賃貸経営 空室リスクへの「備え」と空室期間短縮のとっておきの方法
斎藤 岳志
2021/10/26
イメージ/©︎serezniy・123RF
退去から次の入居者受け入れまでの準備期間は?
天災は忘れたころにやってくると言いますが、賃貸経営では「退去連絡」は、何の前触れもなく突然やってきます。
多い理由としては「転勤」ですが、結婚や出産、あるいは違う場所に住んでみたいなど理由はさまざまです。引っ越しはなんらかの人生の転機が伴うことも多く、退去の連絡があると、新しい生活がよりよいものになってほしいと、いつも思っています。
とはいえ、大家としては退去によって空室になるのは最大のリスクです。そのためこの「空室期間をいかに短くするか」は、大家業にとっての永遠の経営課題です。
退去の連絡から次の入居者を迎え入れるまでの流れは次のようになります。
1)退去の立ち会い
2)室内確認
3)原状回復工事・室内清掃
4)賃貸募集
5)内見
この1~5の工程をいかに短くするがポイントになりますが、自主管理をしている方であれば、どこまで自分で行い、どこを業者に任せるかの見極めがとても重要で、計画性が求められます。
私の場合は、ここまで何度もいっていますが、餅屋は餅屋ということで賃貸管理会社に委託しており、退去から室内清掃を終わらせて次の入居者を迎えられる状態になるまでにはおおよそ1週間から10日ぐらいで対応をしてもらっています。
もちろん、設備の不具合や修理、リフォームをする場合は相応の日数を必要としますが、特別なことがなければ、1週間が1つの目安です。
そのためには早めの賃貸募集をスタートします。そのためには常に周辺物件の家賃相場をチェックし、周辺の相場を踏まえた適性は賃料にしていれば、場合によっては入居中であっても次の入居希望の申し込みが入ってきたこともありました。
通常、退去連絡は1カ月前に予告するという内容で賃貸借契約をしていることが多く、退去前から準備をはじめて、募集開始も行うというのも空室期間の短縮につながります。
実は入居者の引っ越しは予想できる
「退去の連絡は突然来る」といいましたが、実は人が動く時期はある程度予想するこができます。
大まかには「4月と10月」。この時期は学生さんであれば卒業・入学シーズン、10月は会社の人事異動などが多い時期です。
この4月と10月前の1~2か月は退去の申し込み、入居申し込みが増えます。
言い換えれば、この時期は退去もあるけれど、入居募集も絶好の時期になります。さらにいえばこの時期を逃すと入居者が決まりにくくなることが予想されるということです。
そのため対応策としては、入居者の生活状況に把握しておくことです。
学生さんであれば卒業はいつか、ビジネスパーソンであれば年齢はいくつか。また、ファミリー世帯であればお子さんの有無、さらにお子さんの年齢が把握できればなおよいでしょう。
要はこうした最低限の情報から入居者のライフステージを想定するわけです。
学生さんであれば卒業時に退去する可能性は非常に高くなります。
ビジネスパーソンは人事異動の時期になります。とはいえ、人事異動は公務員、勤めている企業によって違いがあります。
目安としては、公務員は年度替わりの4月、一般企業は新入社員が入ったあとの6月、年度の半期になる10月が多くなります。また、その企業決算のあとということもあるので、入居者の勤務先の決算期を把握しておく。多くの企業では3年、長くても5年で異動というところが多いので、入居の際にそれとなく聞き出しておくのも方法です。
こうしておけば、退去に対してある程度は備えることが可能になります。
空室期間を短縮させるには「できることのすべてを」の精神が必要
一方、こうした想定をして備えていても予想外の時期に退去の連絡が来ることはあります。人が動く時期であれば、次の入居者を見つけるのは比較的容易ですが、その時期が外れた時期だと、物件を探す人の数は少なくなってしまうので、入居者が決まりにくくなることが予想されます。
その際の効果的な方法が、賃貸募集の案内をしてくれる営業担当者のインセンティブを増やすというものです。
仲介手数料は営業担当者の収入に結びつくものが成功報酬。賃貸手数料の上限は、家賃1カ月分で、これを貸主、借主双方から半分ずつ、あるいは貸主、借主のどちらか一方から1カ月分受け取ることができます。
この仲介手数料とは別に1カ月分のインセンティブを付与して、入居者が1カ月早く見つかればトータルでトントン。むしろ空室期間の短縮は、その後のことを考えても有効だと私は考えています。
もちろん、それに頼らない方法で工夫することも大切です。
いまでは大家みずからが無料で物件情報を掲載できるSNSや賃貸募集のプラットフォームを活用する人たちが増えてきました。このインセティブの分をフリーレントなど、これから入居する人たちへのサービスに使うことで、入居希望者の目に留まりやすくなり、空室期間を短縮できる可能性が高まります。
できることのすべてを実行する――これが大家業で失敗しないための秘訣だと思っています。
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この記事を書いた人
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
FPオフィス ケセラセラ横浜代表 百貨店在職中にファイナンシャル・プランナーの資格を取得。税理士事務所、経営コンサルティング会社などを経て、FPオフィス ケセラセラ横浜を開設、代表を務める。 マイホーム購入・売却相談のほか、不動産投資のサポートも行なっている。株式投資やFXなど一通りの投資を実践した後、2007年より不動産投資をスタート。現在は、自らの資産運用はほとんど中古マンション投資に絞って取り組んでいる。