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大家はペット可物件に対してネガティブなイメージがある?

空室対策になるはずの「ペット可賃貸住宅」が増えない理由

山本 葉子山本 葉子

2020/01/25

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賃貸住宅のペット可物件数は相変わらず少ない 写真/東京キャットガーディアン

大家が持つ「ペット可」賃貸住宅のネガティブなイメージ

猫の保護団体を運営しています。

11年ちょっとの活動ですが、新しい家庭に迎えていただいた猫の数は、7000頭を超えました。私たちのシェルターの所在地が東京という事情もあるかと思いますが、我が子同様に考えて完全室内飼育をしてくださる「イマドキの飼いかた」が一般に普及してきて、とてもありがたく思っています。

日本では子どもの数より伴侶動物の数が上回る状況が続いているわけですが、賃貸住宅のペット可物件数は相変わらず悲しくなるほど少なくて、ペットを飼いたいというニーズにとても応えきれていません。

その一方で、賃貸住宅の空室問題は重大で大家さんも不動産会社も、物件に特色を出すためにフリーレント期間を付けるなど様々な対策をされています。しかし、確実に需要があるはずのペット可物件がなぜ普及しないのかとても不思議に思ってしまいます。

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私どもの団体「NPO法人東京キャットガーディアン」では、保護・譲渡活動の一環として「猫付きマンション」と「猫付きシェアハウス」という少し変わった賃貸物件の運営を行っています。これは保護猫の行き場を確保すると同時に、賃借人に預かりボランティアをお願いし、大家さんには社会貢献事業にご賛同いただく1つのシステムとして運営しています。

「猫付き」という言葉がパワーワードであるため、この形にしていただくと入居のお問い合わせは大変多くなり、私たちは保護猫の行き場確保、大家さんにとっては空室対策、住む方にとっては猫と生活できるとギブアンドテイクが成立するビジネスとしてのお付き合いを続けています。

このような賃貸物件に関わっている保護団体として、また猫の保護や飼い方のセミナーなども開催している関係上、大家さんやデベロッパーさんとお話をする機会がよくあります。

そこでよく耳にするのが、

・爪研ぎなどで壁や床にダメージが
・動物の飼育は臭いが付くから

というペット可住宅に対するネガティブなお話です。そこで詳しくお話を聞いていくと「知らない間に飼育数が増えていた」「以前の賃借人に大変汚く使用された」などといった過去の体験でした。

管理業務の見直しでペットトラブルを未然に防止


管理業務側が変われば、リスクを抑えてペット可住宅の運営ができる 写真/東京キャットガーディアン

しかし、これらの問題解決は可能です。その結論を言ってしまうと「管理業務側が変われば、リスクを抑えてペット可運営ができる」ということです。

これまで管理会社さんなどから団体に寄せられた相談の電話やメールのほとんどが「猫の多頭飼育にどう対処したらよいか……」「住人が犬を放置して出て行ってしまった……」といった内容でした。

現在のペット飼育数から考えると、こうした問題は充分に想定できるのですが、対応できる担当者がいないのでは無理もないと痛感することがしばしばあります。それでもたまに担当者が猫好きだったり、犬をご自身が飼っていたりする方がいて、会社業務とは別に個人的に行き場に困った猫や犬の不適正飼育の住人問題にあたっているケースがありますが、その対応には大変な労力と費用、そして心労がかかっています。その一番の対策方法は、管理会社が動物の管理に慣れた会社であることです。

もっと言ってしまえば、「管理会社が保護団体」だったら……。

想像してみてください。「管理会社が保護団体」であれば、ペットトラブルは早期発見・早期解決が可能になります。また、室内で多大なダメージが出る前に、あるいは賃借人の居住者が見かねて外猫を拾ったときなど、最初に相談できる相手が管理会社である保護団体だったら、動物の特性に添ったアドバイスを受けられ、場合によっては行き場のない子たちを託すことも可能です。

しかし、現在の不動産管理業務の状況では賃借人が犬や猫の相談を管理会社や大家さんになかなか相談することも難しく、場合によってはそんな相談をしたら「退去してください」と言われかねません。

私たち東京キャットガーディアンでは、数年前から(ささやかな数ですが)賃貸物件の巡回管理業務を行い、同時に飼育に関してのご相談や保護した猫の行き先探しなどに協力しています。そして、充分業務としてやっていけると感じています。この結果を大家さんや管理会社さんに広め、また、直接不動産管理を団体の業務として請け負い、人と動物の共生が持続できる賃貸物件の普及に努めています。

・既存の不動産管理部門に保護団体を活用する
・管理事業そのものを仕事として保護団体に委託する

新しい年に新しいシステムで、持続可能・拡大可能な住まいのあり方を、東京キャットガーディアンでは提案しています。

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この記事を書いた人

NPO法人東京キャットガーディアン 代表

東京都生まれ。2008年猫カフェスペースを設けた開放型シェルター(保護猫カフェ)を立ち上げ、2019年末までに7000頭以上の猫を里親に譲渡。住民が猫の預かりボランティアをする「猫付きマンション」「猫付きシェアハウス」を考案。「足りないのは愛情ではなくシステム」をモットーに保護猫活動を行っている。

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