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大台に乗ったのもつかの間 東京の人口に生じた「変調」、その理由とは

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文/朝倉 継道 イメージ/©cooldesign・123RF

右肩上がりからの変調

「東京の人口に変調が生じている」などと言われはじめて、約1年になる。

東京都の人口といえば、ここ20年ほど右肩上がりの増加を続け、「ついに1400万人を超えた」とのニュースがメディアを賑わせたのが、2020年の6月のことだった。

このとき、都により発表された同年5月1日現在の推計人口は、1400万2973人だった。対前月比2万351人の増、対前年同月比8万1648人の増という、人口減少下にある国のものとは思えない数字をともなっていた。

ところが、“変調”は、その直後から始まった。同じ東京都公表のその後の数字を追ってみよう。

【2020年】
6月1日 … 1399万9568人(前月より3405人減)
7月1日 … 1399万9624人(同 56人増)
8月1日 … 1399万3721人(同 5903人減)
9月1日 … 1398万1782人(同 1万1939人減)
10月1日 … 1397万1109人(同 1万673人減)
11月1日 … 1396万3751人(同 7358人減)
12月1日 … 1396万2725人(同 1026人減)

【2021年】
1月1日 … 1396万236人(同 2489人減)
2月1日 … 1395万2915人(同 7321人減)
3月1日 … 1394万2024人(同 1万891人減)
4月1日 … 1395万7179人(同 1万5155人増)

このとおり、1400万人突破の翌月以降は、20年度いっぱいにわたって、ほぼ毎月人口「減」が続いた格好だ。

それが、やっと今年の4月に「増」となったが、これは例年どおりの予測された動きといっていい。4月は、進学や転勤などで、人々が東京に一気に押し寄せる月だからだ。

ともあれ、上記に見られるような長い減少傾向が続いた結果、20年の年間を通しての東京の人口は、プラス8600人にとどまっている(21年1月1日現在の数字から、20年の同日現在の数字を引いた数:1396万236人-1395万1636人)。

なお、この数字は、マイナスにこそなっていないものの、近年の傾向からは、本来予想しえなかったものといっていい。たとえば、19年の同じ数字はプラス9万4193人、18年はプラス10万3384人だ。こうした結果と比べれば、たしかに、東京の人口には変調が生じているというほかないだろう。

コロナが東京の人口増加の足かせになっている

では、その原因はなんなのか?

答えは、ほぼ「コロナ」一択といっていい。新型コロナウイルスによるコロナ禍は、間違いなく、東京の人口増に急ブレーキをかけている。

そこで、ある資料を紐解いてみたい。グローバル都市不動産研究所(株式会社グローバル・リンク・マネジメント)が、この3月に公表した「2020年、コロナ禍で東京の人口はどのように変化したか?」というレポートだ。

このなかに、20年における東京の人口動向にかかわる分析、いわば変調の正体が、簡潔にまとめられている。

そのひとつが、外国人の減少だ。ちなみに、東京都の人口の20年における年間の増減数は、日本人・外国人別でみると、日本人は3万9493人の増、外国人は3万893人の減となっている(差し引きするとさきほどの8600人となる)。

すなわち、外国人の東京(日本)脱出という、コロナ禍がもたらした人の大きな流れが、実は、東京の人口変調の一大要因となっているかたちだ。

さらに、同研究所が指摘するのが「ドーナツ化」だ。20年における、コロナの影響著しい4月~12月にかけての東京都から他道府県への転出について、同研究所が分析したところによると、大半が、埼玉、千葉、神奈川の近隣3県への移動を示すものとなっている。

なおかつ、東京・埼玉・千葉・神奈川の1都3県をまとめたうえで、他道府県との転入・転出の状況を見ると、こちらは転入が49万2631人、転出が39万3388人となっている。つまり、10万人近い転入超過となる計算だ(9万9243人)。

そこで、この数字をコロナ禍とは関係のない19年の数字(14万9783人)と比べてみると、たしかに3割以上を減らしているとはいえ、「1都3県から人口が大きく流出している傾向はみられない」というのが、同研究所の見方となっている。

すなわち、当レポートは、われわれに対し、若干の注意も促してくれているといっていいだろう。

「東京の人口」として、一般的には採り上げられやすい、行政上のくくりである東京都を区切っての数字と、都市としての実態である「東京圏」のそれとを見比べることの大切さも、どうやら指摘してくれているようだ。

都心離れはテレワークのせい? 家賃制約のため?

ともあれ、コロナ禍は、“東京都”の人口に対し、「外国人の流出」「東京圏内周辺部への分散」という主な2つの減少要因を与えたことはたしかなようだ。

このうち、周辺部への分散については、よく話題に挙がるような、テレワークによる通勤機会の減少や「密」を避けての移動もあると思われるが、実際には、住宅賃料を下げるための“避難”も大きな割合を占めているかもしれない。

グローバル都市不動産研究所 2020年、コロナ禍で東京の人口はどのように変化したか?

 

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