住宅を買うときの失敗しない『予算』の決め方は?(2)
大橋高志
2016/01/31
借りられる額と返せる額
住宅ローンをどのくらい利用するかを考えるときには、2つの視点があります。『いくら借りられるのか』と『いくら返せるのか』です。
自営業者などで、実際の所得よりも申告所得を抑えている場合は、前者の『いくら借りられるか』がポイントになることが多いです。自営業者の場合は確定申告書などで、3年分の所得をみて安定性や成長性など考慮して融資額が決まります。もちろん、事業開始からの年数や取引先などさまざまな要件が問われますが、そのあたりは金融機関によりばらつきがあります。
『いくらぐらいの借り入れができるか』は、不動産販売会社などを通じて事前打診しておくと目安ができるので、家さがしにも身が入ることでしょう。
サラリーマンの場合は一年分の所得を確認できる源泉徴収票が1年分あれば金融機関でなくとも簡単に審査できますし、WEB上の簡単なシミュレーターでもおおよその借り入れ可能額は把握できます。
ただし、サラリーマンであっても金融機関によって審査基準などの各種条件が変わってくるので、複数あたってみるとよいでしょう。自分でいろいろなところへ行くのが面倒であれば、不動産販売会社に相談するのが近道です。
いくらだったら無理なく返せるか
次はもっとも大切なところである、『いくら返せるのか』です。それも、とにかく返せればいいという話ではなく、『いくらだったら無理なく返せるのか』を考えることです。
こればかりは、家計の事情がそれぞれ違うので、必ずしもこれが正解ではない前提で申し上げると、年収の25パーセント程度の返済比率に留めておくのがベターではないでしょうか。
ここで『返済比率』という言葉を覚えておくと、考え方の目安のひとつになると思います。
年間支払額(毎月支払額×12か月・ボーナス払いも加算)÷年収(税込)= 返済比率
現在のあなたの家賃などを返済比率に換算すると何パーセントになるでしょうか? たとえば、家賃が8万円で年収が450万円ならば、(8万円×12か月)÷450万円=21.3パーセントになります。
この計算で25パーセントを超えるようでしたら、ファイナンシャルプランナーなどに相談をしてライフシュミレーションを行ってから家さがしをすることをおすすめします。
安易な『夫婦の年収合算』は避ける
もちろん本人の年齢や扶養家族の人数、配偶者に収入によって違いはありますが、住宅ローンは長期間に渡ります。ライフステージは変化をしていきますので、現在の状況だけで判断するのではなく、長期ビジョンで考えましょう。
たとえば、安易な『夫婦の年収合算』はしないこと。本当に夫婦共働きを続けますか? 35年ローンですよ? 実際には繰り上げ返済などで期間を短くしていくにしても、女性は子育てや家事の負担が男性よりも多くなる傾向は強いので、いまの収入が今後もずっと続く前提でローンを組んでしまうと、後々の負担は大きくなります。
確かに空前の低金利時代です。金融機関も貸出先を求めて住宅ローンに力を入れていますので、多くの資金を借りやすい時代でもあります。
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動産販売会社はローンを組むお手伝いを一生懸命してくれますが、たくさん借りたら、たくさん返すのはご自身です。それでも住みたいところに住めるのであればよいと思いますが、根拠のある返済プランを立ててからローンを組みましょう。
この記事を書いた人
住まいコンサルタント
宅地建物取引士、ファイナンシャルプランニング技能士、木造ハウジングコーディネーター。 1970年生まれ。大手不動産建設会社を経て、首都圏の不動産販売・分譲会社へ転身。15年超のキャリアで約500件の引渡し実績を持つ。新築分譲の他にも中古住宅の再生販売、仲介業務など取引事例は多種多様。 不動産取引はもちろん、建築・土木・住宅ローン・保険・不動産税制などに明るい。 現在は第一線を退き、業界経験を活かした「完全な消費者目線」の住まいのアドバイザーとして活躍中。