賃貸・部屋選び。「この物件、空室が多い」と気付いたら、理由を確かめよう
賃貸幸せラボラトリー
2023/11/12
もちろん(?)よくあるのはネガティブな理由
賃貸の部屋探し・部屋選びでの大事なヒントを伝えよう。
アパート、マンション…色々な物件を見ていて、“コレ”に気付いたら要注意だ。なぜそうなっているのか、理由を確かめよう。
“コレ”とは?
新築でもないのに、特に不人気な条件がありそうでもないのに、その建物にやたらと「空室が多い」ことだ。
なぜかは想像できるだろう。
何かネガティブな理由があって、入居者がなかなか決まらないでいるか、あるいはどんどん退去して行く状態になっていることが多い。
実例を挙げていこう。
やはり…! そこは事故物件だった
Aさんが内見を案内された、あるアパート。
ふと見ると、集合ポストのほとんどの差し入れ口にテープが貼られている。建築後2~3年しか経っていないはずのキレイな建物なのに、どうやら異様に空室が多い。
実はこのアパート、事故物件だった。
事故が起きたのは半年ほど前。発見が遅れたことなどにより、通常よりも事態が悪化、住人の一斉退去が起きてしまった。1室を除いて皆が去ったという。
ちなみに、Aさんがそのことを知ったのは、そこを案内した不動産会社ではなく、別の会社のスタッフの口からだった。
- 「今日の午前中に別の会社の案内で見て来た物件、ほとんどの部屋が空いてたみたいなんですが…」
- 「ああ、あそこは――」
の流れだったという。
とはいえ、案内をした会社を責めるわけにもいかない。Aさんが内見を望んだ部屋は、事故の現場となった部屋ではなく、フロアも違う別の部屋だったからだ。
この場合、Aさんから質問されるなどしない限り、会社側は率先して事故の事実を告げる必要がない。それが、現在のルールとなっている。
(ルール=国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」による。ただし、あとで入居者が驚いたり、トラブルになったりしないよう、ガイドラインに触れないケースでも告知する会社も少なくない)
お隣は機械の音がガンガン響く工場。しかしその日は…
Bさんがそのことに気づいたのは、内見に出発する前、不動産会社の店内で物件チラシ(専門的には「流通図面」などという)を見せられたときだった。
アパートの部屋の配置が略図になっていたが、半分以上に「空室」と記されている。
しかしながら、担当スタッフはこの物件を訪問したことがなく、事情も知らないとのこと。「行ってみれば理由がわかるかも」――ということで、2人は現地に向かったそうだ。
そこで、到着してみると、アパートの隣に建つのは工場。だが、その日は日曜日だからか、操業はしていなかった。周りはとても静かだ。
しかし、ここでピンと来たBさん、スタッフに「この工場、普段はものすごくうるさいのでは? 確かめてほしい」と、リクエスト。
管理会社に問い合わせた結果、答えは案の定だった。土曜日も含めてかなりの騒音が響いてくるため、長く住む人がほとんどいない物件だった。
ご近所の方が教えてくれた!
上記に似た例は多い。
ちなみに、物件をとりまく騒音に関しては、「建物が車通りの激しい幹線道路に面している」といった、現場に行けばすぐに判る例もあるが、そうでないケースもある。
以下は、いずれも内見の際、物件に空室が多いことに気付いた入居希望者が、現地で偶然見かけたご近所の方や、同じくその物件に実際に住んでいる人に理由を尋ね、知った情報だ。
- 「物件の正面からは見えにくいが、裏が流通施設。平日はトラックやフォークリフトの音が一日中絶えないそうです」
- 「お隣の雑居ビル、夜のお店がたくさん入っているので、酔った人の声やカラオケの歌声が夜通し響いてくるとのことでした」
- 「私は子どもの声は気にならないので入居しました。ですが、お隣の保育園の園児たちの声が平日うるさ過ぎるといって、退去された方が過去にいるそうです」
奇声と奇行の主がいた!
微妙な事例だが、記しておこう。
不動産ポータルサイトで部屋を探していたCさん。条件のよい物件を見つけたが、一点、あることに気が付いた。
「2階、3階、ほかの階でもいくつも募集が…。かなり空室の多いマンションみたいだな…」
そこで、訪問した不動産会社のスタッフに尋ねると、理由はすぐに判明したという。
スタッフ曰く――
「こちらのマンション、夜中に奇声を上げたり、建物内を徘徊したりする方が住んでいて、最近、状況がエスカレートしているそうです。怖がって退去される方が増えています。ただし、デリケートな問題なのでここだけの話にしておいてください。ともあれ、お客様に『どうしても』とお願いでもされない限り、当社ではいまはここは案内しません」
1階は繁盛店。しかしそのせいで…
こちらも不動産ポータルサイトで、あるマンションを見つけたDさん。ところが、さきほどのCさんと同じように、同じ建物に入居者募集中の空室がやたらと多いことに気付いたそうだ。
「原因はあの“虫”だそうです。黒くてテカテカの。建物内によく出るんだそう」
なぜ出る?
「1階に飲食店が入っているんです。長く続いているお店とのこと。おそらくそのためだそうです」
多くの油と、さまざまな食材を使う業態の店だ。
逆のケースも。聞いてみて安心しました!
ある物件を内見したEさん。
部屋は気に入ったものの、集合ポストに稼働している郵便受けが1つしかないことに気付き、
「さては事故物件では? 住んでいた人が一斉退去した?」
案内してくれた不動産会社のスタッフに対し、
「あなたが事情を知らないのなら、知っている人に聞いて確かめてほしい」
と、その場で頼んだという。
結果、理由はこうだった。
「実は、この建物、以前は賃貸物件ではなく、ある会社が自社の所有する寮として使っていたそうです。その会社が少し前に物件を売り、買ったオーナーが先月から賃貸に出し始めたとのこと。つまり、いまひとつだけ埋まっている部屋の方が入居者第1号です。ちなみに、寮だった時代も事故は一切起きていないそうです。ご安心ください」
Eさんは説明に納得し、その後ここに入居している。
以上、賃貸物件――賃貸集合住宅――での部屋選びの際の大事なポイントであり、バロメーターのひとつ「空室」について、いくつか実例を挙げてみた。
最後の例のような「調べてホッとしました」のケースもあるが、基本的には空室が多いことの理由はネガティブだ。
ポータルサイトの閲覧中、不動産会社の窓口で、内見の現場で――と、状況を知るタイミングはいくつかある。
- 「気付いたら確かめる」
- 「理由がわからないならば用心する」(警戒してそこは避けておく?)
アドバイスしておこう。
(文/賃貸幸せラボラトリー)
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この記事を書いた人
編集者・ライター
賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室