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内見案内中の強盗事件で昨年に続き容疑者が逮捕 不動産業界はどう対応するか

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文/朝倉 継道 イメージ/©samwordley・123RF

内見を装った事件、再び

「1年くらい前にも同じような話を聞いた」と、思い出した人も多いのではないか……。

入居者募集中の賃貸マンションの部屋へ、内見客を案内した不動産会社の30代の女性従業員が、刃物で襲われ、現金などを奪われた。

襲ったのは、いずれも住所不定・職業不詳の女(56歳)と、その養子とされる男(48歳)。2人は部屋探しの客を装い、初めから強盗目的で内見を申し込んでいた。

場所は東京の江東区。現場は物件内だ。事件は3月19日の午後に発生している。容疑者2人はその後行方をくらましていたが、4月に入り、今度は名古屋から東京までタクシーに無賃乗車した。その結果トラブルとなり、逮捕された旨、警視庁が4月11日に公表した。これを多くのメディアが伝えている。

容疑は、強盗致傷となっている。上記男女2人は、女性従業員に案内され部屋に入ると、突然カッターナイフのようなものを同従業員に突き付け、「騒げば殺す」などと脅したらしい。その際、同従業員の指に怪我を負わせたうえ、現金とキャッシュカードの入った財布を奪い取った。さらにカードの暗証番号も聞き出し、この日のうちに口座から約20万円を引き出している。

恐ろしい思いをしたであろう女性従業員には、気の毒というほかない。指の怪我が軽く済んだことのみが、辛うじて、不幸中の幸いだったといえるだろう。

一方、1年くらい前の同じような事件というのは、20年の4月25日に、神奈川県横浜市旭区で起きている。かなり凶悪な強盗殺人未遂事件が、やはり賃貸住宅内で発生した。

こちらでも犯行に及んだのは、部屋探しの客を装った24歳の男(当時)だった。不動産会社に勤める23歳(当時)の女性の背中などを刃物で刺し、現金の入ったバッグを奪っている。

2人は、女性が運転する会社の車で現地を訪れていた。男は犯行後、その車を奪って逃走。一方、女性は傷の一部が肺まで達する重傷を負いながらも、自力で部屋を脱出した。その後、路上で発見されている。なお、男は翌日すぐに捕まった。逃げた先は茨城県。そこで、ある施設の職員に自ら犯行を告げたことで、早期の逮捕に至っている。

対応策は? なかには実現が難しいものも 

この横浜の事件は、多くの賃貸仲介会社や管理会社にショックを与えた。警察署員に講師を依頼、同様の被害を防止するための研修を行う会社もその後出てきている。そこで、警察からはそれらの会社に対し、次のようなアドバイスが行われている。

・内見前に、免許証など客の身分証を確認する
・内見を案内する従業員には防犯ブザーを携帯させる
・同じく、現金や貴重品を持たせないようにする
・内見中は、外に声が届くよう物件の玄関ドアなどを開けておく
・案内に使う車の中や店舗に防犯カメラを設置する
・客と従業員が2人きりにならないように、できれば複数人で案内する

これらを全て行っている会社はもちろん少ないだろう。特にハードルが高いのは、最後の項目だ。「複数で案内をする」は、決め手の対策といえるが、どの会社も容易に実行できるというものではない。それでも、昨年に続いての今回の事件を受け、多くの会社が従業員を守るための方策をこれから講じていくものと思われる。

仲介関係者から聞いているなかには、「今後、女性の従業員には1人で内見案内をさせない。必ず男性従業員とペアを組ませる」というものもある。

しかしながら、そうしたくとも人手が足りず、常時それができない現場では、女性はいわば使い勝手の悪い存在となってしまう。ともすれば、活躍の場を失うことにもなりかねない。加えてそうした状況では、人材採用の面でも女性を選びにくくなるという悪い影響が出かねない。安全のため致し方ない判断ではあるものの、実に残念なことというほかないだろう。

なお、今回の江東区の事件では、容疑者の1人は、「女性の多い不動産店舗を選んで犯行に及んだ」旨、供述しているという。なんとも腹立たしいかぎりだ。

賃貸住宅オーナーが内見に立ち会うことで防犯

ところで、仲介・管理会社だけではない。物件の持ち主である賃貸住宅オーナーも、この件については関わりの深い立場にいる。

いうまでもなく、物件が今回の江東区や昨年の横浜のような事件の現場となり、その結果、万が一悲惨なことが起これば(すなわち、事故物件化すれば)、オーナーはそれによって甚大な被害を受けかねないということだ。

つまりこの問題は、仲介会社や管理会社だけが抱え込むべきものではない。オーナーとそれら会社側が手を携え、工夫し合って対処していくことが重要な案件となっている。

例えば、例は少ないが、内見の際にその場に立ち会い、入居希望者へ物件について説明するオーナーもいる。主な目的はPRであり、入居者の獲得だが、実は防犯面でも効果のあるやり方なのだといえるだろう。

よって、こうしたオーナーが少しずつでも増えれば、さきほどの「女性の活躍の場が失われる」問題についても、ほんのわずかながらこれを抑制する力となっていくことも考えられる。

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