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中古マンションの賢いチェック方法(1)

中古マンションの安全性をチェックするには?

大橋高志大橋高志

2016/01/04

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築年数による安全性の違い

 誰しも大きな揺れにビクともしない住まいを手に入れたいと思うものでしょう。特に中古マンションの購入を検討するとき、何より気になるのが安全性です。東日本大震災後、それまで専門的な領域と思われていた建物の構造的な強さについて関心を持つ人が増えています。

 建物の強さを量る基準になるのは、建築基準法に定められた耐震基準(強い揺れに対してどれだけの強さをもつか)です。現行の基準は1981年に施行された新耐震基準(新耐震)で、震度6強〜7程度の地震に耐えられる強さが求められています。一般に、この新耐震をクリアした建物は、それ以前のものより耐久性・安全性が高いとされています。

 しかし、新耐震以前に竣工した物件であっても、しっかりした強度のある耐久性の高いマンションは少なくありません。反対に新耐震後の物件でも、建設技術が劣っていたり、無理な工期をこなすために施工が粗雑だったりと、強度が不足しているものもあり、一概に判断することはできません。

 なお新耐震は1981年に施行されましたが、マンションが完成するまでには1年半程度の期間が必要とされます。そのため、81年当時に竣工した建物自体はほとんどが新耐震以前の基準にしたがっています。確実に新耐震をクリアしているものを、と考えるなら、83年以降に竣工した物件を選ぶといいでしょう。

開放的なつくりはリスク増

 1995年に起きた阪神・淡路大震災では、多くのビルがさまざまな壊れ方や倒れ方をしましたが、いくつか典型的な壊れ方をした例があります。そのうちのひとつが1階部分の弱さによるものです。敷地に余裕のないマンションの場合、建物の1階部分を駐車場になっていることがあります。注目すべきはその構造で、車や人の出入りを考えて開放的に柱だけで支える空間(ピロティ)にすると、柱と壁に囲まれた住戸部分とくらべて確実に強度が低くなります。柱以外の壁をガラス張りにした店舗などのテナントがある場合も同様です。

 震災の後、ピロティ型の建物の多くが耐震補強工事を行なっています。その方法のひとつはピロティの柱と柱の間に壁をつくる方法です。強度は増しますが、壁の場所によっては使い勝手が悪くこともあります。鉄骨ブレース(四辺形に組まれた鉄骨補強材)を入れて採光を保ちながら補強する方法や、最近では柱上部を補強し、下部は車や人の出入りが従来どおりできるという技術もあります。

 また、一見わかりにくいのが、炭素繊維や溶接金網を柱に巻きつけて柱自体の強度を上げる工法です。ピロティ部分がそのままになっている建物はこの方法をとっている場合があるので確認してみましょう。

手抜き工事が現れやすい部位

 手抜き物件には、2つのタイプがあります。素人にはわかりにくいかもしれませんが、どのような方法があるのかを知っておきましょう。

 ひとつは、マンションの価格を下げるために、お金のかかるところを手抜きするタイプです。マンションの構造は、柱と壁が命です。そしてコストがもっともかかるのもこの部分なのです。コストを削減のために、細い鉄筋を使ったり、鉄筋の本数そのものを少なくしたりするケースがあります。2005~2007年、構造計算書偽造事件がいくつも発覚し、社会に波紋を投げかけたのは記憶に新しいところです。

 もうひとつは、納期に間に合わせるために面倒な部分を手抜きするタイプです。たとえば、窓周辺のコンクリートや壁にひび割れの目立つマンションです。大きな窓は壁に大きな開口部ができるため強度が低下します。本来ならば、窓枠などには補強材を入れて強化すべきなのですが、こうした細かい部分は後回しにされがちです。そして、結局は納期に間に合わず、補強されないまま引き渡されるということが起こるのです。

 またコンクリートを水で薄めるのも代表的な方法です。これはコンクリート代を安くするためではなく、薄めることでコンクリートが通常よりもサラサラな状態になって作業しやすいからです。

 手抜きのしかたには、その時々で流行があります。中古の場合、建設当時の世相などをあわせて確認することも大切になってくるでしょう。構造など目で見るだけでわかりにくい部分については、建物調査の専門業者に相談・依頼するという方法もあります。

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この記事を書いた人

住まいコンサルタント

宅地建物取引士、ファイナンシャルプランニング技能士、木造ハウジングコーディネーター。 1970年生まれ。大手不動産建設会社を経て、首都圏の不動産販売・分譲会社へ転身。15年超のキャリアで約500件の引渡し実績を持つ。新築分譲の他にも中古住宅の再生販売、仲介業務など取引事例は多種多様。 不動産取引はもちろん、建築・土木・住宅ローン・保険・不動産税制などに明るい。 現在は第一線を退き、業界経験を活かした「完全な消費者目線」の住まいのアドバイザーとして活躍中。

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