ファミリー向け分譲マンションに特化した不動産投資法――ファミリー向け分譲マンションで不動産投資をする理由②
2021/07/17

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自分の住みたいと思う物件を提供する――。そんな想いを持ち、広島県を中心に分譲マンションを区分で購入、賃貸として貸し出す賃貸住宅オーナーの横山顕吾さん。「ひろしま大家の会」の代表でもあり、自身を「分譲マンションコレクター」と称し、入居者に素敵な分譲ライフを提供するため日々尽力しているという。本連載は、横山さんが考える不動産投資、賃貸経営、オーナーのあるべき姿などをお届けしていきます。
分譲マンションが低リスクNo.1
前回のコラムから、なぜ私がファミリー向け分譲マンション不動産投資をしているのかの理由をお伝えしています。それは、ファミリー向け分譲マンション投資は他の不動産投資と比較して断トツの「低リスクNo.1!」と判断したからです。その判断理由の二つを前回のコラムでお伝えしました。
その一つ目の理由が、一棟物のアパート・マンションや戸建てと比較して、構造体や設備、デザインが分譲仕様のため、賃借人から積極的に「住みたい」と思っていただける可能性が高いということです。
二つ目の理由が、ファミリー向け分譲マンションは「構造体がしっかりしている」からでした。今回のコラムでは、まだまだある分譲マンションが低リスクNo.1の理由をお伝えします。
綿密に計算され 多くの人が「所有したい」と思う立地
三つ目の理由は、分譲マンションはマンションデペロッパー(販売会社)が事前に綿密な調査をして土地を仕入れ、建築しているため好立地の物件が多いです。不動産は「立地がすべて」という人もいるくらい「立地」は重要です。国としても、土地は公示価格、相増税路線価、固定資産税路線価の三つの評価をしています。それくらい土地を国家の資産として重要視しているわけです。
では「好立地」とはどういう立地のことをいうのでしょうか? 地価の高額な土地が「好立地」でしょうか? 不動産投資家であれば、路線価を基準とした積算価格より安く購入できることが「好立地」と考える方もいるかもしれません。
いろんな考え方がありますが、単純に売買の回数を考えてみます。つまり、一つの土地(一筆といいます)を多くの人が「所有したい」と思うのかどうかということです。
一棟アパート・マンションや戸建ての売買の場合、売主は1名(1社)で、買主も1名(1社)です。双方の合意金額で契約成立です。売買回数は1回です。
一方、分譲マンションは、売主は1社、買主は販売戸数です。大規模マンションの場合、1つの建物を100世帯以上、物件によっては1000世帯近くある団地のようなものまであります。その世帯数分の売買回数があるのです。
分譲マンションのような集合住宅の場合、建物の構造や間取りについては、都心であっても地方であっても大きな違いはありません。マンションの人気は、建物の差より立地の差が大きいのです。立地の価値が高いと、多くの人が売買する可能性が高いと考えられます。
分譲マンションの購入単位は、世帯数の人が購入した物件の内の一部屋ですので、世帯数の売買があった立地に建っている物件を購入したということです。
加えて、新築の分譲マンションの購入価格を土地と建物に分けた場合、購入土地価格が路線価より安いということはほぼ考えられません。戸建てや一棟アパート・マンションの購入を検討する際、「積算金額が土地値より安いからお得」という理由で購入することがありますが、分譲マンションの場合は、路線価より高額な土地価格にも関わらず、世帯数の人が購入した実績ある立地のマンションであるということになります。
また分譲マンションは、企画段階で売主であるマンションデベロッパーがしっかり市場調査をします。土地を購入する段階で、多くの従業員や経営者が関わり、その立地に分譲マンションを建築することを判断します。つまり、分譲マンションは、企画段階でも多くの人が関わり、売買においても世帯数の人が積算価格より高額であるにも関わらず、世帯数分の人が購入しており、客観的に実績のある物件といえます。
さらに分譲マンションは、ほとんどが鉄筋コンクリート造の耐火構造です。戸建てやアパートは木造が多く、耐火構造ではありません。人が集まるエリアは防火地域に指定されていることが多いのですが、防火地域の建物は、耐火建築物・準耐火建築物である必要があります。
つまり、防火地域という人が集まる好立地の可能性の高いエリアには、木造住宅のアパートは建築できないのです。ところが、分譲マンションは鉄筋コンクリート造で耐火建築物ですので、当然防火地域に建築できます。したがって、分譲マンションは防火地域内の好立地に建っていることも多いということになります。
管理方法の大きな違い
四つ目の理由は、分譲マンションは、分譲マンション管理会社に管理組合が管理委託している場合が多く、建物管理がしっかりしているからです。
賃貸アパート・マンションを所有されている人は、物件管理をどうされていますでしょうか? 自主管理でしょうか? 委託管理でしょうか? サブリースでしょうか?
私が賃貸経営に関わりたいと思った一番大きな理由が、この「物件管理」にあります。私が不動産投資の勉強を始めたのは約10年前です。勉強を始めたときは、分譲マンション管理会社に勤務していました。不動産投資を学び始めて一番の驚きが、賃貸管理会社と分譲マンション管理会社の業務内容が全く異なるということでした。
分譲マンションは、永住することができるよう使用材料を質の高いものを使う傾向があります。建築基準法ギリギリではなく、構造体もしっかりした設計で行われることが多いです。そして、建物の維持管理のために、管理者がほぼ毎日勤務し、日常清掃を行い、加えて特別清掃という機械洗浄を2~3カ月に1回行います。また、各設備を定期的にメンテナンスします。
さらに、大規模修繕のための修繕積立金を毎月積み立て、長期修繕計画に基づき計画的に修繕を行います。そして、積み立てた修繕積立金で大規模修繕や小規模修繕を定期的に行い、マンションの価値を維持しようとします。これがごく普通の分譲マンションの管理です。
賃貸アパート・マンションは、資産運用が主目的のため質の高い材料を使う量は限られます。構造体も建築基準法ギリギリが多いです(建築基準法の基準を満たしていれば耐震性に問題はありません)。建物の維持管理は、別途料金となるため委託した管理会社が直接関わっていません。清掃も多くて週1回くらいです。修繕積立金を積み立てていることも少なく、仮に修繕積立金を積み立てていても、そのアパート・マンションを購入するときに、積み立てられた修繕積立金を引き継ぐことはありません。
長期修繕計画を立てているオーナーさんもほとんどいないです。そもそも賃貸アパート・マンションの管理会社が、長期修繕計画を作成することが管理委託契約の内容には入っていないからです。
つまり、分譲マンション管理会社の主業務は「建物」を管理することなのですが、賃貸アパート・マンション管理会社の主業務は「入居者」を管理することということなのです。賃借人の入退去の対応や家賃の入金確認という、賃借人という「人」に対する業務が管理業務の主業務なのです。
一方、分譲マンション管理会社は、マンションを維持管理するためのメンテナンスなどを行うという「建物」に対する管理が主たる業務なのです。建物がしっかりしている分譲マンションが、長期修繕計画に基づき修繕積立金を積み立てて長期的に維持管理していこうとしているのに、資産運用が目的で建築基準法ギリギリの構造の賃貸アパート・マンションには、長期修繕計画がないのは当たり前で、修繕積立金を積み立てる仕組みもないというのが一般的です。
これでは、全住宅の30%以上を占める賃貸住宅に住んでいる入居者に、良好な住宅を提供し続けるのは難しいのでは……、私自身が分譲マンション管理ノウハウを賃貸管理に導入することで、世間のお役に立てるのではと考えたのが不動産投資をするきっかけになっています。
つまり分譲マンションは、建物の管理がしっかりしている可能性が高いのです(ただし、物件により、管理の善しあしの差はとても大きいです)。
以上のような理由から、一棟物のアパート・マンションではなく、良好な住環境を長期にわたって入居者に提供できる可能性の高い分譲マンションでの賃貸経営を行っているのです。
次回(8月中旬予定)も、ファミリー向け分譲マンションで不動産投資をする理由は続きます。
【過去の記事】
第1話 区分マンションは儲からない? そんなことはありません
第2話 ファミリー向け分譲マンションで不動産投資をする理由
この記事を書いた人
マンション管理士、管理業務主任者、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、賃貸経営アドバイザー、防火管理者、損害保険募集人
1970年岡山市生まれ。筑波大学体育専門学群卒業後、転職を繰り返し、6つ目の勤務先として分譲マンション管理会社に就職。2008年から一般財団法人日本不動産コニュニティー(J-REC)広島支部長を務め、12年に投資用分譲マンション2戸を取得。17年に区分マンション所有に特化した専業家主へ転身。趣味はリフォーム、ラグビー観戦。