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業界の悪しきカルチャーを暴く(9)

本当は恐ろしいリノベーション物件の裏側

大友健右大友健右

2016/04/18

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リノベーション物件は本当に人気なのか?

「リノベーション」という言葉が最近、すっかり市場に定着してきました。

定義はあいまいですが、古くなった建物を修繕する「リフォーム」より一段上の概念ととらえられているケースが多いようです。つまり、リフォームよりも規模が大きく、デザインなどもいまのライフスタイルに合致しているという意味合いがそこに含まれています。

私は考え方としては、素晴らしい動きだと思います。20年、30年と月日が経つうちに土地値に近づいていき、スクラップ&ビルドを繰り返している日本の住まいは、どう見てもおかしいからです。

では、昨今のリノベーション物件(以下リノベ物件)の流行は、その理念が受け入れられている証拠だといえるでしょうか? 残念ながら、私にはそう思えません。もっといえば、消費者に評価されている結果だとも私は思っていないのです。

リノベ物件はどんな物件?

そもそもリノベ物件とは、どんな物件なのか。ここでよく考えてみましょう。

さまざまなケースがありますが、個人の物件を不動産会社が買い叩き、リノベーションした後に利益を乗せて再販売する物件となります。

「まわし物件」として利用された中古物件の末路』でご紹介したようなやり方で不当に値を下げさせられた中古物件が、不動産会社に買い取られてリノベ物件に生まれ変わるのです。

そのため、リノベ物件は「業者が所有する物件」となるのです。世に出回っているリノベ物件の大半は、このケースです。

不動産会社の都合でつくられたリノベーションブーム
したがって、リノベ物件を売ると、販売した不動産会社には手数料が入ります。販売した不動産会社は買い主からも手数料をもらえますから、両手取引となって効率よく利益を上げることができます。

一方、リノベーションではない、普通の中古物件とこれを比べてみましょう。この場合、物件の販売を担当する元付不動産会社と、お客さんを呼んでくる客付不動産会社が別の場合が多くなりますから、手数料は売り主か買い主のどちらかしかもらえないことになります。両手取引にならず、片手取引になってしまうのです。

リノベ物件は不動産の販売会社にとって儲けやすい物件であるのに対し、普通の中古物件は儲けが薄い物件ということになるわけです。どちらを熱心に売るかといったら、前者であることは明らかです。

つまり、昨今のリノベーションブームは、こうした不動産会社の都合によってつくられた流行だと私は考えているのです。

普通の中古物件はいまも昔も売れにくい

私がそう考える根拠は、「普通の中古物件は売れにくい」という状況がいまも昔もずっと続いているからです。もし、不動産会社がそうした物件を熱心にお客さんにすすめている状況があるなら、そういうことにはならないはずです。

簡単なリフォームをしただけの中古住宅は、リノベ物件と比べてハンデを背負わされています。したがって、不動産のプロの私の目から見てもかなり割安な優良物件なのに、売れ残っているというケースをよく目にします。

そういう物件の末路は、限りなく土地値に近い値段で不動産会社に買い取られ、スクラップ&ビルド方式で新築に生まれ変わっていくのです。

要するに、リノベーションの理念は立派だけれど、それに反する行為が同時に行なわれているのです。不動産業界が本気でその理念を実現しようとしているかと問われたら、首をタテに振るわけにはいかないでしょう。

せめて消費者のみなさんは、安易なリノベーションブームに乗せられることなく、物件の本当の価値に目を向けるようにしてください。

今回の結論
●そもそもリノベ物件は、「買い叩かれた個人売り主」の犠牲のうえになりたっている。
●リノベ物件は、消費者に支持されて流行っているわけではない。
●リノベ物件が流行ったのは、販売会社が熱心に売ろうとするから。

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この記事を書いた人

株式会社ウチコミ 代表取締役 株式会社総研ホールディングス 代表取締役 株式会社プロタイムズ総合研究所 代表取締役 1972年生まれ。大手マンション会社で営業手法のノウハウを学んだのち、大手不動産建設会社に転職。東京エリアにおける統括部門長として多くの不動産関連会社と取引、不動産流通のオモテとウラを深く知る。 現在、株式会社プロタイムズ総合研究所 代表取締役として、住宅リフォームを中心に事業を展開。また、株式会社ウチコミ 代表取締役として、賃貸情報サイト「ウチコミ!」を運営。入居の際の初期費用を削減できることから消費者の支持を集める。テレビ・新聞・雑誌などメディア出演も多数。

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