害虫襲来! 入居した賃貸で汚部屋――ゴミ屋敷に出会ったら・出会わないためには?
賃貸幸せラボラトリー
2023/04/27
入居した物件で汚部屋――ゴミ屋敷に出会ったら
住んでいる賃貸マンションやアパートに、汚部屋――ゴミ屋敷化した部屋が出現したら、あなたはどうするだろう?
あるいは、そんな部屋がある物件に知らずに入居してしまったら…?
以下は、数年前にそんな経験をしたある入居者の話だ。名前を仮にAさんとしよう。Aさんの場合、ある賃貸マンションに入居し、しばらく経った頃、物件内に汚部屋が出現した。
快適だったマンション生活のスタート
Aさんが選んだその物件は、首都圏某所に建つ賃貸マンションだ。部屋は最上階の角部屋、間取りはワンルーム。Aさんによると、ここに決めた理由のひとつに当人の「虫嫌い」があったという。
「それ以前は、古い木造アパートに住んでいました。そこではたまにあの虫が出て来ていました」
あの虫とは――?
ご存知、頭文字に「G」が付くあれだ。素早く床を動き回り、背中はテカテカと黒光りしている。長いヒゲ、トゲの付いた脚。誰もが知る家の害虫の王様だ。
「なので、次はなるべくあの虫が出ない部屋を選びたいなと。そこで調べたところ、部屋が高い位置にあるほど出にくくなるということで…」
決めたのが、今回のマンションだった。実際この部屋では、入居後1年半が過ぎてもGは一切現れなかったという。
「1年半、つまり季節がひと回りしてから半年です。その間一度もGが出なかったのですから、ある意味完璧です。これは素晴らしい部屋を選んだと、そのときはとてもうれしくなりました」
間もなく事態が急変
ところが、間もなく事態は急変し始めた。最初は共用部分の廊下だった。さらに階段で…
「出たんです。驚きました。私の部屋にこそ出ないけど、やはりこの建物にも彼らはいるんだと、かなりショックでした」
そのとき、ひどく嫌な予感に襲われたAさん。すると、GはほどなくAさんの部屋にも姿を現したという。
「最初に出て、それからふた月後くらいにまた出ました。次はひと月後、その次はひと月もしないうちに」
ついには…
「月に2度くらいは出るようになりました。もう恐怖です。混乱しました。最初の平和な1年半は一体何だったんだろう?」
突如の急展開となったこの状況に、Aさんはきっと原因があるはずだと、つよく疑いをもったという。
ゴミ屋敷のイメージ
時々ただよう悪臭は何?
GがAさんの部屋に現れるようになった頃から、建物にはほかにもある異変が生じるようになったという。
「たまに、廊下や階段がものすごく臭くなるんです。下水の汚泥のような、濡れた雑巾の水が腐ったような、耐えがたいニオイです。外出から戻り、エントランスに入る手前から、今日は臭い!と、すぐに判る日もありました」
出どころを明かそう。それは汚部屋の臭いだった。
汚部屋の住人は、Aさんがこのマンションに住み始めて約1年後に入居していた。部屋が汚れ出したのは、その後おそらく数カ月が経ってのことだった。
ほどなく、そこは足の踏み場もない「ゴミ屋敷」となってしまったらしい。
溜まった生ゴミや食べ物カス、洗われずに放置された食品のトレイなどが、ほかのゴミとともに大量に床に積み上げられ、腐臭を放ち、部屋の住人が玄関ドアを開け閉めするたびにそれが外に漏れて広がり、建物中に漂っていたというのが事の真相だ。
そしてある日のこと。Aさんはやっとその汚部屋の存在に気がついた。
ベランダを埋め尽くすゴミ
「ベランダが、ゴミやガラクタでうず高く埋め尽くされていました。ああこれだ、間違いない。原因はこれだ! と」
その日、たまたま建物の裏手に足を踏み入れ、各部屋のベランダを見上げたAさん。異様な光景を見たという。
「いわゆるゴミ屋敷の敷地と同じです。私もほかで見かけたことはあるんですが、それとまったく同じ光景が、私の住んでいるフロアのひとつ下の階の、私の部屋からは一番離れた部屋のベランダで展開していました。ゴミの山、山、山です。なぜか針金が複雑に絡んでもいました」
Aさんは、早速物件のオーナーに電話をかけたという。
「Gが沢山発生しています。出どころは多分〇号室です。調べてください!」
ちなみに、オーナーは個人ではない。ある会社を営む法人だった。その担当者曰く…
「ご迷惑をおかけしてすみません。実はもう苦情をいただいています」
そのなかでも特に切実な声は、汚部屋の真下の部屋からのものだったそうだ。
「そこは、ある方が事務所として借りていたそうなんですが、ほとんど毎日のようにGが出てくる、天井から落っこちて来ることもある、これでは出勤が怖いということで、私よりも数倍ひどい状態だったようです」
さらに、苦情はご近所からも入っていた。
「おたくのマンションからGが飛んでくる。洗濯物が干せない」
話は近隣への迷惑問題にまで広がっていたという。
手をこまねいているうちに…
となると、気になるのはすでに複数の苦情を受けていたこのオーナーだ。どんな対応をとっていたのだろう?
Aさんによると、
「電話を何度かけても、訪問してインターホンを鳴らしても、ドアを叩いても、汚部屋の住人からは何の応答もない状態が続いていたそうです。それでも真下の部屋(事務所)の方からは、上でしょっちゅう物音がする、夜は明かりも点くので本人が健在であることは間違いないとの話があり、それがかえって事態を長引かせていたようです」
要は、孤独死などの疑いがないため、オーナーはその点では安心し、対応が逆に悠長になっていたらしい。だが、そうしているうちに悪臭もさらにひどくなり、Aさんの部屋でのGの出現もますます頻度が増していった。
Aさんはついに、引っ越しを決意した。
画像はフィギュアによるイメージ
千の「G」で埋まった部屋
その後、Aさんが聞いた話によれば、オーナーは色々と手を回した末、汚部屋の住人をどうにかつかまえることが出来、説得し、退去してもらったらしい。
次いで、清掃業者が入り、部屋に放置された大量のゴミや家財の回収が行われたものの、汚損は床や壁のみならず天井にも広がっており、こびりついた臭いもひどく、部屋は一旦スケルトン状態にまで戻し、全面改装されることになったという。
そのうえで、害虫駆除業者が呼ばれ、壁裏や床下、天井裏にはまだGが潜んでいると見てそれらのあちこちを剥がし、くん煙剤――いわゆるバルサンを炊いたところ…
「おそらく千匹以上は転がっていただろうとのことでした。室内に逃れ出てきて死んだGだけでも、足の踏み場がなくなるくらいのものすごい光景になったそうです」
汚部屋――ゴミ屋敷がある物件の見分け方は?
以上、住んでいる賃貸マンションに汚部屋――ゴミ屋敷が発生してしまったAさんの事例を紹介した。
なお、このAさんのようなケースでは、事前にはそうした事態への遭遇を防ぎようがない。汚部屋をこしらえるような人があとから入居して来ないよう、まさに運を天にゆだねるのみだ。
一方、防げるケースもある。その建物にすでに汚部屋が存在している場合だ。そこに入居さえしなければ、とりあえず汚部屋との出会いはない。以下に4つの対策を紹介しよう。
1.建物の外側を見て回る
今回紹介したAさんの事例では、Aさんは、自らが住むマンションの裏手にたまたま足を踏み入れたところ、異常を発見した。
つまり、Aさんと同じように、マンションやアパートの各部屋のベランダやテラス、窓を見渡せる場所からじっくりと見渡すことで、汚部屋は結構高い確率で見つけられるものだ。
ベランダ、テラスにゴミやガラクタがうず高く積み上げられていたり、窓の内側に大量のそれらが見えていたり…。そうした場合、そこは汚部屋――ゴミ屋敷である可能性が少なくない。
もちろん、建物によってはそのような場所に足を踏み入れられないことも多い。踏み入れても全てのベランダ等を確認できないことも少なくない。
それでも、「ベランダや窓、1階であればテラスも見られる限り見ておく」――は、とりあえず汚部屋探しの基本といっていいだろう。
2.玄関の様子を見る
Aさんの事例では、問題の汚部屋は、玄関側の様子を見る限り異常はなかったとのことだ。
しかし、実際には、汚部屋の主が溢れたゴミやモノを玄関ドアの外にも積み上げてしまうケースが少なくない。
たとえば、汚れた衣類や靴、工具、家電やハンガー、雑誌、空き瓶、空き缶などがボロボロのダンボールに入れられてドアの横に積み上がっているといった場合、そのドアの内側は大抵推して知るべしの状態となっている。
階数が多く、多数の住戸が入っている物件での確認は難しいが、2階建てのアパート程度であれば、内見時に見て回ることは十分可能だ。
3.近所の方に聞く
物件を内見しているタイミングで、たまたまご近所の方が玄関先に出て来るなどしたら、いいチャンスだ。尋ねてみると重要な情報がもらえたりする。
汚部屋の存在だけでなく、夜中に騒音を出すなど、ほかにも迷惑な住人が住んでいないか確かめたい場合にも有効だ。
4.ズバリ、不動産会社に聞く
汚部屋が気になるなら、これをぜひおススメしたい。内見を案内してくれた不動産会社(仲介会社・管理会社)の担当者に、この物件にそういう部屋があったりはしないかと、ストレートに聞いてみるのだ。
そこで、もしもその会社が汚部屋の存在を把握していた場合、聞かれた以上「ない」といえばうそになる。告げないわけにはいかなくなる。
また、その物件を自らが管理していない会社の場合(いわゆる客付け・先物仲介会社等)、自らがそれを知らないことも多いが、多くの場合、管理会社などに問合せてはくれるだろう。
ちなみに、最近はそうした物件の内見を入居希望者が知らずに望んでも、「この物件はおススメしません」と、先に伝えてくれる会社も多い。あとあとのクレームを避けるためもあるし、いまどき不動産会社の多くはカスタマー・ファーストを心掛けているためだ。
とはいえ、こうした不動産会社に尋ねての汚部屋探索も、発見確率100%というものではもちろんない。管理会社もオーナーも、その時点では存在を把握していない汚部屋は、どこにでも存在していておかしくないからだ。
住人との直接交渉は避ける
最後に付け加えておこう。
多くの人が理解していると思うが、汚部屋の住人のほとんどは、自らが望んで部屋を汚したり、ゴミ屋敷化させたりしているわけではない。心の病など、コントロールできない難しいトラブルをかかえているケースが大半だろう。
よって、「住んでいる物件に汚部屋があると判った」「出来てしまった」といった場合、直接本人に苦情をぶつけても話が進まないことも多い。周りの迷惑はわかっていても、行動を止められずにいることが少なくないからだ。
個人が個人を責めるかたちとなりがちな直接交渉は避け、ノウハウを持つ(持たない場合でも責務として勉強してもらわなければならない)管理会社やオーナーなどに対応を任せるのが、汚部屋対応では肝心といえるだろう。
(文/賃貸幸せラボラトリー)
この記事を書いた人
編集者・ライター
賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室