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外壁の防火構造に大きな問題あり

積水ハウスのシャーウッドは建築基準法23条に違反している!

岩山健一岩山健一

2016/07/29

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シャーウッドには重要な問題がある

積水ハウスの木造住宅、シャーウッドをご存知でしょうか。テレビCMはなかなかおしゃれに制作していますし、きっとかなりの費用をかけているのでしょう。しかし、そのCMのイメージとは裏腹に、重要な問題を抱えているのがこのシャーウッドなのです。

積水ハウスには、鉄骨プレファブの商品と木造(在来金物工法)の商品のラインナップがあります。鉄骨プレファブもさまざまな社会問題があるのですが、今回はシャーウッドが抱えている問題を指摘したいと思います。

シャーウッドは、在来の木造に近い軸組工法をベースとして、積水ハウスが独自に考案した構造として商品化しているものです。具体的には、仕口金物を装着してドリフトピンで留めていく考え方の構造形式なのですが、このような構造形式は一般にも手に入るもので、実は何も珍しいものでも、特段価値の高いものでもありません。

そんな積水ハウスのシャーウッドには、どのような問題があるのでしょうか?

そこに言及する前に、まず“建築基準法違反ではあるけど合法的になる”という、鉄骨プレファブの矛盾について説明をしておきましょう。

型式適合認定制度の何が問題なのか

積水ハウスに限らず、「ぱあとだせ」が展開しているすべての鉄骨プレファブに共通していることなのですが、「型式適合認定制度(型式認定)」という建築基準法上の制度を利用して、建築コストを抑えた「安上がりな建物」を目指している、ということがいえます。

この型式適合認定制度について簡単にご説明しましょう。

そもそも建物を建てることは誰でも自由にできますが、その前に、その建物が「建築基準法」や関連法規に合致しているかを確認する必要があります。これを「建築確認」とよんでいます。本来、建築確認は、建築物ごとに細かく審査されるものですが、型式適合認定制度とは、この建築確認の負担を減らすための制度で、平成10年の建築基準法改正時に導入されました。

たとえばプレファブ住宅など、建築部材が工場で大量に生産され、同一の型式で量産される建築物や、標準的な仕様書で建設される住宅などについては、その型式について一定の建築基準に適合していることをあらかじめ審査し、認定(型式適合認定)を受けておくことで、個々の建築確認や検査時の審査が簡略化されます。

鉄骨構造というものは、2階建て以上はすべて構造計算をしなくてはならないのですが、この型式認定さえ取得してしまえば、いちいち計算書を提出する必要がなくなる、法律で定められた水準以下のスペックでも容認されてしまう、といったことが起きるのです。

木造のシャーウッドは型式認定を取得できるはずがない

これによって、個別の建築確認を受けていれば問題視されるような建物であっても、建築確認が取れてしまうことになります。そして、特に積水ハウスにいえることなのですが、本来は設置しなければならない基礎底盤鉄筋を設置しなくてもよいように型式認定を取得しています。

この型式認定適合制度の是非については、また別の機会で触れたいと思いますが、要するに、事前に認定を受けておくことで、鉄筋の入っていない基礎や、薄くて細い鉄骨の使用が認められてしまうのがこの制度です。

とはいえ、この型式認定制度の認定を受けるにはふたつの条件があります。ひとつは、すべての部材の3分の1以上を認定された工場で製作すること、もうひととは建築現場を一級建築士に管理させることです。

しかし、木造であるシャーウッドは、すべての部材の3分の1以上を認定工場で制作するという2番目の条件を満たすことは、常識的に考えて無理があります。そのため、型式認定の取得は不可能だということがわかります。にもかかわらず、シャーウッドは型式認定を取得しているが如く鉄筋の入っていない基礎で建築しています。これはどういうことなのでしょうか。

シャーウッドはシステム上、建築基準法違反になる!?

もうひとつの重要なシステム上の問題は、建築基準法23条に対する違反です。そこでは、一般の木造住宅については、延焼の恐れのある部分に該当する外壁面においては、防火構造としなければならないと定められています。

これは具体的にどういうことかといえば、
・外壁面の室内側に防火被覆として張られている石膏ボードが天井裏にまで達してなければならない
・屋根の妻壁にも石膏ボードが防火被覆として張られていなければならない
といった条件が満たされていなければならないということです。

しかし、このシャーウッドは、システム上、それらの防火被覆を施工することができない施工方法が確立されています。したがって、シャーウッドは基礎構造および外壁の防火構造において、建築基準法違反となるのです。

なぜこのようなことが看過されているのか

では、なぜこのようなことが看過され放置されるのでしょうか。誰もがそう疑問に思うはずです。そして、その理由として、「建築確認の民営化」があげられます。

平成10年の建築基準法改正によって、国土交通大臣より、建築基準法の指定認定機関として指定を受ければ、民間企業であっても「指定確認検査機関」として、建築確認や型式適合認定を行なうことが認められることになったのです。

指定確認検査機関が多く設立された平成12年、積水ハウスも東日本住宅評価センターという会社に出資をし、さらに、自社の社員もその会社に投入しています。

本来は、建築確認や型式適合認定は、第三者機関が公正な審査を行うべきものです。しかしながら、住宅メーカーと資本関係のある会社が、第三者としての目を持っているといえるでしょうか? そのことが、型式認定適合制度によって不具合のある住宅がつくられつづけていることに、実は大きく影響していると私は考えています。

実はいま、積水ハウスを相手取って係争中の裁判があります。これは私の依頼者が起こしたものですが、まさにこの無筋基礎と防火違反もテーマとなっています。依頼者は積水ハウスの対応に納得ができず、和解などはせず、判決を取ることを希望しています。

この裁判の判決が出された際には、きっと新聞の1面で報じられ、事実が広く知られることでしょう。世の中に事実を伝えることは大変な労力が必要ですが、それによって家づくりで泣きを見る人が一人でも減ってくれることを願っています。

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この記事を書いた人

株式会社日本建築検査研究所 代表取締役

一級建築士 建築ジャーナリスト 大学で建築を学び、NHKの美術職を経て建築業界へ。建築業界のしがらみや慣習に疑問を感じ、建築検査によって欠陥住宅を洗い出すことに取り組む。1999年に創業し、事業をスタート。00年に法人化、株式会社日本建築検査研究所を設立。 消費者側の代弁者として現在まで2000件を超える紛争解決に携わっている。テレビ各社報道番組や特別番組、ラジオ等にも出演。新聞、雑誌での執筆活動も行なう。 著書にロングセラー『欠陥住宅をつかまない155の知恵』『欠陥住宅に負けない本』『偽装建築国家』などがある。

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