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賃借人有利をフル活用したサブリース問題

サブリース業者に求められる「衡平」な説明義務(2/2ページ)

大谷 昭二大谷 昭二

2020/02/06

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サブリース裁判に一石を投じた最高裁での「補足意見」とは

そんななかで、サブリース裁判を巡る最高裁判決(04年11月8日付)において滝井繁男裁判官は補足意見として、家賃減額は「当初予想収支」を損なわない程度と呈示しました。すなわち、この補足意見は賃貸人の当初予想していた利益が確保できる程度の賃料額まで保護するものとなっている点において、特筆すべきものがあります。

滝井裁判官の補足意見は、賃料減額請求における「相当賃料額を決定するにあたっては、賃貸借契約の当事者が賃料額決定の要素とした事情を総合考慮する」という最高裁の一般基準を前提にしながら、各事例における考慮要素として、賃貸人の当社予想収入、および、これに基づく銀行借入れに対する返済計画を決定的に重視しています。一方で、減額請求時における建物賃料相場を実質的にはほぼ考慮していません。

また、考慮の結果としての上記補足意見および判決の結論は、賃貸人が計画どおりの返済を果たすに足りる程度の賃料額を保護するにとどまらず、「当初予想収支」を損なわない程度、すなわち賃貸人の当初予想していた利益が確保できる程度の賃料額まで保護するものとなっています。

保護規定を立法措置で講じると、以下のようになります。

(1)賃貸住宅管理主任者登録制度、サブリース業者のオーナーに対する営業保証金制度を含む義務的登録制度

(2)不実告知・重要事項の不告知、断片的判断提供の禁止と違反の場合の取消権付与

(3)事業収支計画と現実の収支が齟齬した場合の差額を損害と推定する規定の導入

(4)賃貸借契約書特約条項に契約の基盤となった「事業収支計画」を遵守する旨を記載

(5)サブリース業者からの家賃減額請求、契約更新時の新家賃取り決めにおいては融資金融機関との三者協議とする

(6)サブリース業者からの期間内の契約解除は、融資金融機関との三者協議とする

(7)サブリース業者と一定の提携関係にある建築業者の連帯責任を求める

この提案の(4)、(5)、(6)は新規賃貸借契約、更新賃貸借契約で、これらのことを契約書に盛り込むことによって、いまの無防備な賃貸人を守り、これから、あるべき「衡平」の見地に照らした賃貸人の保護する規定の一歩となると考えています。 

政府は今国会で賃貸住宅の悪質なサブリースを防ぐ規制法案を提出するようです。

サブリースの業者や関連企業が所有者へ不当に勧誘することを禁止し、契約締結前に家賃収入を保証する機関や将来の減額リスクを「重要事項説明」での説明を義務付け、違反した業者には業務停止命令や罰金を科すのではないかとみられています。さらに、現在の任意の業者登録制度を改め、一定規模の戸数を持つ業者に対しては登録を義務付けるようです。

これまでかぼちゃの馬車の破綻や、レオパレス21の欠陥住宅問題などサブリースに関係した問題がクローズアップされたことで、やっとサブリース契約のあり方の見直しが動き出そうとしてます。

 

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この記事を書いた人

NPO法人日本住宅性能検査協会理事長、一般社団法人空き家流通促進機構会長 元仲裁ADR法学会理事

1948年広島県生まれ。住宅をめぐるトラブル解決を図るNPO法人日本住宅性能検査協会を2004年に設立。サブリース契約、敷金・保証金など契約問題や被害者団体からの相談を受け、関係官庁や関連企業との交渉、話し合いなどを行っている。

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