賃借人の迷惑行為について

退去

家主さんから、「入居者による迷惑行為に困っているのですが、やはり契約期間内だと出て行ってもらうことは難しいのでしょうか?」という相談が頻繁に寄せられます。

結論からすると「信頼関係を破壊した」と認められる特段の事情が認められる場合には、契約期間の満了前でも契約を解除し、出て行ってもらうことができます。

具体的にはどのような場合に入居者に出て行ってもらうことができるか、2つの事例を交えて説明していきます。

まず一つ目が、「ペットの飼育は禁止」という特約があるにも関わらず、入居者が犬や猫などのペットを飼っている、という事例です。判例では、入居者が猫を飼っていたが、部屋の中の掃除をほとんど行っていなかったために悪臭がその部屋のみならず周囲の部屋に及んでいた上、マンションの駐車場で野良猫に餌をあげていたためにマンションの周辺に野良猫が集まる状況となっていた事例で、賃貸人による建物明渡請求を認めたものがあります(東京地裁昭和58年1月28日判時1080号78頁)。

この判例では、①悪臭が入居者自身の物件だけでなく、他の物件にまで及んでいること、②マンション付近に野良猫が集まる状況を作っていること、が重視され、結果として「信頼関係が破壊された」と評価されたようです。

もう一つは、マンションの入居者が、隣の部屋の壁をたたいたり大声で怒鳴ったりするなどの隣人に対する嫌がらせ行為を続けた事例です。判例では、賃借人は騒音を立てたり、風紀を乱すなど近隣の迷惑となる一切の行為をしてはならないという特約のある賃貸借契約において、隣室からの騒音が日常生活上通常発生する騒音として我慢すべきものであったにも関わらず、隣人に対して何回も執拗に音がうるさいなどと文句を言い、壁をたたいたり大声で怒鳴ったりするなどの嫌がらせ行為(迷惑行為に耐えかねた隣人が自ら退去せざるを得なくなるほどのもの)を続けた事例で、「近隣の迷惑となる行為」があるとして賃貸人による建物明渡請求を認めたものがあります(東京地判平成10年5月12日判時1644号75頁)。

この判例では、近隣の住民が退去せざるを得なくなるほどの嫌がらせ行為があったことが重視され、「信頼関係が破壊された」と判断されたようです。

「信頼関係が破壊された」か否かは一般の方でも判断することが難しい問題です。もし、入居者による迷惑行為にお困りの大家さんは一度弁護士に相談されてはいかがでしょうか。

この記事のコラムニスト

森田雅也
森田雅也(弁護士)
弁護士法人法律事務所オーセンス 弁護士(東京弁護士会所属)。
上智大学法科大学院卒業後、中央総合法律事務所を経て、弁護士法人法律事務所オーセンスに入所。入所後は不動産法務部門の立ち上げに尽力し、不動産オーナーの弁護士として、主に様々な不動産問題を取り扱い、年間解決実績1,500件超と業界トップクラスの実績を残す。不動産業界の顧問も多く抱えている。一方、近年では不動産と関係が強い相続部門を立ち上げ、年1,000件を超える相続問題を取り扱い、多数のトラブル事案を解決。 不動産×相続という多面的法律視点で、相続・遺言セミナー、執筆活動なども多数行っている。
[著書]「自分でできる家賃滞納対策 自主管理型一般家主の賃貸経営バイブル」(中央経済社)。
[担当]契約書作成
森田雅也は個人間直接売買において契約書の作成を行います。