税務経理協会)がある。 現在、「月刊満室経営新聞(一般社団法人 日本賃貸経営業協会)、「賃貸ライフ(株式会社 ビジネスプレス出版社)」にコラム連載中。 大前研一BTT大学不動産投資講座講師。