マンションオプションで買っていいもの、ダメなもの。 価格の裏側まで元営業マンが全部教えます!
市川 貴士
2017/06/20
イメージ/©︎2mmedia・123RF
そもそもマンションオプションとは?
新築マンションを購入する際に、頭を悩ませることになるもののひとつに「オプション」があります。オプションとは、たとえば造り付けの飾り棚や食器棚、食器洗浄機といったインテリアや設備を、追加料金を払って購入するものです。
私は、毎月、海外不動産の視察に行っていますが、最近は、マンションに家具・家電がついて、すべて物件価格に含まれて販売されている国も増えてきているようです。
一方、日本では、私がマンションデベロッパーに入社した30年前から変わらず、オプションという仕組みが取り入れられており、家具・家電は販売価格に含まれず、別に購入しなければなりません。
マンションを契約した後に、「オプション販売会」の案内やカタログが送られてくるので、販売会に参加したり、カタログを見たりして検討することができます。オプションで購入、発注すべきか、それとも販売店や工事会社を探してオーダーするべきか迷う人は少なくないことでしょう。
工事の有料オプションは得か損か
オプションには大きく分けて、設計や仕様の変更ができる工事のオプションと、家具・家電・カーテンといったインテリア関係のオプションの2種類があります。
まず、工事のオプションについてご説明しましょう。これは、まだ部屋が完成する前、工事の早い時期に購入者の希望を聞いて、部屋の設計や仕様を変更するものです。
オプション工事の料金は、グレードアップになる変更の場合は有料になりますが、グレードアップにならない場合は無料で対応してもらえます。
結論から申し上げてしまうと、工事の有料オプションは割高です。得か損かと言えば、決して得ではありません。グレードアップにならない無料工事ならいいのですが、グレードアップになる工事については、私はおすすめしません。
ただし、たとえば間取りの変更を伴う工事などは、部屋が完成した後に改めて工事をするとなると、さらに割高になってしまいます。そのため、費用を負担してもそうした工事をしたいという場合には、オプションを発注することが賢明と言えるでしょう。
なぜオプション工事は割高になるのか?
オプション工事は、基本的にマンション建設を請け負っているゼネコン(建設会社)が対応しますが、オプション工事が割高になる理由は大きくふたつあります。
ひとつは、標準仕様から逸脱すると価格が跳ね上がるためです。
マンション工事では、大量の商品発注や一律管理によって、原価を大きく下げています。
リフォーム会社の見積りや広告を見ると、システムキッチンやユニットバスの価格が100万円程度となっているものを目にします。一方、マンションの標準仕様では、通常の価格の5分の1程度で仕入れています。壁紙クロスもしかりです。
どの業界でも共通のことと思われますが、「大量発注=安い仕入れ=安い価格での販売も可能」という構図はマンション業界も同じです。
原価が下がる分、ゼネコンがまるまる利益を得ているわけではなく、マンション購入者も価格的なメリットを享受しています。そのため、標準仕様から外れてしまうと、一気に価格が跳ね上がってしまうのです。
工事の有料オプションは得か損か
もうひとつの理由は、「諸経費」が上乗せされることです。「諸経費」とはゼネコンの人件費と考えていただいて問題ありません。
マンションの場合、ゼネコンの工事見積もりでは、「原価」に必ず「諸経費」が上乗せされます。ここで言う「原価」とは、下請けの工事会社に支払う原価ではなく、ゼネコンが事業主(デベロッパー)に「原価」として提示する金額のことで、すでにゼネコンの利益が含まれています。そして、この「原価」に、さらに「諸経費」と「現場監理料」が乗せられるのです。
ゼネコンは、着工前に事業主であるデベロッパーと建築費交渉をして、工事の請負契約を締結します。請負契約を結んだ後は、設計変更や不測の事態がない限り、建築費は変わりません。また、多少の変更があったとしても、物件や会社ごとに標準仕様書があり、その範囲内での変更は時期にもよりますが、基本的に無料です。
しかし、有料の工事には必ず「原価」に「諸経費」が上乗せされます。グレードアップのオプション工事は、標準仕様との差額が原価になりますが、そこにも「諸経費」がまるまる上乗せされるため、割高になるのです。
家具・家電・カーテンなどのオプションはどうなのか?
マンションを購入するメリットは、「注文住宅のような面倒がない」「グレードの割には価格が安い(住戸の内装部分)」ことです。
安さの理由は、先ほどもお話ししたように商品の大量発注です。そのため、価格を安くすませるには「手を入れないこと」、つまり、オプションは使わずに標準仕様のまま購入すること。これが、価格面では一番お得です。
では、家具や家電、カーテンなどのオプションはどうでしょう。これらは生活していく上で必要なものなのですし、マイホーム購入に合わせて買い換えたいという人もいらっしゃるでしょう。
ですが、ほかでも買えるものは、ほかで買ったほうが間違いなく安いです。オプション購入することに価格的なメリットはないと思っていただいてかまいません。値引き表示があるものであっても同じです。
その意味では、造り付けの食器棚など、造作物以外は別に購入したほうがお得と言えるでしょう。
オプションとしてのメリットは、「手間がかからないこと」に尽きるでしょう。商品は「カタログ」にまとめられているので、自分で探す必要はありませんし、「内覧会」に行けば、その場で図面を見ながら専門業者に相談することができます。
また、モデルルームと同じ商品がほしい場合は、オプションで同じものが買えるか確認することもできます。
家具や家電のオプションは、価格は割高になってもいいから手間を省きたいという人にはおすすめできます。ですが私は、せっかく家を買うなら、家具選びも少しは時間をかけて楽しんでほしいと思います。
また、以前はオプションで購入したものは、鍵の引き渡し前までに部屋に設置してもらえたのもメリットのひとつでした。
ですが、最近では、引き渡し前の手直し工事とオプション設置工事の責任問題(たとえば、オプション設置工事による不具合が生じた場合、手直し工事を誰の責任で行なうのかなど)で、鍵の引渡し後のオプション設置が増えたので、そのメリットも薄れたかと思います。
「食器棚」「食洗器」はオプション購入がオススメ
それでは、ここで個別のオプションについて、オススメできるものかどうか検討してみましょう。
オプションのオススメ度と理由
オプションで購入したほうがメリットもあるのは「食器棚」「食洗器」などの商品です。
「カーテン」
窓のサイズが特殊でなければ、量販店で安く買えます。いまでは量販店であっても、カーテンの種類・サイズが豊富に揃っているのが当たり前になりました。サイズさえしっかりわかっていれば、自分で選んでもコーディネートしてもらえます。
ただ、カーテンのサイズの測り方にはちょっとしたコツが必要です。不安があるならオプション業者にお願いしたほうが無難です。また、特殊なカーテンはオプション対応のほうが楽でしょう。
「エアコン」
オプションで買う場合は、ドレーン管カバーがついていることが多く、見た目が綺麗です。量販店でもカバーは購入できますが、価格は高めです。
とはいえ、時期にもよりますが量販店のほうが、本体を含めて安く購入できます。
「照明器具」
特にこだわりがなく、シンプルな普通の照明器具を購入するなら量販店が安いと言えます。
ただ、照明器具のデザインや種類にこだわりたい場合は、ご自身で納得のいくコーディネートができるかどうか微妙なところでしょう。少なくともご自身で選ぶと、ショールームに足を運ぶなど、それなりの手間がかかります。
照明にこだわりたいという人は、オプションでインテリアコーディネーターと相談して選ぶのもいいでしょう。
「食洗器」
オプションで購入すると、ビルトインで「面材合わせ」をしてもらえるというメリットがあります。食洗器はビルトインのほうが置場も取らず、すっきりしますし、後から工事を依頼してキッチンの面材が、食洗器部分だけ違ってしまうのもよくないでしょう。
余談ですが、以前は業務用食洗器メーカー「ホシザキの家庭用食洗器」が人気でしたが、現在は生産しておりません。これは通常30分かかる洗いを6分程度で終わらせる商品で、非常に良いものだったのでオススメできないのが残念です。
食洗機(奥)イメージ/©︎hamsterman・123RF
「食器棚」
食器棚は、オプションで面材合わせの造作家具を注文するととても綺麗に収まります。価格はそれなりに高いため、家具屋さんで食器棚を購入すれば半額以下でも購入できます。
しかし、自分で購入する場合、コーディネートという点ではきわめてむずかしいです。通常、マンションのキッチンは狭いので、サイズやデザインがぴったりのものを探すのは大変でしょう。
総合的に考えると価格は高いですが、オプションでの購入をオススメしたいところです。
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この記事を書いた人
株式会社国際不動産エージェント 代表取締役社長
宅地建物取引士。公認不動産コンサルティングマスター。 1961年生まれ。東京外国語大学中国語学科卒業。 84年、株式会社リクルート入社後、株式会社リクルートコスモス(現コスモスイニシア)へ転籍。25年間の在籍中、不動産営業・マーケティング・商品企画に従事。その後、海外不動産の販売に従事し独立。世界各国の不動産の視察、販売を行なうほか、セミナー講師としても活躍。 30年のデベロッパー経験を活かし、独自の不動産マーケティング理論を組み合わせた分析を得意とする。14ヵ国38都市の不動産を視察し、現在も毎月海外視察を継続中。わかりやすい解説と不動産マーケットを知り尽くした深い視点からの語りが好評。