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団体信用生命保険や住宅ローン控除にも影響あり

夫婦で収入合算して住宅を購入するときの注意点は?

秋津智幸秋津智幸

2016/02/07

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「収入合算」とはどんなもの?

マイホームを購入したいと考えた際、ほとんどの人が住宅ローンを借りることが前提になると思います。まだ年齢も若く、子どもができる前に、あるいは子どもが小さいうちに住宅を購入したいと考えるご夫婦も多いことでしょう。

年齢が若いうちは夫婦ともに収入がそれほど多くないため、夫婦のうち一方の年収だけでは、思っていたような住宅ローンを借りられないことがあります。そこで注目したいのが「収入合算」という考え方です。

各金融機関では「世帯年収」という概念を基本としていることから、収入合算という考え方があります。収入合算は、配偶者のほか、直系親族などでも可能ですが、金融機関によっては配偶者のみというところもあるので、確認が必要です。

収入合算では、たとえば、夫婦を例にすると、夫婦のうち一方の収入全部、もう一方の収入の2分の1までなど、合算できる基準がありますので、そのあたりも事前に確認が必要です。

収入合算の際に注意すべき点

収入合算は、使い方によっては非常に使い勝手のよい手段ではありますが、注意しておきたい点もいくつかありますので、その点を説明しましょう。

収入合算の際、主たる債務者(たえば夫)と従たる債務者(たとえば妻)の関係も注意が必要なポイントです。

まず、従たる債務者が「連帯債務者」となる場合についてです。住宅ローンをひとつの債務とすると、その債務に対して、夫も妻もそれぞれが全額の債務を負うのが「連帯債務」といわれる関係です。

たとえば、夫が主たる債務者で3000万円の借り入れをした場合、連帯債務者の妻も3000万円の返済義務を負い、どちらも返済する義務を負います。そのため、金融機関からは夫と同様に妻にも返済を求められます。従たる債務者が「連帯債務」となる代表的な住宅ローンは【フラット35】です。

次に、従たる債務者が「連帯保証」となる場合です。夫が主たる債務者で妻が「連帯保証人」とすると、妻は夫による返済が滞った場合に、夫の返済能力の有無にかかわらず、夫に代わり返済する義務を負います。

ただ、この場合でも金融機関にとっては、夫のみが“債務者”です。上記の「連帯債務者」は夫婦ふたりがひとつの住宅ローンの債務者であるのに対して、妻が連帯保証人ではあくまでも夫ひとりの住宅ローンといえます。一般の金融機関では、連帯保証のみとしているところが多いようです。

さらに、「ペアローン」というものもあります。「ペアローン」は、夫婦それぞれが別々に住宅ローンを組むものというものです。夫も妻もそれぞれが主たる債務者となります。

「ペアローン」では、妻は夫の借り入れに対し、夫は妻の借り入れに対して、互いに連帯保証人になります。互いに連帯保証人になるため、本人が返済できない場合には相手方の返済の義務を負います。この借り方では、住宅ローンは夫婦でふたつ組むことになります。

団体信用生命保険にも影響がある

また、収入合算において、上記のように債務の決め方によって、団体信用生命保険や住宅ローン控除の利用にも違いが出てくるので注意が必要となります。

まず、団体生命保険とは、債務者(返済義務者)に死亡、高度障害など万一のことがあった場合に、生命保険が適用され、住宅ローンのその時点での残債がすべて保険によって支払われるというものです。

団体生命保険にも保険審査は必要で、住宅ローンに団体信用生命保険への加入を義務づけている金融機関の場合、身体に生命保険に加入できない疾病等があると、そもそも住宅ローンを借りることができないこともあります。

この団体生命保険にも「収入合算」の場合、気を付けなければならない点があります。

上記の「ペアローン」の場合は、夫婦別々のローンとなるので、双方ともに団体信用生命保険に加入することができますが、それ以外の「連帯債務者」「連帯保証人」である従たる債務者は団体信用生命保険には加入できません。

収入合算では、あくまでふたりの収入を前提に住宅ローンを借りているため、従たる債務者が亡くなった、あるいは高度障害等で働けなくなると返済が非常に苦しくなるのですが、連帯債務者または連帯保証人には団体信用生命保険に加入できないため、返済は苦しいままになります。

多少割高にはなりますが、予防策としては、収入合算で、ペアローン以外で住宅ローンを借りた場合、従たる債務者(たとえば妻)名義の生命保険に加入しておくという方法がありますので、気になる人は検討してみるとよいでしょう。

住宅ローン控除の扱いは?

次に、住宅ローン控除(正式名称は、「住宅借入金等特別控除」)ですが、これは、一定の基準を満たす住宅ローンを一定の期間内に借りた場合、年末時点のローン残高に対して一定割合の税金(所得税)が控除されるというものです(対象となる住宅やローンの借り入れ時期によって条件は異なります)。

たとえば、要件を満たす住宅を平成27年1月に住宅ローンを借りて購入し、平成27年12月末時点でローン残高が2500万円であった場合、20万円が税額で控除(その年の所得税の支払いが20万円に満たない場合は、還付)されるというものです(この例の時期だと、年末ローン残高の1パーセント、かつ控除額は最大20万円)。

この住宅ローン控除の適用も、収入合算の従たる債務者の形式で異なってきます。上記の「ペアローン」と「連帯債務者」の場合は、上の例でいえば、妻も自分の所得税に対して適用できますが、「連帯保証人」となる場合には、妻に収入があって、合算で借りていても住宅ローン控除は使うことができません。

「持分」にも注意が必要

最後に、収入合算では住宅の「持ち分」((区分)所有権の持ち分の割合)についても注意が必要です。

夫婦以外の収入合算であれば必ず、夫婦であっても後々のことを考えると、きちんと持ち分を適正に振り分けておく必要があります。簡単にいってしまえば、「所有権の割合を、お金を出した割合に合わせて登記する」ということです。

たとえば、4000万円のマンションを夫が頭金500万円、妻が500万円、収入合算で3000万円を借りたとしましょう。夫の年収が500万円、妻の年収が300万円で収入全額の合算だった場合、夫のローン割合は1875万円、同じく妻が1125万円となり、頭金と合算して夫が2375万円、妻が1625万円を住宅購入費として出したことになります。

この場合、夫の持ち分は59.375%、妻の持ち分は40.625%となり、ざっと夫:妻=6:4の持ち分となります(厳密に細かい割合で登記することもできます)。

一般的に夫婦間のお金の拠出については、同一家計で、妻名義の口座に貯蓄を集中させているなど実態の事情も考慮して、税務署も比較的ゆるく見ていますが、夫婦でも行き過ぎた持ち分操作や夫婦以外の収入合算で持ち分をきちんとしない場合は、贈与税の対象となり、思わぬ税金が発生することがありますので、注意が必要となります。

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この記事を書いた人

不動産サポートオフィス 代表コンサルタント

公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、AFP、ファイナンシャルプランニング技能士2級。 神奈川県住宅供給公社にて、分譲マンション、一戸建・宅地分譲、高齢者住宅等の新規不動産販売部門に従事した後、同社賃貸部門にて賃貸物件の募集、管理業務に従事する。その後、不動産投資専門の仲介会社を経て、不動産コンサルタントとして独立。 現在は「不動産サポートオフィス」の代表コンサルタントとして、自宅の購入、不動産投資、住み替え、融資など多岐にわたる不動産に関する相談・コンサルティングを行なう。その他、不動産業者向けの研修や各種不動産セミナー講師、書籍、コラム等の執筆にも取り組んでいる。 主な著書に、「貯蓄のチカラ~30歳からのおカネの教科書」(朝日新聞出版)、「失敗ゼロにする不動産投資でお金を増やす!」「賃貸生活A to Z」(アスペクト)がある。

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