直直取引に要注意! 営業マンのおすすめ中古住宅が信用できるか、たった一言で見抜く方法
菅 正秀
2017/02/14
中古住宅選びは営業マンとの出会いが重要
最近は、建築費の高騰などで新築物件の価格が非常に高くなっています。たとえば、東京圏の新築マンションの価格は、平均5500万円となり、販売戸数・契約率ともに減少してきています(株式会社不動産経済研究所 「首都圏マンション市場動向」2017年1月19日より)。価格が高くなりすぎて、購入を躊躇してしまう人が増えているのでしょう。
そんななか、注目を集めているのが中古住宅です。新築マンションに比べて価格も手ごろですし、リノベーション物件が人気を集めたこともあり、中古住宅への関心が高まっているのです。
そこで今回は、中古住宅を探す際に、知っておいていただきたいことをお伝えします。
まず、中古住宅選びにおいて、最も大切なのは「信頼できる営業マンとの出会い」です。
たとえば、新築マンションが発売される際には、大々的に広告を出して、販売センターやモデルルームがつくられますから、そこに足を運べばいろいろと情報を得ることができます。
ですが、中古住宅を購入する場合、不動産仲介会社の営業マンに紹介してもらうというのが一般的でしょう。ですから、本当にいい物件を探してくれる営業マン、信頼できる営業マンと出会えるかどうかが、中古住宅選びの成否を大きく左右すると言えるのです。
新築物件の営業マンと中古住宅の営業マンの違いは?
信頼できる営業マンとの出会いがどれだけ重要か、もう少し詳しくお話ししましょう。
まずは、そもそもの前提として、新築物件の営業マンと中古住宅の営業マンの違いを知っておいてください。
新築物件の営業マンは、自分が担当している特定の物件を売るのが仕事です。そのため、いかにその物件が優れているか、ほかの物件と何が違うのかといった「売り込み営業」になります。こうした売り込み営業は、あなたも、新築マンションのモデルルームなどを見学に行かれて、経験されているかもしれませんね。
それに対して、仲介の営業の場合は、中古住宅市場(通称「レインズ」という売り物件を登録するデータベース)から、あなたの希望に合う物件を選び出し紹介することがメインになります。そのため、絶対に売らなければいけない特定の物件があるわけではありません。
ですから、仲介の営業マンの仕事の第一歩は、あなたの希望をしっかりお聞きすることです。お聞きした希望・条件に合う物件を探して紹介し、一緒に物件を見学に行って物件の善し悪しを見定めます。そして、あなたが気に入った物件を購入することになれば、その手続き(契約条件交渉や住宅ローン、登記移転)をお手伝いします。これでが仲介営業マンの仕事です。
そう考えると、あなたがいい物件に出会えるかどうかは、仲介営業マンの力量、つまり、
・どれだけあなたの希望を聞き出し、理解してくれるか
・その希望に合った物件を中古住宅市場のなかから見つけだせるか
といったこと、さらにはあなたの理想の物件を見つけ出すためにどれだけ動いてくれるかにかかっているというのがおわかりいただけるのではないでしょうか。
不動産仲介の営業マンにとって腕の見せどころとは?
実は、私が現役の営業マンだった頃、上司から、
「一本釣りで契約するくせに、仕事をしたような顔をするな!」
と叱られたことがあります。
『一本釣り』とは不動産業界の言葉で、不動産会社が出した物件広告(新聞折込やポスティング)を見たお客様が問合せをくださり、物件を見学されて、そのまま購入に至るケースのことを言います。
一本釣りの場合、営業マンは、お客様のニーズをヒアリングしたり、コンサルティングしたりすることもなく、また物件を市場から見つけ出す努力もせずに、たまたまお客さまのお問合せに出会っただけで営業成績が上がるというわけです。
仲介営業マンの腕の見せどころは、やはり、市場のなかからどれだけお客さまに喜んでいただける物件を見つけ出すことができるかです。
そのため、優れた営業マンは、お客さまとの対話のなかから、お客さま自身も気づいていないニーズまでをも引き出そうと必死に耳を傾け、中古住宅市場からお客さまが気に入りそうな物件をピックアップします。そして、物件を見学に行ったときのお客さまの反応から、本当にそのお客さまにマッチする物件かどうかを見きわめようとします。
こうした一連の取り組みのなかから、お客さまにとって最良の物件を提示し、購入していただくのです。
ですから、本来、不動産仲介の営業マンにとっては、
「そうそう、こういう物件を探していたんだよ。ありがとう」
と、お客さまに言っていただくのが何よりの喜びになるものなのです。
中古住宅探しは、営業マンとの「協働」作業
これは私が現役の営業マンだった頃から肝に銘じていたことであり、部下や後輩にも指導してきたことなのですが、中古住宅探しは、営業マンとお客さまとの「協働」作業です。
営業マンは、お客さまと理想の物件との「良い出会い」を演出するために、担当する物件や地域の情報に精通すべく、日々アンテナを張り巡らしています。
たとえば、担当地域の物件の成約情報だけでなく、新しい物件の売り出し情報、学校区、生活インフラ、またどこの銀行が現在住宅ローンの貸し出しに積極的なのかといったことなど、お客さまに役立ちそうな情報は何でもです。
そして、いざお客さまからお問合せがあったときには、その蓄積を活用した「勘ピューター」と住宅市場のデータが入っている「コンピューター」を駆使して、お客さまに物件をご提案していくことになります。
ですから、お客さまの側でも営業マンにはたくさんのヒントを与えたほうが、より精度高く物件を紹介してもらうことができます。
あなたが疑問に思ったこと、不安に思っていること、欲しい物件の詳細等なんでも投げかけてみましょう。たとえば、購入手続きのこと、ローンの組み方、物件の環境のこと、近隣のこと…、どんなことでもいいのです。
そうすれば、心ある営業マンなら、知っていることはすぐに答えてくれますし、仮に知らないことであっても、すぐに調べて答えてくれるはずです。
これが、営業マンと「協働」で住宅を探すということです。
あなたが司令塔で営業担当者が実務担当「相棒」というイメージですね。
「直直取引」にはご用心
ただし、不動産仲介業界には、この協働作業を阻むものがあります。
それは、業界で言う「直直(ちょくちょく)取引」です。
不動産仲介業のルールブックである宅地建物取引業法では、不動産会社がひとつの取引で売り主さん、買い主さんの両方から仲介手数料をいただくことを禁じていません。
そのため、自社が直接売り主さんから売却のご依頼をいただいた物件(直物件)を、買い主さんに紹介して購入していただければ、売り主さんと買い主さんの両方から仲介手数料をいただくことができます。つまり、他社が売り主さんから売却依頼を受けている物件を買主さんに購入していただくより、2倍の売上があがることになります。
ですから、不動産会社としては、売主さん買主さん両方から手数料がいただける「直直取引」を優先したくなります。そこで、お客さまにぴったりの物件より「売りたい物件」を優先する場合が出てくるということが起こります(売上目標が厳しい大きな会社ほどこの傾向が強いです)。
もちろん、直直取引であっても、買い主であるあなたがお探しの物件、つまりあなたの希望に合う物件であれば問題ありませんが、ほかに良い物件があるにもかかわらず、不動産会社が「売りたい物件」を優先されてしまったとしたら、一生に何度もする買い物ではないだけに非常に残念なことですよね。
紹介された物件が信用できるかどうかを見抜くには?
そんな残念なことにならないようにするためには、どうしたらいいのでしょうか。
困ったことに、一般のお客さまはレインズなどの不動産会社専用の物件データベースにアクセスして、自分で物件を探すということはできません。仮に、あなたにぴったりの物件があったとしても、営業マンにその情報を隠されてしまったらどうしようもありません。
そこでひとつ、おすすめの方法があります。
それは、営業担当者があなたに物件を紹介してきたときに、
「どういう意図でこの物件を紹介してくれたのですか?」
と聞いてみることです。
その答え方で、その担当者が、あなたの理想の物件を探しだすために額に汗してくれる人なのかどうかがわかるはずです。あなたの希望をかなえようと、自分が自信をもってすすめられる物件を選んできたのなら、「なぜその物件を紹介したのか」、きちんと説明ができるはずです。
その説明が納得できるものかどうかで、あなたがお探しの地域の物件動向、あなたのニーズ、ライフスタイル等を考慮して提案してきたものかどうかが判断できるでしょう。
直直取引の「売りたい物件」を押し込もうとしている営業マンのセールストークには、どこかに無理があるもので、冷静に聞けばわかるものです。
また、お客さまの側からこのような質問が出ることは、ほとんどの営業マンは想定していないはずです。それだけに、とっさの返答になり、その答えには本心がすけてしまいます。
もし、あなたを担当してくれている営業マンが「相棒」にふさわしくないと判断した場合は、担当者を代えてもらうなり、不動産会社を替えるなりしましょう。
大丈夫です。不動産会社はたくさんありますし、扱っている物件は基本的にはどこも同じです。
中古住宅探しは、信頼できる営業マンとの出会いが9割です。
あなたも、「良い相棒」を見つけて理想の中古住宅を見つけてください。
この記事を書いた人
株式会社フェリーズディア 取締役チーフコンサルタント
宅地建物取引士、マンション管理士、住宅ローンアドバイザー、福祉住環境コーディネーター。 1958年、大阪府大阪市生まれ。創価大学法学部卒業。大学卒業後、弁護士事務所に勤務、宅地建物取引士資格取得を契機に大手不動産会社に転じる。法律知識を活用し中古住宅、中古マンションの仲介営業を担当。 その後、顧客と一緒にモノづくりをするために、地域中小建設会社に移り、注文住宅・賃貸マンションの受注営業を担当。大手建設会社との競合が激しい中、操業以後に流入してきた近隣住民のクレームにお悩みの経営者さんに、不動産会社時代の人脈を使い工場の移転先を斡旋した上で、その跡地に93戸の賃貸マンション建設の受注をするなど、15年間で約32億円の受注する実績をあげる。現在は、建築にも明るい不動産コンサルタントとして、不動産会社のエスクロウ業務(契約管理)・新人社員指導等を行なっている。 一生に一度の買い物ともいえる住宅の購入をアシストできる人材を育成し、業界の健全な発展に貢献すべく活動中。