不動産賃貸業を始めたときに提出する届出
渡邊浩滋
2016/08/15
賃貸物件を購入して、賃料収入を得ると、毎年税務署に確定申告をしなければなりません。 確定申告は、翌年3月15日までに行いますが、購入した年にするべき届出があります。
賃貸物件を個人で購入した場合と法人で購入した場合で分けて説明します。
1.個人で購入した場合
(1)開業届
開業から1ヶ月以内に、住所地または納税地を管轄する税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出します。 届出書の書式は税務署に用意されています。国税庁のサイトからダウンロードして、郵送でも行えます。(2)以下の書類も一緒に提出すると、手続きが一度ですみます。 提出先は住所地を所轄する税務署です。
(2)青色申告承認申請書
青色申告には多くのメリットがあります。
10万円の青色申告特別控除の適用
30円未満の減価償却資産をその年に一括で経費にできる特例(年間の合計で300万円まで)の適用
年間の損失の繰越控除の適用
事業的規模で一定の要件を満たした場合には
65万円の青色申告特別控除の適用
青色事業専従者給与の支給
など
青色申告にするには、税務署へ申請手続きが必要です。 青色申告承認申請書を住所または納税地の所轄税務署に期限までに提出します。 期限を過ぎてしまうと、青色申告は翌年度からになってしまうので、注意が必要です。 提出後、税務署から何も連絡がなければ、申請書は受理されたということになり、手続きは完了します。
■提出期限
○新規開業した場合
1月1日~1月15日までに開業:その年の3月15日まで
1月16日以降に開業:開業日から2ヶ月以内
※相続で承継した場合の期限は上記と異なります。
(3)青色事業専従者給与に関する届出
事業的規模の場合は、青色事業専従者給与が支給できます。 提出期限は、青色事業専従者給与額を算入しようとする年の3月15日(その年の1月16日以後、新たに事業を開始した場合や新たに専従者がいることとなった場合には、その開始した日や専従者がいることとなった日から2か月以内)までです。
(4)給与支払事務所等の開設の届出書
一定金額以上の給与を支払うときには、給与に係る源泉所得税・復興税を徴収し、翌月の10日までに納付しなければなりません。 「給与支払事務所等の開設の届出書」を所轄税務署に提出します。
(5)源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
給与の発生があると、毎月源泉所得税・復興税を納付しなければならず、事務負担が大きいです。 そこで小規模事業者については、年2回納付する特例制度があります。 1月~6月に源泉した所得税・復興税は7月10日までに、7月~12月に源泉した所得税・復興税は翌年1月20日までに納付します。 この特例を受けるには「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を所轄税務署に提出します。
2.法人の場合
(1)設立届
本店を管轄する税務署に設立から2か月以内に、会社の謄本(履歴事項証明書)や定款などを添付して法人設立届出書します。
法人の場合は事業年度が終わるごとに、地方税も自ら申告しなければなりません。 そのため、都道府県税事務所、市区町村にも設立届を提出します。 期限は同じく設立から2か月以内です。
(2)青色申告承認申請書
本店を所轄する税務署に、設立から3ヶ月経過日または事業年度末のいずれか早い日までに提出します。 法人の場合には、青色申告特別控除の適用はありませんが、青色申告にすることにより、損失を9年間(平成29年4月1日以後に開始する事業年度は10年間)繰り越せます。 併せて「給与支払事務所等の開設の届出書」と「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」の提出が必要です。(個人の場合を参照)
3.青色申告承認申請は忘れずに
これらの届出のうち、青色申告承認申請を提出期限までに提出しないと、その年(法人の場合は、その事業年度)は、青色申告の適用ができなくなります。
提出期限は個人が開業から2ヶ月以内、法人が設立から3ヶ月以内です。 忘れずに提出しましょう。
この記事を書いた人
司法書士・税理士
渡邊浩滋総合事務所。大家さん専門税理士・司法書士。渡邊浩滋総合事務所代表。「行動する大家さんの会(AOA)」発起人。 大学在学中に司法書士試験に合格。大学卒業後総合商社に入社。法務部として契約管理、担保管理、債権回収などを担当。退職後、税理士試験に合格。実家のアパート経営(アパート5棟、全86室)が危機的状況であることが発覚し、経営を立て直すために自ら経営を引き継ぎ、危機的状況から脱出。資産税専門の税理士法人に勤務後、2011年12月独立開業。税理士の視点と大家の視点からアパート経営を支援するために活動中。従来のような確定申告書だけ作成する税理士ではなく、経営・財政・税金の観点から提案をする不動産専門の税理士・司法書士です。 [著書]「税理士が教える節税Q&A」(TAC出版刊)、「大家さんのための超簡単!青色申告」(クリエイティブ ワークステーション)他。 [担当]不動産登記 渡邊浩滋は個人間直接売買において決済完了後に登記手続きを行います。