サブリース業者に求められる「衡平」な説明義務(1/2ページ)
大谷 昭二
2020/02/06
オーナーを籠絡させるサブリース業者のセールストーク
私が理事長を務めている日本住宅性能検査協会には、サブリース契約を結ぶ不動産オーナーから、今までに500件を超える契約解除・賃料減額にかかわる相談が寄せられており、この数からも不動産サブリース問題の深刻さがうかがえるのではないでしょうか。この相談のなかから見えた不動産サブリース契約の欠陥を浮き彫りにし、あるべき「衡平」の見地に照らした賃貸人の保護規定の提案を行っていこうと思います。
不動産サブリース(マスターリースともいう)とは、アパート・マンションといった大型の不動産物件を一括賃借し、それを分割またはそのままの規模で第三者に転貸する事業形態をさします。
このスキームは、物件の所有者が運用ノウハウ、運用体制をもたない場合などに用いられ、サブリース業者(おもに不動産会社)に運営代行フィーを支払って委託。サブリース業者は自社のもつノウハウ、人員を用いて物件を円滑に運営します。
サブリースを行う不動産会社は、アパートなど賃貸物件の建設を勧誘する際のセールストークとして、不動産サブリース契約におけるオーナー側のメリットを強調します。
実際、勧誘時には以下のような点を強調しているようです。
・不動産会社が一括管理するため、知識がなくとも賃貸物件を建てることができる
・賃借人との対応はすべて不動産会社が行うため、オーナーが対応しなくてもよい
・空室があっても空室分の家賃は保証され、オーナーに支払われる
・賃借人の原状回復は不動産会社または提携
・管轄する管理会社側が責任をもつ
・マンション建設費用は、賃料収入で長期的に回収可能であり、ローン金利は経費に計上できるので節税効果ある
このようなセールストークを受けた土地所有者(オーナー)は、不動産賃貸業の経験がなくても、手間をかけずに継続的に安定した資産運用になると信じて契約に至ります。ところが、最近になって、契約期間中にサブリース業者から賃料の大幅減額を迫られたり、契約解除を迫られたりするトラブルが多発しています。
不動産サブリース契約においては、賃借人兼転貸人が専門的業者(サブリース業者)で、賃貸人たるオーナーは当該専門業者に誘引されて契約した素人になります。つまり、従来の賃貸借関係では、賃借人は立場の弱い店子で、一方の賃貸人の大家は強い立場という関係が逆転した状態の賃貸人が契約弱者であるというケースが多いのです。
しかし、契約弱者である賃貸人を保護する直接の規制が、現行法上では存在しません。逆に、オーナーとの関係において借主にあたるサブリース業者が借地借家法のもとで保護されるという、いびつな関係が生じています。
過去には、不動産サブリース契約は借地借家法の適用外とする議論もありましたが、これまでに出された一連の最高裁判決により、「契約形式が不動産に関する賃貸借契約である以上、借地借家法を適用すべき」という結論がほぼ動かなくなったと評価されています。
この記事を書いた人
NPO法人日本住宅性能検査協会理事長、一般社団法人空き家流通促進機構会長 元仲裁ADR法学会理事
1948年広島県生まれ。住宅をめぐるトラブル解決を図るNPO法人日本住宅性能検査協会を2004年に設立。サブリース契約、敷金・保証金など契約問題や被害者団体からの相談を受け、関係官庁や関連企業との交渉、話し合いなどを行っている。