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あの物件は住んじゃダメ…賃貸住宅の評判はどこで「クチコミ」されているか

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イメージ/©︎weedezign・123RF

クチコミの洗礼から逃れている「賃貸」

インターネットが普及し(90年代後半頃~)、やがてスマートフォンも出現(08年に初めて日本国内向けiPhoneが発売)。ほどなく、ウェブサイトとスマートフォンアプリは、われわれのもっとも身近な情報メディアのひとつとなった。以来、一般の人々が匿名で商品やサービスを評価するネットの「クチコミ」は、社会的に重い存在のひとつとなっている。

そのクチコミによる洗礼に、とりわけ激しく晒されている業界の筆頭といえば「飲食」だろう。クチコミにはもちろん高評価もあるが、低評価も少なくない。サイトにもよるが、一部ユーザーによる容赦のない辛辣な言葉が並ぶのを見て、他人事ながら胸の痛む思いがするという人も多いことだろう。

では、賃貸住宅はどうだろうか? 実態をいえば、賃貸住宅はこのクチコミの洗礼からはほぼ逃れられている。自身の住んでいる(もしくは住んでいた)賃貸マンションやアパートへの評価を書き込めるサイトはいくつかあるが、それらはあまり知られていない。理由は?と、分析することは長くなるのでここではしないが、とどのつまり、賃貸物件におけるクチコミというのは、世間的には盛り上がっていないのが現状だ。

客付け会社はオーナーに義理立てしない

とはいえ、賃貸住宅オーナーはよく知っておいてほしい。賃貸物件への評価=クチコミは、実はもっと直接的かつ効果的なかたちでユーザーに伝わっている現実もある。

それは何か? 答えは「客付け仲介会社による入居希望者への情報提供」だ。オーナーのなかにはその構造がイマイチ理解できておらず、説明すると驚く人もたまにいたりする。

オーナーにとって、普段接している不動産業者といえば、管理会社もしくは元付け仲介会社となる。よって、物件に空室が出ると、オーナーは次の入居者を募集するよう彼らに依頼する。あるいはわざわざそうしなくとも、「いつものこと(元付け会社)」「契約上のこと(管理会社)」として、さっさと募集活動を始めてくれるケースの方が、実際には多いことだろう。

そのうえで、多くのオーナーにとって、彼らはあくまで報酬を授ける発注先だ。なので、自身は発注元、つまり「客」だとオーナーは通常思い込んでいる。

ゆえに、オーナーの想いとしては、彼らはつねに「コチラの味方」となる。管理会社や元付け会社のスタッフが、入居希望者の面前で、大事な客であるオーナーの物件が抱える欠点を暴露し、クサすことなど、金輪際ありえないと思っている人が現実としてかなり多いはずだ。

が、そこまでは半分正解として(半分だ)、問題はその先にある。管理会社や元付け会社から物件情報を受け取り、それを広告し、広告を見た入居希望者からの問合せを受けて物件を案内する「客付け仲介会社」は、当然ながらオーナーに義理立てする立場にない。

そのうえで、いまは知ってのとおりどの業界も挙げて“顧客満足”の時代だ。客付け会社は客付け会社で、彼らの評判にかけてあとから客に文句を言われるような物件は紹介したくない。

そこで、勉強熱心な客付け会社は、自らの営業エリアに散らばる物件それぞれにおける魅力や実態をさまざまな機会を通じて独自に把握していくことになる。問題のある物件があれば、相手が真面目で優良な入居希望者であればあるほど、事実を容赦なく、真摯に伝えていく傾向がいまは進んでいると思った方がいい。(管理会社や元付け会社であってもそうしたリベラルな判断を採ることはもちろんある)

内容に多少憚りを感じられるものもあるが、そうした客付け会社から入居希望者へ伝えられた情報の実例、3つを以下に挙げてみよう。

ここに住んではいけない!…の実例

1.「この物件はおススメしません。家賃は安いのですが、実は入居者のなかに時々奇声を発して物件内を徘徊する方がいらっしゃいます。ご覧のとおり空室が多いのは、怖がって退去する方が絶えないからです」

2.「この物件はおススメしません。ある階にゴミ屋敷になっている部屋があります。害虫が大量発生し、他の部屋に侵入しているとの話を聞いています。現状とてもご紹介できる状態ではありません」

3.「この物件はおススメしません。管理会社のいない自主管理物件であるにもかかわらず、オーナーがまったく掃除をしに来ません。そのためか、住人の生活もすっかり荒れてしまい、ポイ捨てがひどいので、見かねて町内会の方がトラブル覚悟で敷地内や共用部分に立ち入り、ゴミ拾いしている状態です。今後がかなり不安なので、当社ではこの物件の紹介は控えています」

若干補足しよう。現在、こうした客付け会社を訪れる入居希望者というのは、多くが事前にポータルサイトを検索し、いくつかの物件に目星をつけてから窓口にやってくる。そのため、スタッフの方もそれを前提に「このエリアで気になった物件ありますか? ウチで広告しているものも、それ以外のものも、どうぞ全部教えてください――」などと、冒頭から尋ねるケースがごくごく普通だ。

すると、入居希望者は「昨日ネットで拾ったのはこの3つです」などと、スマホを片手に物件を示すのだが、そこに並んだ中に問題のあるものが含まれている場合、客付け会社は上記のような情報提供を行うことになる。

つまり、繰り返すが、客付け会社にはオーナーに対する義理はなく、立場上もっとも大切にすべき「客」は目の前の入居希望者のみだ。そんな相手をあとでがっかりさせたり、怒らせたりするような物件は、この時点で紹介のテーブルから排除、ということになるわけだ。

プロのクチコミこそ最強

いかがだろうか。ちなみに客付け仲介会社といえば、90年代頃までのイメージが色濃い人など、「入居希望者がどんな物件に住もうが知ったこっちゃない。とにかく目先の契約だ。取っちまえ」――の勢いで、いわば乱暴・粗雑な仕事をする会社が多いイメージを抱く方も少なくないだろう。

しかしながら、いまは一部を除き、そういう業者が横行可能な時代ではなくなった。一般消費者と対峙する最前線の存在として、業界の顔となる自覚をもつ会社――と、いうよりも個人が、客付け仲介会社のスタッフには近年目立って増えてきている。

よって、“クチコミカルチャー”があまり盛り上がっていない賃貸の世界であっても、実はもっとも効き目のあるプロのクチコミが、そんなスタッフ達からユーザーに的確に提供されているということをオーナーはしっかりと自覚しておくことだ。

無論、クチコミには低評価のものもあれば高評価のものもある。入居者想いで評判のよいオーナーの存在もまた、当の本人が知らぬ間に、そんな現場ではたびたびクチコミされているものだ。

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編集者・ライター

賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

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