「入居後、数カ月で家が傾いた」「結露でキノコが生えてきた」。欠陥住宅はあなたの隣にある!
岩山健一
2016/07/01
欠陥住宅で泣かされている人はたくさんいる
住宅は、一生で一度あるかないかの大きな買い物です。もちろん、人によっては2度目の人もいるかもしれません。600ヘクタールあるような大豪邸から20坪に満たないような狭小住宅まで、ご家族の事情によってさまざまでしょう。ですが、高額な買い物であることに違いありません。
私のところには芸能人やスポーツ選手、企業の重鎮や官僚の方も相談に来ますし、何億円もの豪邸に住む人も相談に訪れます。お金に余裕がある人までもが相談に来ることを考えれば、誰にとっても住宅は、「一生に一度あるかないかの最大の買い物」だということが言えるのではないでしょうか。
1000万円そこそこの狭小住宅を必死の思いで建てたご家族だけでなくて、それなりの所得水準がある方にとっても、家というのは相対的に特別の買い物なのです。大豪邸であろうと、普通のごく一般の住宅であろうと、欠陥住宅で泣かされている人々はたくさんいるのです。
私が検査をした家のほとんどに何らかの欠陥が存在した
「新築一戸建てを買ったが揺れる」「すき間風が入ってきて寒い」などの相談から始まり、「ビー玉を床に置くと同じ方向に勢いよく転がる」「壁の表面がカビが生えたように変色している」、きわめつきは「窓枠から室内に雨が滴り落ちる」…。
「せっかくの新築が、入居して数カ月で家が傾いてきました」
「結露がひどくて、扉からキノコが生えてきて困っています」
「家のなかを歩いているとめまいがひどくて。明らかに床が傾いています」
などなど。
私に相談してくるのは、こんな出来事に遭遇した人たちです。欠陥住宅はテレビや本のなかだけのことではなく、実はとても身近な問題なのです。大げさな表現かもしれませんが、私が検査をした家のほとんどに、何らかの欠陥が存在していたのは紛れもない事実です。
建設業界と一般の人の社会通念には大きなズレがある
そもそも欠陥住宅とは何でしょう?
私は「瑕疵(かし)の存在により、安全性が欠如して、売るに売れない状況の住宅」と定義づけてきました。
では瑕疵とは何でしょう?
辞書では「きずや欠点」などとあいまいに表現されています。2000年施行の「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(以下、品確法)を担当する国土交通省は「住宅が、契約に定められた内容や社会通念上必要とされる性能を欠いていること」と説明しています。
そうすると欠陥住宅とは「契約に定められた内容や社会通念上必要とされる性能を欠いていることにより、安全性が欠如して、売るに売れない住宅」ということになります。
しかし「契約に定められた内容」となると、かなり広い意味があり、主観的な部分も含まれます。また「社会通念上必要とされる性能」といっても、建設業界人と一般の人の社会通念には大きなズレもあるようで、簡単に解決できないのが現実です。
なぜ欠陥住宅が造られてしまうのか
欠陥住宅が造られてしまうのは、工事関係者の無知と、設計者不在の業務遂行がまかり通ること、さらには新技術の導入に抵抗しがちな悪しき職人気質と法律がなじんでいないことが、大きな原因となっています。
品確法は、消費者を欠陥住宅から守ることを目的とした法律のはずです。しかし、品確法が施行された後も、住まいの欠陥をめぐるトラブルは後を絶ちません。むしろ増えていると実感しています。
いずれにしても欠陥住宅問題は、あなたから大切なものを奪います。そうならないよう、新築中や引き渡し前に建築検査するなど、できる限りの対策を取る人が増えてきています。自分のものは自分で守る。住宅産業に向けた消費者の視線をさらに厳しくすることが必要です。
この記事を書いた人
株式会社日本建築検査研究所 代表取締役
一級建築士 建築ジャーナリスト 大学で建築を学び、NHKの美術職を経て建築業界へ。建築業界のしがらみや慣習に疑問を感じ、建築検査によって欠陥住宅を洗い出すことに取り組む。1999年に創業し、事業をスタート。00年に法人化、株式会社日本建築検査研究所を設立。 消費者側の代弁者として現在まで2000件を超える紛争解決に携わっている。テレビ各社報道番組や特別番組、ラジオ等にも出演。新聞、雑誌での執筆活動も行なう。 著書にロングセラー『欠陥住宅をつかまない155の知恵』『欠陥住宅に負けない本』『偽装建築国家』などがある。