不動産会社の営業マンは「自分が売りたい物件」しか売らない
ウチコミ!タイムズ編集部
2016/04/28
仲介手数料を超えたお金が動く場合もある
不動産会社の営業マンは、「自分が売りたい物件」しか売らない。
これはどういうことなのでしょうか? 「自分が売りたい商品を売るのは当たり前じゃないか」、そう思う人もいるかもしれません。でも、それは「これはいい商品だから多くの人に使ってもらいたい」という営業マンの思いがそうさせるものです。しかし、不動産会社の場合はちょっと事情が違います。いったいどういうことなのか順を追って説明していきましょう。
最近では大手不動産会社でも、「両手取引」「囲い込み」(*)といった消費者の利益を損ねるような行為を行なっていることが報道され、少しずつその実態が知られるようになってきていますが、それ以外にも不透明なお金のやり取りがあります。
(*)「両手取引」「囲い込み」についてはこちらの記事を参照してください: http://sumai-u.com/?p=4716
不動産売買の仲介手数料の上限は「物件価格の3%+6万円+消費税」です。しかし、ときにその上限を超えたお金が不動産会社に支払われることがあります。身も蓋もない言い方をしてしまえば、売り主にとって、余分な手数料を支払ってでも売ってほしい物件です。すべてがそうではありませんが、そこまでしないと買い手がつかない物件ということでもあります。
仲介手数料の上限を超えた分は、「○○料」「○○費」といった別の名前で支払われます。ほとんどが歩合給で働く不動産会社の営業マンにとっては、会社の利益になるだけでなく、自分の給料にも跳ね返ってくるわけですから、当然うれしい話です。
営業マンに直接支払われる「担ボー」というお金
ですが、営業マンにとって、もっとおいしい話があります。それが「担当者ボーナス」略して「担ボー」と呼ばれるキックバックです。
年々減ってはきているようですが、これは売り主が仲介手数料とは別に、担当の営業マンに渡す「ボーナス」のことで、インセンティブのようなお金です。インセンティブといえば美しいですが、もっと露骨な言い方をしてしまえば、営業マンの目の前にぶらさげるニンジン、物件を売らせるための裏金のようなものです。
担ボーは、不動産会社に支払われる仲介手数料とは違い、営業マン本人に直接支払われます。商品券などで手渡されることもありますが、100万円単位が現金で渡される、なんてこともあります。自分の懐に直接入るわけですから、先ほどご説明した「上限を超えた手数料」よりもうれしいのは間違いありません。
もしもあなたが営業マンだったら…
さて、ここで考えてみてください。もしも、あなたが不動産会社の営業マンだったとしたら、次のうちどの物件を売りたいと思いますか?
(1)お客様の希望に合っているが片手取引の物件
(2)お客様の希望とは違うが両手取引の物件
(3)お客様の希望とは違うが両手取引で担ボーありの物件
答え合わせはするまでもありませんね。(3)のような物件ばかりを売ることができれば、お客様のことを第一に考えて(1)のような物件を売るよりも、ずっと実入りがいいわけです。
「お客様に理想の住まいを提供したい」という理想を持って不動産業界に入ったとしても、このような不条理な慣習を目の前にしたら、その誘惑に負けてしまっても不思議ではありません。問題は不動産業界の悪しき慣習にあるといえるでしょう。
もちろん、お客様のために必死で汗をかく営業マンもたくさんいますが、すべての営業マンがお客様のために働いているわけではない、と考えておいたほうがよさそうですね。
不動産会社の営業マンは、「自分が売りたい物件」しか売らない…。この意味はおわかりいただけたでしょうか?
この記事を書いた人
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