建売住宅は郊外で買うべきか、市街地で買うべきか
菅 正秀
2016/03/24
数百戸規模の郊外型大規模開発
郊外の建売住宅で多いのが、数百戸規模という大規模開発案件です。郊外という地域柄、敷地面積も建物も広く庭づくりも楽しめるなど、すべてにおいてゆとりのある環境となります。
ニュータウンとして整備されるため、道路も広く街路樹には緑が多いなど、閑静な住宅地になるよう計画されています。タウン内には公園や商業施設などもあり、生活の利便性が高いのが特徴です。
また、地域の連携という面においてもすべてが新しいことから、古い慣習にとらわれない地域社会づくりが期待できます。社会的・経済的に近いレベルの家族がそろうことが多いので、近所づきあいはしやすい地域だといえます。このような大規模案件は資金力が豊富な大手のデベロッパーが手掛けることが多いので、安心感もあります。
しかし、都心からの距離は遠くなるので、通勤時間が長くなるというデメリットがあります。また、新築当時にはまだ生活利便性を高める施設が完成していない可能性も高く、少しの間不便を感じるかもしれません。
ちなみに戸数が多いことから10年以上に渡って売買が続くこともあり、価格が下落しづらい傾向にあります。とはいえ、タウンの計画そのものの費用も売買価格に含まれることから、比較的高価な物件が多いのも特徴です。
最近増加している中規模開発
大規模開発ほどの規模ではありませんが、数十戸から100戸程度の中規模開発が最近増えています。大規模開発地域よりも、都心に近いエリアで増加傾向にあります。そのため、交通の便はよくなりますが、敷地面積はやや狭くなり価格も高くなる傾向にあります。
実は、これまで企業が所持していた土地やグラウンドなどの処分が増え、中規模開発用の土地が増えてきているという背景があり、これまで中規模開発に積極的ではなかった大手不動産会社も参入してきているのです。
安さと交通の便がいい小規模開発
最後に数戸から数十戸の小規模開発をご紹介しましょう。小規模開発は大きな敷地を必要としないので、都心に近い地域で行なわれることが多く、立地や交通の便がいいのが特徴です。また、既存の道路を使うことから比較的安価な物件が多くなります。逆にいうと、既成の市街地のなかでの開発になるので、周辺の環境の影響を大きく受けることになります。
特に注意したいのは防犯面です。もともと市街地があるということは、さまざまな人が住んでいます。込み入った市街地のなかに開発された場所では、どのような人が住んでいるかまではチェックできませんし、地域社会に溶け込むことも必要になってきます。
このように、同じ建売住宅でも開発の規模によって環境は大きく変わります。一番大切なのは、自分たちがどのようなライフスタイルを持っているかです。大規模・中規模・小規模開発地域をできる限り見学し、自分たちにいちばんフィットする地域の建売住宅の購入を検討するようにしましょう。
この記事を書いた人
株式会社フェリーズディア 取締役チーフコンサルタント
宅地建物取引士、マンション管理士、住宅ローンアドバイザー、福祉住環境コーディネーター。 1958年、大阪府大阪市生まれ。創価大学法学部卒業。大学卒業後、弁護士事務所に勤務、宅地建物取引士資格取得を契機に大手不動産会社に転じる。法律知識を活用し中古住宅、中古マンションの仲介営業を担当。 その後、顧客と一緒にモノづくりをするために、地域中小建設会社に移り、注文住宅・賃貸マンションの受注営業を担当。大手建設会社との競合が激しい中、操業以後に流入してきた近隣住民のクレームにお悩みの経営者さんに、不動産会社時代の人脈を使い工場の移転先を斡旋した上で、その跡地に93戸の賃貸マンション建設の受注をするなど、15年間で約32億円の受注する実績をあげる。現在は、建築にも明るい不動産コンサルタントとして、不動産会社のエスクロウ業務(契約管理)・新人社員指導等を行なっている。 一生に一度の買い物ともいえる住宅の購入をアシストできる人材を育成し、業界の健全な発展に貢献すべく活動中。