賃貸物件で殺人事件が起こったら~オーナーにできること~

殺人事件

今回は、タイトルが少し物騒ですが、なにもありえない話ではありません。近日、ニュースにもなり、同様の事件において判例も出ているのです。 そこで、オーナーは賃貸物件で殺人事件は起きてしまったら何をするべきで、何ができるのか、順を追ってお話いたします。

オーナーは、殺人事件があった部屋は、犯人退去後、当然賃料収入が入ってこないことになります。これでは、せっかくの投資物件が意味を果たしません。なので、次の入居者を募集することになります。このときにおいて、オーナーは入居希望者に対して「告知義務」というのを課されます。

告知義務とは、次の入居希望者には、この部屋で殺人事件がおきました。その事実を知った上で、入居しますか?と、殺人事件が起きた事実を告知しなければなりません。

なぜならば、殺人事件があった部屋は「心理的瑕疵」のある物件といわれ、通常の賃貸物件ではない、キズものにあたるのです。

オーナーは、入居者に商品の説明をしっかり行ったうえで、入居するか否かを判断してもらう必要があり、これが告知義務ということになります。 もちろん、その殺人事件というキズを気にしない入居者もいれば、どうしてもそのキズが気になるから他の物件を選ぶ入居者もいます。また、キズはあまり気にしないけれども、キズの分、安くしてほしいという入居者もおり、千差万別です。

ただ、殺人事件という人の生命に関する事象であること、生活に一番密接する住居という商品に関して、このキズは大きく入居希望者の感情に働きかけ、入居希望者は圧倒的に減ってしまいます。

そこで、オーナーは商品(賃貸物件)をキズものにした犯人に損害賠償等を請求することができます。 具体的な請求として、逸失利益・原状回復費用等の損害賠償や契約違反(善管注意義務違反)による損害賠償があります。内容としては、クリーニング代、本来キズがなければ通常入ってきたであろう賃料収入、キズがあることによる減額分の損害・入居者が全員転居して、取り壊しになった場合の取り壊し費用などがあります。

理解を深めるために、判例を紹介いたします。賃借人が賃貸マンションの室内で知り合いを殺害、その後賃借人も自殺した場合に、裁判所は、連帯保証人に対し、善管注意義務違反として、価格下落分等約180万円の賠償責任を認めた裁判例があります。

他方、賃借人が賃貸物件内で殺害され、飛散した血をクリーニングするために払った費用を保証人(賃借人の父)に請求した事案では、被害者が賃借人であり、血しぶきについて賃借人には故意・過失はないとして賠償責任を認めなかった裁判例もあります。

賃借人が犯人の立場である場合と、被害者の立場である場合で判断が分かれていますが、、いずれにしてもオーナーはクリーニング代等を犯人に対して、民法709条の不法行為にもとづく損害賠償として請求することはできると考えられます。

このように、一概に殺人事件が起きたとしても請求相手、損害額の計算などは、複雑な法的知識と裁判例等に支えられているので、万が一投資物件内で殺人事件が起きてしまったら、弁護士に相談してみるのがいいでしょう。

この記事のコラムニスト

森田雅也
森田雅也(弁護士)
弁護士法人法律事務所オーセンス 弁護士(東京弁護士会所属)。
上智大学法科大学院卒業後、中央総合法律事務所を経て、弁護士法人法律事務所オーセンスに入所。入所後は不動産法務部門の立ち上げに尽力し、不動産オーナーの弁護士として、主に様々な不動産問題を取り扱い、年間解決実績1,500件超と業界トップクラスの実績を残す。不動産業界の顧問も多く抱えている。一方、近年では不動産と関係が強い相続部門を立ち上げ、年1,000件を超える相続問題を取り扱い、多数のトラブル事案を解決。 不動産×相続という多面的法律視点で、相続・遺言セミナー、執筆活動なども多数行っている。
[著書]「自分でできる家賃滞納対策 自主管理型一般家主の賃貸経営バイブル」(中央経済社)。
[担当]契約書作成
森田雅也は個人間直接売買において契約書の作成を行います。