中古マンションは大規模修繕工事への備えをチェック
菅 正秀
2016/01/04
用途地域のチェック
日本の都市計画では、土地の利用目的ごとに12種類の地域に分けています。これが「用途地域」で、大きく住居系・商業系・工業系があり、建てることのできる建築物に制限が設けられています。「住居専用地域」では一戸建てやマンション、学校、病院、小規模な店舗など以外は建てられません。閑静で良好な環境での暮らしを望むのであれば、物件探しをする際に住居専用地域であるかを確認しましょう。
反対に「商業地域」や「準工業地域」は、一戸建てやマンションのほかに各種商店やボウリング場などの遊技施設や劇場、工場などの建物の建設が許されています。それゆえに、商業・準工業地域に住むと環境的にリスクがともなう場合があるのです。
あまり静かすぎても寂しい、ある程度のにぎわいや利便性、遊ぶ場所が住まいの近くにあるといいと考えるのなら、商業・準工業地域にあるマンションに住むのもひとつの選択です。将来、もし売却することになった場合、商業地域のマンションなら、駅への近さや買い物のしやすさなどをウリにできるでしょう。
ただし、これらの地域は住宅専用地域よりも街の環境や周辺の建物に影響されやすい傾向にあります。隣の駐車場や空き地が工場になり大気汚染や騒音に悩まされたり、新しくできたお店の看板や来店客の声が気になったりすることも考えられるのです。長く住むのであれば、住宅専用地域に建つマンションのほうが安心といえるでしょう。
区画整理事業などの計画の有無
用途地域のほかにマンションの将来性を予想する手段として、都市計画道路や、まとまった土地の有無を確認することも必要です。一般に計画道路は長期的な展望で計画されることが多く、実際の工事が何十年も実現しないこともめずらしくありません。もともとコンクリートの建物は計画道路上には建てられないため、暫定的な建設が認められている木造一戸建てのように道路開通時に立ち退かされる危険性はありません。
しかし、近くに道路ができると交通量などの周辺環境は激変します。用途地域によっては、わい雑な商業空間に変化する可能性もあります。終の住処として考え、長く住むつもりであれば、このあたりも注意したほうがよいでしょう。
また、いくら購入時に眺めがよい高層マンションでも、将来どう変化するかはわかりません。実際、ある高層マンションのすぐ南側に新しく高層マンションが建ったため、日照がほとんどなくなって訴訟にまで発展した事件がありました。
最近はこのように極端な日照問題は少なくなりましたが、高層マンション最大のウリである「眺望」については、同じことが起こり得ます。「高層階からのいい眺め」は購入価格にも反映されます。それが、後からできた高層マンションの殺風景な眺めにとって代わられないために、窓側に広い空き地や駐車場がないか、必ず確認しましょう。居室からの眺望は高層マンションの資産でもあります。
管理費と大規模修繕に対する備えをチェック
実際のマンション管理を行なう主体は、各マンションによって違います。比較的小さなマンションでは、管理組合と直結したかたちで住民による自主管理、中規模以上になると外部の管理会社に委託することが多くなります。どちらの方法がいい悪いといったことは一概にいえません。住民が負担している管理費用に見合った、有効な管理がなされていることが重要です。
中古マンションの管理状態をチェックするにはいくつかポイントがあります。まず郵便受けやエントランスの清掃状態、照明が切れたままになっていないか、ゴミ置き場や駐輪場が荒れていないかといったことは、そのマンションの管理状態が直接見える部分なので、要チェックです。
管理費についても確認しましょう。管理費が高すぎるというマンションでも、実際にコスト計算すればたいてい下がります。こうしたマンションは、主なマンション事業者であるデベロッパーが竣工後にそのまま管理の委託を受けて行っていたため、住民のチェックが及ばなかったことが原因です。昨今は住民がより積極的に管理に関わることで、金額の適正化が行なわれるようになってきています。
かといって、安い管理費でゴミが放置されてもしかたない程度の金額しか計上していないマンションは注意したいものです。建物や空間を快適に保ち、気持ちよく暮らすための適正な管理費が定められているマンションを選びましょう。
また、マンションの管理組合は十数年の単位でやってくる大規模修繕に備え大規模修繕計画を立てています。閲覧して前回の修繕内容や、次回の修繕時期について確認しておきましょう。外壁塗装や揚水ポンプなどの状態もわかり、管理組合の管理力も見えてきます。入居後に大きなリフォームを考えている場合には、通常は専有空間より共有空間が優先されるので、同時期に工事を行うと専有空間側が一時停止を求められることもあります。
管理組合では大規模修繕に向けて毎月積立を行なっていますが、この月額や残高も確認しましょう。販売会社が新築でマンションを売り出す際、修繕時に費用が不足していると一時金が徴収されることになり、中古の購入者が予定外の出費に泣かされるはめになります。大規模修繕の予定などは、仲介会社が行う重要事項説明の際に、添付資料として渡される「重要事項調査報告書」に記載されています。
この記事を書いた人
株式会社フェリーズディア 取締役チーフコンサルタント
宅地建物取引士、マンション管理士、住宅ローンアドバイザー、福祉住環境コーディネーター。 1958年、大阪府大阪市生まれ。創価大学法学部卒業。大学卒業後、弁護士事務所に勤務、宅地建物取引士資格取得を契機に大手不動産会社に転じる。法律知識を活用し中古住宅、中古マンションの仲介営業を担当。 その後、顧客と一緒にモノづくりをするために、地域中小建設会社に移り、注文住宅・賃貸マンションの受注営業を担当。大手建設会社との競合が激しい中、操業以後に流入してきた近隣住民のクレームにお悩みの経営者さんに、不動産会社時代の人脈を使い工場の移転先を斡旋した上で、その跡地に93戸の賃貸マンション建設の受注をするなど、15年間で約32億円の受注する実績をあげる。現在は、建築にも明るい不動産コンサルタントとして、不動産会社のエスクロウ業務(契約管理)・新人社員指導等を行なっている。 一生に一度の買い物ともいえる住宅の購入をアシストできる人材を育成し、業界の健全な発展に貢献すべく活動中。