大手不動産の実験場・南船橋で始める 「スポーツ・エンタメ不動産」事業とは?(4/5ページ)
内外不動産価値研究会+Kanausha Picks
2021/06/30
とはいえ、Bリーグ関連の試合数は、年間35試合前後しかない。このため三井不動産は、ジェッツの親会社のミクシィに協力を求める方向で、音楽のライブコンサートなど各種イベントを検討中だ。このように南船橋案件は、三井不動産が進める「スポーツ・エンタメ不動産」が着々と進んでいるのである。
これらはTOB(株式公開買い付け)で非上場子会社にした東京ドームなどを活用した、「スポーツ・エンタメ不動産」の試金石ともいえるだろう。
三井不動産が目指す世界トップクラス
三井不動産は、「スポーツ・エンタメ不動産」を進めるにあたって海外事業者、霞が関にも接近している。しかも、三井不動産が狙う「スポーツ・エンタメ不動産」は、当然のことながらいまの日本にない業態で、規模やレベルも世界標準より上の世界最先端のものを目指しているようだ。
米国にはメジャーリーグ球団の著名なボールパークが多数ある。これらの施設は単なる球場ではなく、エンターテインメントやレジャー、街づくりを施したスタジアムだ。こうした施設の設計やコンサルのノウハウは欧米・豪州に蓄積されており、三井はさまざまな計画のなかで、ノウハウを持つ企業に発注するなどして、海外の知恵や経験の移入にも取り組んでいる。
その手本の一つが前出のAEG社である。
AEGの事業は実に多岐にわたっているが、どれも世界トップクラスの収益をあげている。
具体的にはコンサート業界では、売上高は首位のLiveNationの半分程度だが、世界2位。しかも、欧米では値上がりが続く不動産のスポーツ転用が得意で、自社所有のためにどれも収益率が高い。同社は世界中で100以上のアリーナを所有しているが、売上高世界トップ100のうち20以上がAEGグループの保有するアリーナだ。
しかも、ただアリーナの所有、管理運営だけでなくバスケットボールの「ロサンゼルス・レイカーズ」、サッカーの「ロサンゼルス・ギャラクシー」などの数々のプロスポーツチームを傘下におさめる。それだけにとどまらず、一流ミュージシャンや歌手とも契約しており、その中にはポール・マッカートニー、ボン・ジョヴィ、ローリング・ストーンズなどの名前も並ぶ。こうしたソフトを活用し、スポーツイベントはもちろん、音楽のコンサート主催、そのチケットの流通販売までも手がける。しかも、グループにはテレビ局、シネコンなどエンタメ関係の多数の事業を持ち、アリーナをフル回転させている。これらのソフトが同社の武器になっている。
この記事を書いた人
都市開発・不動産、再開発等に関係するプロフェッショナルの集まり。主に東京の湾岸エリアについてフィールドワークを重ねているが、全国各地のほか、アジア・欧米の状況についても明るい。