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オーナーのお悩み解決します!その2…教育とは何か!?

南村 忠敬南村 忠敬

2023/01/23

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不動産は裾野がとてつもなく広い分野だから、いろんな態様があります。今回は賃貸にまつわるテーマで話しましょう。そもそも賃貸っていうのは、物件を貸したい所有者と借りたい人の間で交わされる貸し借りの決め事に従って、目的物を引き渡し使用させる継続的契約のこと。この継続的契約っていうのは、他の物品売買契約とは違って取引後も契約がずっと続いていくところに人間同士の柵(しがらみ)やエゴが影響し、兎角トラブルがつきまとう。

つまり、借りた時から(貸した時から)契約が始まるって感じですから、そこから先には予期せぬ出来事が起こったりするのがこの世の常です。

特に賃貸仲介がメインの不動産業者さんに話を聴いてみると、信じられないような人って居るなあ、、って、いつもビックリするやら、ある意味感心させられるやら、まあ人間っていうのは本当に面白い生き物だと思いますね。

~とある学生向けワンルームマンションの水漏れ事故の話~

女学生が入居したワンルームマンション。キッチンはミニキッチンだから、まともな料理なんか出来ないけど、水道ぐらいは勿論付いてます。その水道の立水栓から水が漏れてるって、夜中の23時ぐらいに電話が掛かってきたそうです。「あの~!モシモシ~!水が漏れてるんですけどお~」って。相手は女の子だし、営業マンも優しいのか何か知らないけど、「分かりました~!」とか言っちゃって、すっ飛んで行ってあげたらしい。部屋に入ったら、そこには女学生の彼氏らしい男性が一緒にいて、「そこの水道から水が漏れてます!」って。見ると確かに水栓の立ち上がりの根元が濡れていたらしい。

(営業マン)とりあえず濡れている部分を雑巾で拭き取ってから水道をひねってみると、蛇口からは勢い良く水が出る。(当たり前や!)しかし、一向に水栓の根元から水はにじみ出てこなかった。不思議に思った営業マンは、彼女らに尋ねた。「あの~、この辺に水、こぼしました?」。彼女らはピッタリくっついたまま、お互いの顔を見て、「あん、コップの水かなあ~」「はははは…」と。

「コラー!!ええかげんにせえよ!水こぼしただけやないか!こぼしたんなら拭かんかい!それから水漏れかどうか確かめんかい!何時やと思ってるねん!そんで何でオマエらくっついてるねん!?なにをイチャイチャしてるねん!!!ふざけんな!(と心の中で)」

 (私)「・・・お気の毒としか言いようがない」

~虫が出た!!という緊急通報を受けた話~

こんな話もある。某有名国立大学の学生さん(男子)が入居してる部屋に「虫」が出るって。それはもう大そうに、数十数百匹みたいな勢いで電話を掛けてきたらしい。管理会社も慌てて馳せ参じたそうな。とりあえず殺虫剤片手に部屋に入ってみると、ムカデの小さい版みたいな、体長4~5ミリ程度の虫が2匹、干からびて死んでおったそうな。管理会社の担当者が、「虫ってこれかあ?」。学生さん、「はい!昨日も1匹殺しました!これは○○虫の幼虫じゃないでしょうか?!大量発生の前兆かもしれませんよ。。。」

「ちょっと、お兄ちゃん!大の男が何を言うてるねん!虫が1匹や2匹出てきたぐらいで大騒ぎするか?虫も生き物!どこにでもおるわい!それぐらい自分で対処せんかあ!!それよりもこの部屋、ちいと片付けたらどやねん!まるでゴミ箱やないか!!こんな汚かったら虫も住み着くわ!!(と心で怒鳴る)」

(私)「まあ、最近のお子さんはいったいどんな暮らしを送って来られたんでしょうね。なんでもかんでも親御さんが手を出されるので、害虫1匹自分で処理できないんですね。。ゴキブリでも出た時には、きっと110番しちゃうかも…。」

そもそも賃貸でお住まいの方々は、何処までが家主の負担で対応してもらえるのか、基本的にお解かりでない方が非常に多いのではないかと思います。

最近はそれ以上に、何でもかんでも言わなきゃ損々!と思っている。「こっちは家賃払ってやってんだ!」的感覚で、電球のタマ切れから網戸が破れた、外れた、ドアの締りが悪い、ガスが点かない、排水の流れが悪い、臭い、湿気でカビが生える、隣がうるさいetc。これって生活してたら当たり前に起こることでしょ?その度に大家さんや管理会社に直せ、対処しろ、と迫ってくる。

家賃はその場所を占有するために必要なショバ代が基本。勿論賃貸物の適正な使用収益に係る維持管理を賃貸人に負わせる民法601条、賃借人の賃貸人に対する費用償還請求608条の存在を無視はできません。しかし、何でもかんでもというわけじゃない。特に、生活している間に起こる極当たり前の修理修繕の部分や、毎日使っていたらあちこち劣化して、設備なら壊れたり調子悪くなったりするのは当たり前の故障などは原則的に賃借人が負担して修繕するもの。

例えばガスコンロ。毎日々々カチカチ何回スイッチひねります(最近は押すタイプか)?朝昼晩、普通に自炊してたら1日10回くらいは点けたり消したりするでしょう。月平均300回、1年12ヶ月で4000回近くもガスコンロの点火消火を繰り返す。当然、点火装置は劣化するし、電池も切れる。ましてや賃貸物件(他人の物)となると、ン千万円もローンを組んで手にしたマイホームと比べたら、大切に使う気持ちもそれほど起きないのか?掃除も殆どしたことが無いっていう賃借人、何人も知ってます。それで調子が悪くなったらすぐ不動産屋に電話。電話ならまだまし。何故って、状況確認とその場で一通りのアドバイスもし易いから。それが今ではスマホで送信。やり取りが面倒と言われる若い方のなんと多いことか。 仲介した賃貸専科の営業さんに、住宅設備機器の小修理なんか出来る人、たぶん殆ど居ないんじゃないかな?だから速攻、管理会社か家主にたらい回しです。

(私)「ほんまに情けない世の中になったもんや。ホームセンター花盛りの時代なのに、ガーデニングとかインテリアとか、見た目だけを気にするホームビルダーさんばっかりで、風呂、トイレ、洗面、台所、水周りからちょっとした電気工事ぐらい自分でやりますよ!っていうお父さんのなんと少ないことか」。

ボヤキは止まりません。でも、賃貸借契約の時に、そんな生活に関する話までしませんよね。重要事項説明書や契約書には、修繕義務に関する負担区分が大まかに示されていて、一般的な表現でしか書かれていないから、とりあえず不動産屋に電話してしまう方も多いんでしょう。
でも、なんで不動産屋に電話するの?ガスはガス屋さん、電気は電気屋さんと、順番が違うでしょ?体の調子が悪くなったら専門家であるお医者に診てもらうでしょ?

~人が社会で生きていくために必要な知識をつける…それが教育の目的~

ついこの前も、「部屋に戻ったら電気が全く点かない!」と私に電話してきたマンションのOLさん。そこは割と新しい建物で、電気の子メーターは「スマートメーター」になっている。スマートメーターは、家電などの使用に対して許容電気容量を超える使い方をした場合、警告停電(部屋内の電気を入り切りし、停電と復旧を約10~15秒間隔で繰り返す)機能が備わっていて、それでも一定時間消費電力が下がらない場合は自動的に内部ブレーカー(スマートメーター内部に在る)が落ちる仕組み。

現場に居た入居者さんに、「充電器やエアコン、テレビやレンジ、ドライヤーなどをたこ足で使って、契約電気容量をオーバーしてませんか?」と確認したが、何が使い過ぎなのかも解らない。「普通です。。」としか言葉は返ってこない。仕方が無いので、とりあえず全てのコンセントから家電類のプラグを外してもらい、復旧しなければ翌朝に電気屋さんを手配するとして様子を見ることにした。約30分後、予想通り停電は復旧して部屋に灯りが戻った。

日常生活で起こる事象に対しては、とにかく先ず自分で考えて何とかしてみる。次に専門業者に修理を依頼する。修理に係る金額や故障の原因を確認してから不動産屋か大家に連絡。家主に修繕義務のある原因なら当然直してもらえばいい。急を要する修理なら立て替えて払っておいて、後で返してもらえばよろしい。家主が払わないと言うなら相談するところもまたちゃんと揃っている。消費者センターや弁護士会、公益不動産団体なんかでも丁寧に教えてくれる。雨漏りしてるのに直さん家主とか、現状で引き渡したとか屁理屈をこねる相手方には、費用の償還請求や賃料相殺も含めた法的措置で対抗出来る場合もある。決して大家が偉いわけでも賃借人が偉いわけでもない。ヒフティ・ヒフティ。

でも、お互い“権利の濫用”はNG。人間関係は権利義務だけで成り立つもんじゃない。心と心、お願いしたりされたり、頼んだり頼まれたり、綱引きみたいなもの。良好な人間関係が築けたら、修理修繕も家賃交渉も上手くいくことが多いのです。そういうことを親から子へ、子から孫へと伝えていくことも大切な教育。学校だけでは全然足りないのです。

昔は、そんな風に借りる側も貸す側も良好な人間関係があちこちにあったように記憶しています。100年以上前なら、全世帯の90%ぐらいの割合が借家住まいだったらしいね。農耕民族の基本形も地主と小作ですしね。賃貸借って、本当は日本人に適応した権利形態なんでしょう。借家暮らしの皆様、もっと賢く上手に人間関係を築いていきましょうね!

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この記事を書いた人

第一住建株式会社 代表取締役社長/宅地建物取引士(公益財団法人不動産流通推進センター認定宅建マイスター)/公益社団法人不動産保証協会理事

大学卒業後、大手不動産会社勤務。営業として年間売上高230億円のトップセールスを記録。1991年第一住建株式会社を設立し代表取締役に就任。1997年から我が国不動産流通システムの根幹を成す指定流通機構(レインズ)のシステム構築や不動産業の高度情報化に関する事業を担当。また、所属協会の国際交流部門の担当として、全米リアルター協会(NAR)や中華民国不動産商業同業公会全国聯合会をはじめ、各国の不動産関連団体との渉外責任者を歴任。国土交通省不動産総合データベース構築検討委員会委員、神戸市空家等対策計画作成協議会委員、神戸市空家活用中古住宅市場活性化プロジェクトメンバー、神戸市すまいまちづくり公社空家空地専門相談員、宅地建物取引士法定講習認定講師、不動産保証協会法定研修会講師の他、民間企業からの不動産情報関連における講演依頼も多数手がけている。2017年兵庫県知事まちづくり功労表彰、2018年国土交通大臣表彰受賞・2020年秋の黄綬褒章受章。

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