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ファミリー向け分譲マンションに特化した不動産投資法――区分マンションは儲からない? そんなことはありません

横山 顕吾横山 顕吾

2021/05/21

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所有するタワーマンションの外観

自分の住みたいと思う物件を提供する――。そんな想いを持ち、広島県を中心に分譲マンションを区分で購入、賃貸として貸し出す賃貸住宅オーナーの横山顕吾さん。「ひろしま大家の会」の代表でもあり、自身を「分譲マンションコレクター」と称し、入居者に素敵な分譲ライフを提供するため日々尽力しているという。本連載は、横山さんが考える不動産投資、賃貸経営、オーナーのあるべき姿などをお届けしていきます。

「儲かるかどうか」ではなく「お客様に満足していただくこと」

私の不動産投資法は、ファミリー向け分譲マンションを賃貸にするという手法です。「区分マンションは儲からない」という投資家が多いこともあり、ライバルも少なく、とても手堅い不動産投資法だと実感しています。

本コラムでは、なぜ一棟物での不動産投資ではなく、区分なのか? しかもワンルームでなくファミリータイプなのかをお伝えします。

多くの不動産投資家は「儲かるかどうか」に着目しすぎではないかというのが私の意見です。事業として不動産賃貸業を行うわけですから利益を出すことは当然のことです。では、どうやって利益を生み出すかというと、「お客様に満足していただくこと」で継続的な利益を生むと考えています。

しかし、不動産賃貸業で「入居者(お客様)満足」から考えて事業展開している人は極端に少ないというのが私の実感です。実際に出版されている書籍などでも「資産〇億円」や「手取り〇千万円」など「自分が、自分が」「安く直して、あるいは直さずに高く貸す」という内容が多く、「入居者(お客様)をいかに喜ばすか」「自分の家だったらどうするのか」という視点がほとんどありません。

では、なぜ私が「入居者(お客様)満足」を第一に考えて不動産賃貸経営をしているかをお伝えします。

過去の経験から不動産投資の方向性を見出す

私は大学を卒業してから7つの会社で働いているのですが、その5つ目の会社が子ども向け英会話教材の訪問販売でした。私は英語は全くできないのですが、その英会話教材のコンセプトが「英語を学ぶ」ではなく、「英語で学ぶ」というものでした。今であればよく聞くフレーズですが、当時の私には衝撃でした。「こういう学習法で学んでいれば、自分も英語が話せるようになれたのに」と思えました。

そして、日本の教育では英語が話せるようにならないことを例に出して、一生懸命営業して、まずまずの営業成績を最初の方はあげることができていました。

しかし、時の経過とともに、販売している英会話教材がそれほどいい教材ではないことに徐々に気付き始めてしまいます。それとともに営業成績も下降し始め、入社2年後にはリストラになります。「心からいいと思えない商品を売ることは難しい」ということを強く思いました。

そして、その後、不動産投資をすると決意することになるのですが、どういう賃貸物件で事業をするかを考えたとき、「自分がいいと思った物件を提供する大家になる」と決めたわけです。

自分が住みたいと思う物件で勝負する

賃貸住宅としては、①一棟アパート、②一棟マンション、③戸建て、④区分マンションの4種類しかありません。この4種類のうち、どの賃貸住宅であれば私自身が「いい物件」と思えるかをまず考えました。言い換えると、この4種類のうち、どの賃貸住宅に自分が住みたいと思うかです。自分が住みたいと思えない家を、入居者(お客様)に提供することは難しい(最初はできても、いずれできなくなってしまう)と経験から学んでいます。

まず、一棟物の賃貸アパート、一棟物の賃貸マンションには「自分が住みたい」とは思えませんでした。

戸建ては「住みたい」と思えます。「庭付き一戸建てに住むことは夢」と思う人も現実に多いです。しかし、賃貸経営で考えた場合、戸建てはエリアが郊外になってしまいます。立地力が低い可能性が高いということです。また、投資資金を少なめにする必要性から、戸建て賃貸の多くが、どうしてもボロ戸建てが中心となります。ボロの木造住宅を復活させることはいいことだと思いますが、構造体が本当にアウトの可能性もあり、リスクも高いです。私は戸建てであっても「ボロ」にはあまり住みたくないです。耐震強度も心配です。

となると、残りの区分マンション一択です。区分マンションであれば私自身「住みたい」と思うし、ほぼすべての物件がRC造で耐震強度も高く安全です。

繰り返しになりますが、自分が住みたい物件であれば、自信をもって入居者(お客様)に住んでいただけます。この視点は、今後の少子高齢化時代の賃貸経営では、とても重要になってきます。

区分投資はワンルームだけではない

次に区分マンションには、ワンルームとファミリー向けの2種類に分かれます。

不動産賃貸業界で「区分投資」というと、ほとんどがワンルームマンション投資です。しかし、ワンルームマンションは、確かに分譲マンションではありますが、実態は一棟物の賃貸マンションとほぼ一緒です。オーナーが一人かそうでないかの違いにすぎません。オーナーが多くいることで、むしろ適切な管理がしにくくなるリスクも高くなります。快適性が損なわれる可能性も高いです。となると、区分マンションでもワンルームは「自分が住みたい家」にはなりません。

そうではなく、オーナーが実際に居住している、そして生涯自身の住まいとして暮らしているファミリー向け分譲マンションが最後に残ります。私自身が住みたいと思う物件も多いです。

ファミリー向け分譲マンションの多くは、新築時には何千万円もの住宅ローンを組んで購入したマイホームが大多数です。購入者(オーナー)は資産価値を維持したい気持ちが強いですし、建物自体をしっかり管理し、長持ちさせようとする人も多いことが予想できます。


イメージ/©︎rawpixel・123RF

そういったことから、ファミリー向け分譲マンションでの不動産投資をすることを決めました。しかしその頃は、ファミリー向け分譲マンションで不動産投資をしている人がほとんどいませんでした。書籍もありませんでした。

多くの金融機関が認める不動産投資法の確立

私が6社目と7社目に勤務した仕事が、分譲マンション管理会社でした。その経験から、分譲マンションの価値を可視化・数値化・標準化することができれば、売値よりも価値の高い分譲マンションの判別ができるのではと考え、分析ツールを作り始めました。2008年のことです。分析ツールの作成には約4年かかりました。作成した分析ツールで物件購入を始めたのが12年です。

分譲マンション管理会社の給与は決して高額ではなく、また退職金制度もない会社でしたので、属性は高くありません。年齢の割に勤続年数も短いです。多額の自己資金を投入していては、資産規模の拡大は難しい状況でした。まして区分投資の場合は、1戸ずつ購入していくことになるので、1年に1戸ずつで、キャッシュフローが1万円だとすると、満室で月額30万円になるのに30年もかかることになります。

そこで、最低でもフルローン(売値の融資を受ける)とし、できる限り諸経費分も含めたオーバーローンでの融資を受けることが必要です。この最低フルローンという基準は、私が購入しようとしている分譲マンションの価値が金融機関からみても、販売価格と同等、あるいはそれ以上であることの証明でもあります。

自己資金があまりないことと、金融機関が販売価格以上の価値を認めるマンションであることを証明するためにも「原則オーバーローン、最低フルローン」は今でもこだわっている基準です。

最初に立てた目標が「10年で30物件、満室キャッシュフロー50万円」です。この目標と分析ツールでの結果を金融機関に熱くプレゼンをした結果、今は9つの金融機関から融資を受けています。つまり特定の金融機関による「〇〇スキーム」とは異なり、多くの金融機関が認めた不動産投資法なのです。

第2話(6月下旬頃掲載予定)へ続く――

 

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この記事を書いた人

マンション管理士、管理業務主任者、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、賃貸経営アドバイザー、防火管理者、損害保険募集人

1970年岡山市生まれ。筑波大学体育専門学群卒業後、転職を繰り返し、6つ目の勤務先として分譲マンション管理会社に就職。2008年から一般財団法人日本不動産コニュニティー(J-REC)広島支部長を務め、12年に投資用分譲マンション2戸を取得。17年に区分マンション所有に特化した専業家主へ転身。趣味はリフォーム、ラグビー観戦。

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