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「住みたい街」で横浜はなぜ強い? 住みたい街を礼金率で比べてみる

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今年も横浜が1位の「住みたい街」

大手不動産ポータルサイトSUUMOによる「住みたい街ランキング」の首都圏版が今年も発表されている(3月6日)。各メディアが報道し、例年それなりの話題となるものだ。1~10位までを紹介しよう。

SUUMO住みたい街ランキング2025 首都圏版(総合)
順位前年順位
1位 横浜 1位
2位 大宮 2位
3位 吉祥寺 3位
4位 恵比寿 4位
5位 東京 9位
6位 池袋 7位
7位 新宿 5位
8位 品川 8位
9位 目黒 6位
10位 渋谷 11位

1位の横浜は8年連続、2位の大宮、3位の吉祥寺は2年連続となっている。

なお、このSUUMOのランキングは、アンケートに基づくいわば「人気投票」型のものだ。そのため、調査対象者が票を投ずるにおいては、その街への認知の度合いが強く影響する。すなわち、

「知らない街や、行ったことのない街、イメージの湧かない街に対しては投票の動機が得られにくい」

と、いうことになるわけだ。

そこでいうと、たとえば2位の大宮は、地元である埼玉県民(居住者)からの支持(投票に基づく得点)では圧倒的な1位に輝く。ところが、神奈川県民票においては55位まで後退してしまう。

一方、横浜は、地元神奈川県民からの支持が1位であるほか、埼玉県民の支持も高く、8位に推されている。

さらに、東京都民票を見ても、大宮56位に比べ、横浜は11位となり、ここでも差が大きく開くかたちだ。

千葉県民票に至っては、横浜は13位に挙げられるも、大宮は得点が及ばず、ランキングの発表対象外となっている。

すなわち、こうした認知の差・広さが大きな要因となって、両者は1位、2位の立場を別けている。

ちなみに、大宮に続く総合3位の吉祥寺は、過去より人気が高く、認知が広い街を代表するひとつとしてよく知られている。

そこで、内訳を覗いてみると、東京都民票では堂々の1位だ。

一方で、埼玉県民票23位、千葉県民票21位、神奈川県民票にあっては42位と、やはり横浜とは大きな差が生じている。

人気なのは、街なのか、駅なのか?

ところで、住みたい「街」とアピールされたり、採り上げられたりしがちだが、このSUUMOのランキングは、実際には「駅」のランキングだ。

そのため、横浜(駅)の1位に関しては、過去より異論も聞かれやすい。こんな指摘だ。

「横浜には、本来みなとみらい駅や桜木町駅といった駅に投じられるべき票が流れている。横浜(駅)は得をしている」

すなわち、

「横浜といえば多くの人が思い浮かべるみなとみらい地区のフォトジェニックな風景は、エリアとしての『横浜駅』のものではない」

と、いうことになる。

そこで、この辺り、実情を知る人が多いであろう、神奈川県民による地元票を見てみたい。

すると、こちらでは4位に桜木町(駅)が入っており、10位にみなとみらい(駅)が挙がっている。つまり、横浜(駅)は正しく(?)両駅に票を譲っているようだ。

そのうえで、前記したとおり、横浜(駅)は地元からの支持においてもやはり強く、結局のところ1位を獲得している。

よって、横浜(駅)が首都圏における「住みたい街(駅)」の総合1位であるというのは、地元におけるこうした状況も加味した上で、まずまずフェアな結果といえるだろう。

街としての横浜駅エリアは、たしかに暮らすにはとても便利だ。

国内最多となる鉄道事業者6つ(5社1局)が乗り入れる巨大なターミナルを挟んで、商業施設が積み重なるようにして集まり、利便性が詰まった密度の濃い街になっている。新幹線は無いが、もしもあったら大変だ。ますますすごいことになっていただろう。

なお、下記リンク先、SUUMOの報告書をご覧いただくと、横浜含め、総合ランキング10位までの街(駅)への支持における各都県民票のパーセンテージも知ることが出来る。

SUUMO住みたい街ランキング2025首都圏版 調査報告書

「借りて住みたい街」を探る2つのモノサシ

さて、そんなこんなの「住みたい街」だが、ここからは話を賃貸住宅にフォーカスしていこう。

賃貸マーケットにおいて、各街(駅)がどれくらい人々から支持を集めているのか。その点につき、ある程度浮かび上がらせる面白い方法があるので、お伝えすることとしたい。

ちなみに、誰もが思いつく単純なその答えとしては、「家賃相場」がある。

間取りなど、条件が同じ物件のデータを多数集め、家賃同士を突き合わせた結果、「A駅での相場は他の多くに比べ高い」と、いうことになれば、「A駅は賃貸市場における人気の街である」といえることになる。市場原理にのっとった推論、あるいは結論だ。

そこで、もうひとつ紹介するのは、この家賃相場以外にもあるユニークな「駅」対「駅」の比べ方だ。

それは「礼金率」となる。

なお、これを知るのは簡単だ。先ほどのSUUMOなど、大手不動産ポータルサイトの検索機能を使うことによって、すぐに弾き出すことが出来る。

もっとも、この指標は、かなりざっとした概数として導き出されるものであることはお断りしておきたい。

ポータルサイトに掲載されている物件は、その時点での入居者募集中の物件であって、当該「駅・エリア」における全部の物件ではない。加えて、システムの都合上、同じ物件が別物件として扱われる「統合漏れ」が一部に生じ、元データをまさに概数化させてしまうといった事情もあるからだ。

それでも、SUUMOやそのライバルのLIFULL HOME’Sといった、網羅性の高いサイトの数字を用いることで、賃貸マーケットにおける「駅」対「駅」比べについての面白い結果が、礼金率によって拾えたりもする。

「礼金率」の実際

数字の出し方はこうだ。

まずは、ポータルサイトで、条件を付けないかたちでひとつの「駅」を選び、そのまま検索をかける。すなわち、その駅・エリアに存在する掲載物件全ての数を把握する。

次に、検索条件に「礼金なし」を設定、再び検索をかける。

そのうえで、出てきた数字を先ほどの「全数」から引く。すなわち「礼金あり」の数を割り出すわけだ。

次いで、その数字における、全数に対する割合を見る。

結果、出てきた答えが、その駅(街)においての礼金率(礼金が必要な物件の割合)だ。

当然ながら、この数字が大きい駅の方が、礼金を払わないと借りられない物件の割合が高いことになる。

よって、礼金率が高ければ高いほど、その駅・エリアでは、オーナー(大家)が強気のスタンスに立てている。人気が高い駅(街)ということになるだろう。

実際の例をいくつか挙げてみよう。SUUMO賃貸「関東版」を25年4月6日午後のある時点で検索しての結果だ。

全数内、「礼金なし」での検索結果差し引き礼金率
横浜駅 11,320件 3,846件 7,474件 66.0%
大宮駅 17,625件 5,443件 12,182件 69.1%

このとおり、両者の数字はなかなかに近い。

ちなみに、SUUMO住みたい街ランキングでは1位、2位を分け、「2強」との報道もされていた両駅だが、実は得点はかなり開いていた。横浜1,607点に対し、大宮は1,088点と、大きな差がついている。

しかしながら、礼金率は上記のとおりだ。先ほど述べた、県外にまで及ぶ認知の広さという面ではともかく、お互い、足元では似た程度のパフォーマンスを見せているようだ。

そこで、次にこの駅を見てみよう。

千葉駅だ。横浜、大宮(さいたま市)と同様、東京隣接県の県庁所在地となる千葉市の中心駅となる。

全数内、「礼金なし」での検索結果差し引き礼金率
千葉駅 16,050件 9,248件 6,802件 42.4%

このとおり、横浜、大宮に比べると大幅に下がる数字となっている。

注目の駅が意外にも…

次に、下記2つの駅の礼金率を比べてみよう。

和光市駅と成増駅だ。両駅は、池袋から伸びる東武東上線上に並ぶ、隣同士の駅となる。

ちなみに、和光市駅はSUUMO住みたい街ランキングでは、十分に上位といえる28位に顔を出すツワモノだ。しかも、同ランキング「穴場だと思う街(駅)」では、21年以降常に2位か3位に輝いている(今回3位)。もはや穴場(認知が低い)を脱し、人気駅のひとつといっていい。

一方、成増駅はSUUMOのランキングには名前が見当たらない。発表されている230位まで(得点60以上)に届かなかった、いわば選外の駅となっている。

全数内、「礼金なし」での検索結果差し引き礼金率
和光市駅 3,575件 1,703件 1,872件 52.4%
成増駅 7,374件 2,529件 4,845件 65.7%

見てのとおりだ。

約13ポイントの差をつけて、成増駅の数字が勝る結果となっている。先ほど礼金率はあくまで概数と述べたが、このくらいだと有意な差があると見ていい。SUUMOのランキングでは和光市駅に比べ注目が薄く、不人気と思えていた成増駅だが、ここでは立場が逆転だ。

なお、前記したとおり、両駅は隣同士の駅となる。ただし、両者の間には、ある境目が実は横たわっている。埼玉県と東京都を分ける「都県境」だ。和光市駅は埼玉県側、成増駅は東京都側となる。

そのうえで、地元の賃貸市場では、あるブランド(?)の存在が過去より意識されている。いわば成増ブランドだ。こちら側に住むと「東京都民を名乗れる」のだ。

すなわち、SUUMOのランキングとは様子が異なる上記の結果は、主にはそうした“現実”が表れたものといえるだろう。

ちなみに、成増駅からは、近いルートだと徒歩15分ほどで埼玉県内に到達する。よって「東京都民を名乗れる」と、いま述べたが、「必ず」とはいえない。つまりこれは不正確な記述となる。実際には、成増エリアとされる中に埼玉県の物件はたくさん存在する。

そのため、地元不動産会社の注意深いスタッフなど、「この物件の住所は都内ではありませんよ」と、早い段階で客に念押ししたりもするそうだ。

―――以上、いかがだろうか。

ちなみに、礼金率を比べるにあたっては、紹介した単純なやり方のあとで、駅徒歩分数などの条件を加えた上で、さらに数字を見るのもよいだろう。

なお、途中で引き算をせず、礼金なし/全数=「礼金なし率」を求めるのでも結果は同じこととなる(不人気比べ)。

(文/賃貸幸せラボラトリー)

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賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

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