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建物のエントランスを街猫のトイレにさせないために 「餌をやらなければ猫はいなくなる」はウソ

山本 葉子山本 葉子

2020/04/04

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なぜ、エントランスや花壇が猫のトイレになってしまうのか?

すっかり春になりました。マンションやアパートのエントランスの植栽や花壇には可愛い花が登場したり、みずみずしくなってきたりする季節ですね。
そんな建物のエントランスは”顔”なのに、NPO法人東京キャットガーディアンには「近所の猫がトイレに使って困っている」と言ったご相談をいただくことがあります。
ご相談は電話やメールでも状況を聞いて対応しますが、可能であればそれぞれの現場を見せてもらっています。すると、ある事に気がつくのです。

「エントランスが、猫のトイレに適した状態になってる」

ということです。
これ以上ないくらい残念なこのフレーズを、建物を大事にしているオーナーさんや管理会社の方々にお伝えするのが本当にはばかられますが、でも実際にそうした物件が多いのも現実です。猫と暮らしたことのある方は、気がつくのが早かったり、解説するとすぐに理解して下さったりします。しかし、猫と接したことがない方、猫の行動をご存知でない方にはわかりにくいのかもしれません。

猫はもともとが砂漠の生まれ。そのため排泄は砂で用を足して、そこをザクザクとかいて埋めるのが習性です。つまり、この「堀返しやすい・埋めやすい素材」と「踏ん張るのに適している場所」などの条件が整ってしまうと、トイレとして使われる頻度が上がってしまいます。

一度、トイレとして使用されると、次々と他の猫たちも来て、それぞれに縄張りを主張して”マーキング大会”になることもあります。ホームセンターなどで販売している忌避剤や、お酢などを置いたりする撃退方法は、あまり効果が見込めません。

美しいエントランスでは、低木の周りにグランドカバーの草花が植えてあることも多いのですが、新築などで植えた直後は草花で土を覆いきれていなかったりすることがあります。
また、月日とともに部分的に枯れた場所を放置しておくと、地面が露出してしまうこともあります。そうです、そうした場所が堀返しやすい猫の大好きな場所になるわけです。

とくにエントランスに屋根があってその中に植栽がある場合、毎日ちゃんと水やりや手入れをしないと、ドライエリアになって、植物は枯れて土も乾燥。このサラサラになった土は、猫の故郷砂漠の砂によく似ているのです。実際にお伺いした中には「乾燥した土が巨大なプランターボックスに山盛りになっている」場所もあって、オーナーさんにそのつもりはなくても、見方を変えれば猫たちの理想のトイレになっていたりします。

(土がむき出しのところは、猫のトイレには格好の場所)

街猫対策は、地域の理解が必要――成功例

数年前、猫の糞尿問題のご相談で高級住宅街の一角にお邪魔した際には、美しい砂利敷きのファサードを見せていただきました。
白く綺麗な細かい砂利の上にところどころ黒いものがコロコロしています。フランス人のご主人は、日本の建築様式に憧れて、建物の一部にそのエッセンスを取り入れたいと思っての砂利採用だったようです。雨が溜まらず、いつもさらさらで、ザクザク掘ることができて、平らで踏ん張りがきく――。私には猫たちの楽しそうな様子が目に見えるようでした。

このことをオーナーにご説明すると、がっくりと肩を落とされました。しかも、周りの住宅にはほとんど土がなく、コンクリートで固められている。そんな街の中で生きている猫たちが、ここに集まってくるのは必然とも思えました。

そこで、対処療法と根本解決のための提案をしました。
(1)玉砂利を水で洗ってなるべく臭いを落とす
(2)大きな石をファサードにいくつも配置して、平らな場所を減らす
(3)近所のオフィスビルにご協力いただいて、猫トイレ自体をそこに移動させる

結論から言うと、このケースはとてもうまく問題解決できました。
具体的には次のような取り込みを行いました。
(1)は思った以上に大変な作業でした。
(2)は、オーナーさんの知り合いの石屋さんにご協力いただけて、輸送費以外はほぼ無料。
(3)は近隣オフィスビルのオーナーさんたちが「地域社会の問題」と正しく捉えてくださって、敷地の一部に「管理されている猫トイレ」を設置させてくれました。

また、猫の餌やりさんを探して、ルール作りの場をもうけ、なんども話し合いを行いました。その結果、現在被害を受けている場所からの猫の誘導や、時間を決めた適切な餌やり、花壇の奥にひっそり作られた猫トイレ場所の定期と清掃など理解を得ることができたのです。そして、その運用がうまく行って、関係者一同ホッとしたものです。

猫被害を防ぐ手だては次のようになります。
・植栽がきちんと地面を覆うように管理すること(水やりや植物の補充)
・乾いた土が溜まっている場所が無いように注意すること(ドライエリアがある場合は特に)
・上記のような適切な管理がされているか、他にも問題点は無いかなどの定期的な検証

(猫の入り込むスペースをなくすことがポイント)

このようにマンションエントランスを綺麗に美しく保つのは、「ごく普通の正しい管理+猫に関する多少の知識」があれば、対応はできます。
正しい管理は管理会社さんにお願いすることになりますが、猫に対する対応はは、保護団体や地域のボランティアさんとお話しいただくのがいいと思います。交渉次第にはなりますが、地域猫のボランティアさんに植栽の管理(と餌やりトイレ清掃の管理)をアルバイトとして頼むことも一考に値するのではと思います。

「餌をやらなければ猫はいなくなる」という話がよく出ますが、実際にはこの方法は機能しません。それは「猫にご飯をあげる人はいなくならない」からです。
人は弱いものを助けたいという根本的な欲求があって、善悪とか動物愛護精神とかいう前に、子どものようなものには手を差し伸べてしまうのです。
過剰繁殖に繋がらないように不妊去勢手術を早めに行って、ゆるゆると数を減らしていくのが今時の猫との付き合い方なのです。

排除するよりもずっと建設的な方法、綺麗な管理状態を保って、地域の環境保全(猫の糞尿問題解決)に寄与する物件運用を行っていきましょう。わんにゃん110番など、私ども東京キャットガーディアンが運営している無料ホットラインでも、ご相談をお受けしています。

文/山本葉子(NPO法人東京キャットガーディアン代表)

 

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この記事を書いた人

NPO法人東京キャットガーディアン 代表

東京都生まれ。2008年猫カフェスペースを設けた開放型シェルター(保護猫カフェ)を立ち上げ、2019年末までに7000頭以上の猫を里親に譲渡。住民が猫の預かりボランティアをする「猫付きマンション」「猫付きシェアハウス」を考案。「足りないのは愛情ではなくシステム」をモットーに保護猫活動を行っている。

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