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2022年春 小池劇場「築地再開発編」幕開け

大手デベも虎視眈々 どうなる23ヘクタールの大型再開発の行方

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動き出す旧築地市場跡地再開発 撮影/内外不動産価値研究会+Kanausha Picks

大手デベが有利? 築地の大型再開発

東京・築地の旧築地市場跡地(23ヘクタール)の再開発の基本方針が2022年3月に東京都から発表される。この方針に沿って、いよいよ新年度の22年には、大手不動産会社、ゼネコン、設計会社、コンサルタント会社を対象に、再開発の事業案の提案募集(公募型プロポーザル方式)がはじまる。


旧築地市場跡地の再開発エリアの範囲

各社はそれぞれチームを組んで、提案の入札に臨むわけだが、最大でも数グループ程度の応募に限られる「少数精鋭」の提案が行われる方向だ。

再開発される面積は、20ヘクタール前後で、都の借地のまま、70年程度の超長期の長期定期借地権を使って開発される見込みだ。

これは、隣の港区の竹芝地区の広大な都有地で行われた「ステップアップ都市開発方式」とほぼ同じ。借地料の額よりも「どういう街づくりになるか?」というコンセプトが高い基準で採点されることになりそうだという。

とはいえ、オフィスやマンションなら大手デベロッパーの開発力・提案力は伯仲しているが、商用施設やスポーツ施設、医療や研究開発施設となると、三井不動産や三菱地所など超大手に一日の長があるのは、業界関係者であれば誰の目にも分かる。

東京都は、ホテルが国際会議場などMICE(企業などの会議場、研修旅行、国際機関などが行う国際会議展示会・見本市などのイベント会場を備えた施設)を盛り込むよう開発の在り方を議論した「築地地区まちづくり検討委員会」などを舞台に呼び掛けてきた。

結局お蔵入り? 「食の文化センター」

これまで地元の中央区の住民らは、築地市場の跡地という地域の特性、東隣に残る築地場外市場との関係から食にかかわる「食の文化センター」的なものを求めてきた。しかし、こうした施設が造られる見込みはなく、代わって、高さ200メートル超級のタワービルを含めた高層ビル(オフィス、住宅、ホテル)が複数建つ可能性が高い。

一方で再開発予定地の南側にある隅田川沿いにスーパー堤防と羽田空港を船のシャトル便や海上タクシーでつなぐ船着場を設けインバウンドを呼び込む構想も考えられている。

そのため都は防災船着場を先行的に整備する。加えて、浜離宮恩賜庭園側(環状第2号線の南西側)の敷地などにも新たな船着場を整備・運用、そして、市場跡地は船のターミナルとして民間活用される。

建物は市場跡地の南側(海側)が低層で、陸側(がん研究センター側)が高層になりそうだ。

東京都は提案された再開発のプランを学者ら都市開発・まちづくりの専門家も含めて審査して、最終的に落札者1グループを決める採用様式にするとみられる。


再開発エリア北側からのショット 右側の森が浜離宮恩賜庭園 撮影/内外不動産価値研究会+Kanausha Picks

開発には20~25年 長期のプロジェクト

世界最大級の魚市場の築地市場の存続をめぐっては、16年夏に行われた都知事選挙の争点にもなり、小池百合子氏が当選すると、直後の8月31日、土壇場に迫っていた11月の豊洲移転の延期を宣言。それから半年あまりの翌17年7月、都議会選挙の前になると「築地は守る、豊洲は生かす」という玉虫色の考えを打ち出し、移転賛成と反対の両派を惹きつけた。その結果、それまで少数の議席しかなかった小池知事の“私党”ともいうべき「都民ファーストの会」は都議会で半数近い五十数議席を確保し、第一党に踊り出た(その後離党者なども出た)。

しかし、選挙終了後、築地市場の豊洲移転が行われたため移転反対派は「騙された」「市場問題を政局、選挙のダシに使われた」と怒り心頭だった。豊洲移転が行われたその後は都民、国民の耳目は東京五輪へ移り、築地市場の再開発の行方についての関心は薄れていったわけだ。

市場が移転したあとの築地市場跡地の開発にあたっては、懸念される点もある。

そもそも築地に市場ができたのは、1923(大正12)年。関東大震災によって江戸時代からあった日本橋の魚河岸が全壊し、臨時的に築地にあった旧外国人居留地の海軍省所有地に開設したのがその歴史のはじまり。

江戸時代の築地には老中・松平定信が屋敷に築いた浴恩園(よくおんえん)という名庭園があった。そのため再開発にあたっては大規模な埋蔵文化財調査が必要になる。さらに、戦前は旧海軍の造船修理所、戦後はGHQクリーニング工場があったことも踏まえて、土壌汚染への対応が迫られる。

また、今後、計画される市場跡地内の地下鉄新駅の設置をどう再開発計画に盛り込むかなど、事業の長期化をもたらす3つの要因がある。このため、工事期間は20年~25年程度という長期間が想定されている。

SDGs、サスティナブル それらしい単語が並ぶが

東京都からは築地再開発は「東京ベイeSGまちづくり戦略」の推進にも役立つよう、まちづくりを進めていくとし、温室効果ガスを出さない街づくりの「ゼロエミッション対策」、国産木材の活用も強化していくという。さらにデジタルと先端技術の活用(人工知能技術やDX)と、コロナ禍を踏まえた施設整備運営における将来の新たな感染症の予防拡大防止についても具体策としてあげている。

実際、21年12月には、都議会都市整備委員会において再開発にあたっての「基本的な考え方」として、東京都都市整備局から築地地区の都有地(市場跡地)の活用案募集実施方針の方向性が説明されている。

それによると、南側に隅田川河口、西側には浜離宮恩賜庭園が広がる立地から、「水と緑に囲まれた都心の大規模な土地、歴史・文化資源などのポテンシャルを生かしながら、都心と臨海部を効果的に結びつけ、民間の力を最大限に活用して、東京や日本の持続的な成長につながるまちづくり」を民間提案者に求めるという。


旧築地市場跡地の再開発イメージ

これは東京湾のベイエリアの一角として「気候危機に対応し、海と緑の環境に調和したサスティナブルな次世代都市として、世界から人と投資を呼び込み、“成長と成熟が両立した持続可能な都市・東京”を先導するエリアとして発展していく」というのだ。

「食のテーマパーク」を打ち出した小池知事だったが、その後、都が公表した再開発方針からはこの「食のテーマパークを有する市場」の文言がなくなり、都議会においては「基本方針は何も変わっていない」と答弁するのみ。

その後は、東京五輪の1年延期、20年7月の都知事選挙再選、新型コロナのデルタ株の蔓延、東京五輪開催、晴海フラッグ訴訟、さらに自らの体調不良などによって築地跡地については大きくクローズアップされることはなかった。

築地市場の豊洲移転のストップをかけたところからはじまった一連の“小池劇場 築地再開発編”。

結局のところ、東京都が大手デベロッパーに低価格で土地を貸与し、丸投げ、タワマンと高級ホテル、オフィスと国際会議場という、新鮮味のない開発計画に落ち着くという、新鮮味のない開発計画に落ち着くという、おきまりのパターンになるのか? 22年の春には大型再開発計画の行方が明らかになる。

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この記事を書いた人

都市開発・不動産、再開発等に関係するプロフェッショナルの集まり。主に東京の湾岸エリアについてフィールドワークを重ねているが、全国各地のほか、アジア・欧米の状況についても明るい。

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