雨漏り、壁の亀裂、床の傾斜…。建売住宅でありがちな5つの不具合、その原因と対策は?
菅 正秀
2016/09/28
ケース1 なぜ雨漏りが起こるのか? その原因は?
どんな住宅であっても、どこかに不具合が生じる可能性があります。むしろ、その度合いはいろいろであっても、不具合のない住宅を探すほうがむずかしいといえるかもしれません。
不具合の代表ともいえるものが、雨漏りです。どんな家にも雨漏りが起こる可能性があります。雨漏りが起こると、構造上重要な木材を濡らしてしまい、カビ・シロアリなどが発生する原因となります。また、断熱材にまで水分がしみこむと断熱効果が低下するなど、さまざまな問題点が発生します。
防水の必要な部分については、シーリング(充填剤でふさぐこと)するのですが、このシーリングは数年でひび割れを起こします。それを放置していると、そこから雨が侵入してしまうのです。
そこで、シーリングの上からひびの入らないような塗装をするのが理想的ですが、高価な塗装なので、これをせずにすませている業者が多いのも現状です。もし、ひび割れ防止の塗装がされていなかった場合には、数年ごとにシーリング処置を行なうようにしましょう。
ケース2 防水シートの修繕は大掛かり
屋根・外壁の内側には防水シートが貼ってあります。もしシーリングのひび割れから雨漏りがあっても、被害の拡大を防ぐためのものです。ですが、まれにこの貼り方が間違っている場合があります。
この場合、修繕するには壁や外壁をいったん剥がして、シートを貼り直す必要があるので、工事は大掛かりなものになります。費用も高くなるため、進んで行なう業者は少ないのが実情です。
ケース3 壁の亀裂に要注意
地震などで外壁や内壁に亀裂が入ることがあります。しかし問題なのは、そうした明らかな原因がないのに発生する亀裂です。施工不良によって生じた可能性があるからです。
通常、柱に直接、壁を張ることはありません。多くの場合、柱に対し垂直に桟木を打ちつけ、その上に外壁・内壁を打ちつけていきます。この桟木の取り付け方に問題があると、壁に亀裂が入ることがあるのです。単に職人の技術不足の場合もありますし、柱が傾斜していたり、反っていたりすることが原因の場合もあります。
それを一から手直ししてくと大変な手間になりますが、ちょっとした不具合であれば表面的にはきれいに仕上げることができるため、なかにはそのまま施工してしまうケースがあります。そうなると、壁に亀裂が生じたり、壁がゆがんでしまったりということが起こるのです。
もし、壁に気になる亀裂を見つけたときには、建築士などの専門家に相談することをおすすめします。
ケース4 床の傾斜は地盤沈下の可能性も!
床が傾斜している場合、地盤や基礎の欠陥が疑われます。これらは後々大問題になる可能性をはらんでいる欠陥です。
床の一部分が傾斜している場合は、床下の「つか石・つか・大引き」と呼ばれる部分に異常があることがほとんどの原因です。その原因を取り除けば傾斜は直ります。それほど大掛かりな修正ではないので、すぐに業者に対応してもらいましょう。
一方、広範囲に渡って傾斜が起きている場合は、地盤沈下を起こしている可能性があります。家の傾斜は、住人の頭痛・めまいなど健康にも害を及ぼすので注意が必要です。
地盤に関しては品確法による瑕疵担保責任の対象外になってしまうので、法的な責任を業者に問うのはむずかしいのが現実です。しかし、いい業者であれば必ず地盤調査を行ない、問題があれば地盤改良をしてから建築を始めるので、「地盤改良を怠った」という意味では業者の責任を追及できるかもしれません。
ちなみに、適切な地盤改良を行なっていれば沈下はほとんど起こりません。
ケース5 基礎に亀裂がある場合はすぐに専門家へ!
最後に基礎についても触れておきましょう。
基礎の表面はモルタルで仕上げます。基礎に亀裂が入っていても、それがモルタル部分であれば強度に影響しないので、あまり心配する必要はありません。
しかし、基礎自体に大きい亀裂が入っている場合は、早急な措置が必要です。ただし、亀裂が表面的なものか、基礎そのものに及んでいるものかは素人目では判断がつきません。基礎部分に亀裂を見つけた場合は、速やかに専門家の判断を仰いだほうがいいでしょう。
もし、雨漏りや壁の亀裂など、何かしらの不具合を見つけた場合の対応については、「住宅の引き渡し後、不具合や欠陥が見つかった場合の対処法とは?」( http://sumai-u.com/?p=6530 )をご覧ください。
この記事を書いた人
株式会社フェリーズディア 取締役チーフコンサルタント
宅地建物取引士、マンション管理士、住宅ローンアドバイザー、福祉住環境コーディネーター。 1958年、大阪府大阪市生まれ。創価大学法学部卒業。大学卒業後、弁護士事務所に勤務、宅地建物取引士資格取得を契機に大手不動産会社に転じる。法律知識を活用し中古住宅、中古マンションの仲介営業を担当。 その後、顧客と一緒にモノづくりをするために、地域中小建設会社に移り、注文住宅・賃貸マンションの受注営業を担当。大手建設会社との競合が激しい中、操業以後に流入してきた近隣住民のクレームにお悩みの経営者さんに、不動産会社時代の人脈を使い工場の移転先を斡旋した上で、その跡地に93戸の賃貸マンション建設の受注をするなど、15年間で約32億円の受注する実績をあげる。現在は、建築にも明るい不動産コンサルタントとして、不動産会社のエスクロウ業務(契約管理)・新人社員指導等を行なっている。 一生に一度の買い物ともいえる住宅の購入をアシストできる人材を育成し、業界の健全な発展に貢献すべく活動中。