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時代が作り出したともいえる現代病?

「回避性愛着スタイル」の人との関係づくり――離婚を回避したエヴァンゲリオン好きの夫婦(2/2ページ)

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まずは相手の居場所を作ることからはじめる

回避性愛着スタイルの人のすべてに当てはまるわけではありませんが、この妻のように住まいに家庭的な温かみを嫌う人は少なくありません。

逆にモノを置かず徹底的に片づけるタイプの人もいますが、家庭的な雰囲気を嫌ったり、関心がなかったりという点では共通しているかも知れません。

また、回避性愛着スタイルの人は、とりわけ親族の付き合いや配偶者の友人との付き合いがおっくうで、そういった人に悪く思われていないか、いつまでも気にしてしまうところあります。

カウンセリングでは、夫に回避性愛着スタイルの特徴について話をすると、妻と合致する点が多いことに驚いたようです。その回避性愛着スタイルの典型な特徴は、以下のようになります。

1)人から非難や拒絶されることが恐怖のあまり、重要な対人接触や職業的活動をさける——営業や接客、電話応対が苦手、就職活動にも尻込みしがちです

2)相手から気に入られているという確認がなければ、人と関わりたくない——就職活動などでも、先方から「君に会いたいから」「一度事務所に来てみて」といわれると、やっと面接に行ける

3)恥をかいたり、嘲笑されることが、とてつもなくつらいために親しいなかでも遠慮がち——相手に好意があっても、自分から絶対に頼み事などを言い出せない

4)自分に自信がないため「劣っている」「長所なんて一つもない」と心底思っている

5)責任を背負いたくない——結婚や子どもを持つことの責任を大きくとらえて避けたがる

この夫婦のケースでは、このままでは離婚になる可能性があると思った夫は、2人の関係を回復する方法はなかとたずねます。

そこで次のような提案をしました。

・予算が許せば、周囲から見えないスペースに妻の仕事場を作ること

・そこは妻が落ち着くようなゴチャゴチャにした空間にして干渉しない

・その他の部屋のインテリアは、雑誌などを参考に、家庭的すぎず殺風景でもないホテルライクなイメージを目指して、お互いの好みを取り入れる

さらに回避性愛着スタイルは、行き当たりバッタリを嫌う傾向があるため、親族や夫の友人を会う頻度、つき合いの範囲を決めておき、可能であれば年間予定表などを作るといった対応策について話しました。

この夫婦では上記のような対応策をとりましたが、一般的な対策としては、次のようなものがあげられます。

1)口論や喧嘩をしないこと——口論や議論が大の苦手ですから、何かあったら、笑顔でやんわりお願いしましょう

2)行き当たりばったりに行動をしない——ちょっとした家族旅行でも、3か月以上前から計画を立てること。そして、それが楽しく過ごせたり、無難にこなせたなら、次の年も同じ頃に似たようなことを提案してみるとよい。「毎年**の頃に~をしている」という暮らしが大好きなのです

3)既成事実を積み重ねる——慣れたことを続けるのが好きなうえに、既成事実ができてしまうと、今度はそれを変えたくないというのが特徴です

また、責任からは本当逃げたいというのが本音ですから、結婚では、まずは通い婚から始めて一緒にいる時間を少しずつ増やす。子づくりでも、「これまでの延長」という意識を持たせてゴールインすることが良い関係づくりに欠かせません。

結果的にこの夫婦の場合は、提案した解決策によって、すぐには劇的に夫婦関係が変化したということはありませんでした。しかし、その半年後にお会いしたとき、夫はこう話をされました。

「これまで妻は外出して家に帰ってきても、『ただいま』と言ったことがなかったんです。だいたい『あっ居たの?』という感じでね。それが最近『た、ただいま』と言うのです。自分の家って思えるようになったってことかなって、ちょっと思っているんです。今はそれでいいかなって……」

エヴァンゲリオンの好きな方なら、お気づきかもしれません。

自分の居場所をみつけたれなかった主人公の碇シンジが、初めて自分から「ここにいたい」という意思を相手に伝えたときの言葉、それが——「た、だだいま」で、印象的なセリフとされていました。

一昔前なら、結婚後、半年の間に口論や喧嘩をするのは当たり前でしょう。しかし、時代が作り出したとも言えるこの現代病「回避型愛着スタイル」は、口論をし続けても何も解決しないどころか、ただ破綻に向かうだけなのです。

口論や喧嘩で互いが分かり合える関係となるのは、愛着という心の安全基地がベースあって、はじめて成り立つものなのです。夫婦や恋人といえども、このタイプの人ととは、そうした関係づくりが必要です。

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この記事を書いた人

公認心理師 博士(医学)

大手不動産会社で産業保健活動を行う一方、都内で親子や夫婦の関係改善のためのプライベートカウンセリングを実践している。また、最近は、Webカウンセリングも行い、関東甲信越や東北地方の人たちとのセッションにも力を入れている。

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