信頼できる不動産営業マンを一発で見抜く、たったひとつの質問
市川 貴士
2016/12/06
信頼できる営業マンかどうかを見抜くには?
これまで30年以上、不動産業界に身を置き、現在はIPC(独立系国際不動産コンサルタント)として仕事をしている私ですが(国際不動産とは、日本を含む海外の不動産のことをいいます)、新築マンションの販売を皮切りに、長年、数多くのお客さまと現場で接しつつ、営業責任者としても多くの営業マンを指導してきました。
そんな私が考える、家を探している人にとっての「優秀な営業マン」とは、一言でいえば「信頼できる営業マン」です。売上げを上げることは大切ですが、そこにばかり意識が向いてしまうと、少々無理があってもお客さんに売り込んでしまうということにもなりかねません。
ですから、売上を上げることと同じくらい、お客さんの立場に立って額に汗かくことを大切にしている営業マンこそ信頼できるといえるでしょう。
では、営業マンが信頼できるかどうか、どうやって見抜けばいいのでしょうか。それには、あるひとつのことを質問すればいいのです。目の前の営業マンにこう聞いてみてください。
「このあたりで、いちばん安いスーパーはどこですか?」
その答え次第で、その営業マンがどこまでお客さんの立場に立っているのかがわかると言っても過言ではないでしょう。
こんな営業マンには期待できない
どういうことなのか、順を追って説明していきたいと思いますが、まずは、失敗を避けるという意味で、家探しを頼むのは遠慮したほうがいい営業マンの特徴をお伝えしておきましょう。
<特徴1> 見ればわかることばかりを説明してしまう
私の最初のキャリアは、新築マンション販売でした。営業マンになって間もない頃から、自分の経験不足を補うために、他社のモデルルーム見学にもたくさん行きましたし、お客のふりをしてモデルルームに潜入したこともありました。 そこでまず思ったことは、 「営業マンはモデルルームの内部の説明ばかりする」ということでした。「そんなことは見ればわかる」ということばかり話す営業マンが実に多いのです。
たとえば、パンフレットやチラシを見せながら仕様設備の説明を熱心に行なっている姿を見ると、一見、お客さんのために真剣に対応しているように思えます。ですが、住宅販売の仕事は物件の説明をして終わりではありません。
立地のこと、周辺環境のこと、生活利便性のことや物件の資産価値のことを、お客さんが安心するようにお伝えできなければなりません。また、資金計画のことや、お客さんの個別事情についても話を聞いて、お客さんに安心して相談してもらえるようにならなければなりません。
しかし、残念ながら、それができる営業マンは決して多くないというのが、私の実感です。
<特徴2> お客さんに振り回されてしまう
ふたつ目の特徴は、お客さんに振り回されてしまうことです。家は、生涯で最大の買い物ですから、いろいろ目移りしてしまったり、あれもこれもと希望が膨らんでしまったりするのは当然のことです。
ですから、商談をする度に条件や要望が変わってしまう人も多いのですが、ずるずるとお客さんの話に振り回されてしまうような営業マンはやはりおすすめできません。
これもまた、お客さんの要望を可能な限り聞いて、その希望を叶えようとしているように思えますが、厳しい言い方をしてしまえば、お客さんの本当の希望を理解できていないということになるでしょう。
お客さんにとって優秀な営業マンの条件とは
では、信頼できる営業マンとはどんな人なのでしょうか。その条件は大きく3つあるといえるでしょう。
<条件1>お客さん自身も気づいていなかった希望を聞き出せる
ひとつ目の条件は、先ほどの話ともつながりますが、お客さんの本当の希望を聞き出せることです。自分が売りたい物件をアピールするだけの営業マンから家を買いたいと思う人はいないことでしょう。
また、希望を聞くといっても、家選びには家族それぞれの希望があります。たとえば夫婦ふたり家族の場合、そこにはふたり分のニーズがあるということです。そこで、家族それぞれの希望を整理して、折衷案を出せるかどうかも大切なポイントです。
予算のことはもちろん、「広いリビングがほしい」「キッチンは明るい陽射しが入るほうがいい」「大きなお風呂がほしい」といった、家族それぞれの希望をすべてかなえる物件というものは存在しません。そのため、家族それぞれがある意味で妥協し、納得できる折衷案を提案できる営業マンが優秀な営業マンだといえるでしょう。
<条件2>豊かな想像力をもっている
ふたつ目の条件は、豊かな想像力をもっていることといえるでしょう。少し意外かもしれませんが、物件の説明をするときのことを想像してみてください。
新築マンションの販売所には立派な模型がありますが、中古住宅を販売する際にはそのようなものはありません。平面の図面を見せて、お客さんが立体的にその物件を想像できるような説明ができるのは優秀な営業マンといえるでしょう。
物件の周辺環境をどれだけ熟知しているか?
<条件3>物件の周辺環境について熟知している
実はこれが、信頼できる営業マンかどうかを判断するための最も重要な条件です。最初にお話しした「たったひとつの質問」は、この3つ目の条件を満たしているかどうかを判断するためのものなのです。
これは私の考えではありますが、物件の周辺環境をどれだけ熟知しているかということは、その営業マンがどこまでお客さんの立場や気持ちになって行動することができるかをあらわしているのです。
たとえば、自分が販売する物件の最寄駅から朝の通勤電車に乗ってみる。近くのスーパーに買い物に行ってみる。保育園や小学校までの道のりを、朝や夕方の登下校の時間に自分の足で歩いてみる。夜になると周辺の環境は昼間とどう違うのかを自分の目で確かめてみる。
そういった努力ができる営業マンが、お客さんにとっての優秀な営業マンといえるのではないでしょうか。
私自身、そういった努力を続けていましたし、若い営業マンたちにもそのように指導してきました。しかし、残念ながら、このようにお客さんの立場になって考えることのできる営業マンというのは、そう多くないというのが実情です。
たとえば新築マンションの販売所にいる営業マンのなかで、そこまでして物件の周辺環境を把握している営業マンは全体の1割もいないかもしれません。
そこには、営業マンたちは実際にそこに住んでいるわけではなく、遠くからその販売所に通ってきているということ、また、優秀な営業マンは発売のタイミングに合わせてどんどん新規の販売所に回されてしまうという不動産会社の事情もあります。
ですから、みなさんが家探しをするときには、物件そのものについて聞くだけでなく、最寄り駅からの通勤電車の様子や、近くのスーパーの品揃えなどについて営業マンに質問してみてください。その答えから、その営業マンがどこまでお客さんの身になって仕事をしているかがわかります。
最後は人間性を信頼できるかに尽きる
私が不動産業界に入ったバブル前の時代であれば、結果的に不動産の価格が上がったこともあり、欠陥住宅さえ買わなければ、どんな営業マンから家を購入しても問題はありませんでした。
ですが、そのような時代は終わってしまいました。
これからは、物件によってその資産価値に大きく差がついていくことでしょう。
不動産という一生に一度の買い物をするのですから、自分の目で見て、わからないことを聞いたり調べたりすることが大切です。そして、そのサポートをするのが営業マンなのです。
お客さんにとって優秀な営業マンとは、最終的には、お客さんのためにどこまで額に汗をかいてくれるのか、その人間性を信頼できるかというところに尽きると私は考えています。特に、不動産のような高額な買い物をする上では、何よりも大切なことではないでしょうか。
家探しの際には、ここでご紹介したような視点から、信頼できる営業マンを探してみてください。
(参考記事)
物件だけでなく不動産仲介会社が信頼できるかもチェックしよう
不動産会社を訪問したときはここで信頼度をチェックする
この記事を書いた人
株式会社国際不動産エージェント 代表取締役社長
宅地建物取引士。公認不動産コンサルティングマスター。 1961年生まれ。東京外国語大学中国語学科卒業。 84年、株式会社リクルート入社後、株式会社リクルートコスモス(現コスモスイニシア)へ転籍。25年間の在籍中、不動産営業・マーケティング・商品企画に従事。その後、海外不動産の販売に従事し独立。世界各国の不動産の視察、販売を行なうほか、セミナー講師としても活躍。 30年のデベロッパー経験を活かし、独自の不動産マーケティング理論を組み合わせた分析を得意とする。14ヵ国38都市の不動産を視察し、現在も毎月海外視察を継続中。わかりやすい解説と不動産マーケットを知り尽くした深い視点からの語りが好評。