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儲かる物件を探すのはむずかしい

地方高利回りアパート投資は利益率もリスクも高い

尾嶋健信尾嶋健信

2016/04/20

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利回り12〜20パーセントの中古アパートが狙い目

前々回から、不動産投資の基礎として、不動産投資の手法を投資物件別に紹介しています。

前回、前々回で、区分マンション投資、戸建投資についてお話ししたので、今回は地方高利回りアパート投資とはどのような投資で、その手法にはどんなメリットとデメリットがあるかをご紹介しましょう。

地方高利回りアパート投資とは、地方にある利回りの高いアパートを購入し、賃貸経営で利益を上げる手法のこと。具体的には、次のようなケースが一般的です。

当初の自己資金は300万円前後。この300万円を頭金に、地方にある1000〜3000万円程度の中古賃貸アパート・マンションを、ローン金利2〜3パーセント程度で購入。その後、必要があれば、購入したアパートにリフォームなどを施し、長期にわたって賃貸経営していこう、というもの。

この投資のポイントは、地方の中古アパート・マンションで、12〜20パーセントという高利回りの物件を見つけること。

不動産投資における「利回り」は、「年間収入÷購入価格」で大まかに割り出すことができます。

たとえば、ある中古マンションの年間収入が1室賃料5万円×8室×12か月=480万円だったとして、このマンションの販売価格が3000万円だったとすれば、表面利回りは480÷3000=16パーセントになります。だとすれば、この物件は当然、この「地方高利回りアパート投資」の対象になります。

都心部に比べて、地方の中古アパート・マンションは総じて販売価格が安価ですから、このように利回りの高い物件も、探せば見つかるのです。

ちなみに、住む人もなく荒れ果てた廃屋同然の物件を安値で購入し、きれいにリフォームしてアパートとして貸し出す、いわゆる“ボロ物件投資”もこのカテゴリーに分類されます。

ライバルが少なく、利益率の高いのが魅力

こうした地方高利回りアパートは、ほかの不動産投資物件と比較して、次のようなメリットがあります。

メリットその1は、競争相手(ライバル)が少ないこと。不動産業界には、プロ、アマを含め数多くの不動産投資家が存在しますが、地方高利回りアパートを狙っている人は少ないため、物件の取り合い・奪い合いに発展するケースはまず考えられません。

つまり、この種の物件を狙っている投資家は、自分が希望さえすれば、ライバルに邪魔されることなく、物件を手に入れやすいといえます。

なぜ、ライバルが少ないのか。それは、実際に利益を上げられそうな地方高利回りアパートを見つけるのが至難のワザだから。そもそも、地方で中古アパートの出物を見つけるだけでもむずかしいのに、そのなかから投資価値のある物件をピックアップするのは、それなりの知識やノウハウ、土地勘がなければできません。

その中古アパートは賃貸経営に向いているのか、向いていないのか。それを見極める尺度のひとつが「イールドギャップ」です。

イールドギャップとは、「投資利回り(%)ー借入金利(%)」で表されます。たとえば、その物件の表面利回りが16パーセントで、その物件を購入するためのローン金利が4.5パーセントであれば、イールドギャップは11.5パーセントになります。

イールドギャップをどう評価するかは、投資家によって異なります。「10パーセント以上あればOK」と判断する投資家もいれば、「14パーセント以上なければ手を出さない」と決めている投資家も。そのあたりは、その人の経験とノウハウによって違ってきます。

イールドギャップと並んで、物件を買う・買わないの重要な判断基準となるのが、その地域の商況、景気の動向、物件の立地条件など。これらは数値化できるものではないので、それぞれの投資家が独自に持っている情報網や経営センスを駆使して判断しています。

投資物件として見た、地方高利回り中古アパートのメリットその2は、ズバリ、利益率が高いこと。

地方は不動産価格が安価なので、中古アパートであれば価格の割に大型の物件を購入できるため、上手に賃貸経営すれば、かなりの利益を上げられるのです。しかも、居室数が多いほど、「入居者ゼロ」という状況に陥りにくくなります。それだけ、投資リスクを分散するリスクヘッジにもなります。

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マネジメントが面倒で、想定外の出費も

とはいえ、投資物件として見た場合の地方高利回りアパートにも、デメリットはあります。

デメリットその1は、マネジメントに余分な時間と労力がかかりやすいこと。

地方の賃貸アパート・マンションは、オーナーが地主さんであるケースがほとんど。不動産投資用につくられたアパートやマンションは数が少なく、その多くは地主さんの節税対策でつくられた物件といっていいでしょう。

こういった物件では、空室が出てもオーナーはそれほど気にしないし、物件を管理する不動産業者側にも、熱心に集客しようという意識はあまりありません。

一方、地方の中古賃貸アパートを土地・建物ともローンで購入した不動産投資家からすれば、空室は極力出したくありません。もし空室が出れば、一刻も早く入居者を入れたいと考えます。なぜなら、空室はただちに経済的損失につながるからです。

空室が出た場合、投資家としては当然、その物件を管理する地元の不動産業者に、できるだけスピーディーに動いてほしいところ。ただちに簡単なリフォーム工事を行ない、広告を打つなり、賃貸情報サイトに情報をアップするなりして、次の入居者探しに奔走してほしいと考えます。

ところが、地元不動産業者に、空室対策に対するそこまでの切迫感はありません。都市部に暮らすオーナー(投資家)が電話やメールでいくら催促しても、不動産業者側の動きはいつまでも鈍かったりして、結局はオーナー自ら現地に出向かなければならなくなったりします。

デメリットその2は、地方の格安物件を狙う以上、その物件がシロアリに侵されていたり、あるいは基礎部分に重大な欠陥が隠されていたりするリスクと常に隣り合わせだということ。もしそうであれば、建て替え同然の大規模なリフォーム工事が必要になり、想定外の莫大な出費を強いられることになります。

デメリットその3は、地方の格安物件を取得した場合、取得した本人に対する銀行の評価が低くなってしまうこと。格安物件は当然、不動産としての価値(評価額)が低いですから、価値の低い不動産を持っている不動産貸付業者(=投資家)への評価も当然、低くなります。そして銀行からの評価が低くなれば、今後融資を受けにくくなってしまうのです。

確かに高利回りは魅力ですが、メリット・デメリットを勘案して投資の判断をしてください。

 

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この記事を書いた人

満室経営株式会社 代表取締役

1970年、神奈川県逗子市生まれ。青山学院大学経営学部卒業。 大学卒業後、カメラマン修行を経て、実家の写真館を継ぐ。その後、不動産管理会社に勤務。試行錯誤の末、独自の空室対策のノウハウを確立する。 2014年時点で、500人以上の大家さんと4000戸以上の空室を埋めた実績を持つ。著書に「満室革命プログラム」(ソフトバンククリエイティブ)、「満室スターNO1養成講座」(税務経理協会)がある。 現在、「月刊満室経営新聞(一般社団法人 日本賃貸経営業協会)、「賃貸ライフ(株式会社 ビジネスプレス出版社)」にコラム連載中。 大前研一BTT大学不動産投資講座講師。

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