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事故物件公示サイト運営者、大島てる氏に聞く(3)

【大島てる】事故の連鎖を招きかねない「脱法」リフォームを公開する!

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「突き当たりの物件」には要注意

——同じ物件で何度も事故が起こることがあると聞きましたが、そうした物件には何か理由があるのでしょうか?

大島:たしかにそういったヤバイ物件というものはあります。ただし、基本的には合理的な理由で説明できるものばかりです。

たとえば、風水で避けるべきとされている「突き当たりの物件」。こうした場所は、昔は馬が飛び込んでくるといわれていたのですが、いまは飛び込んでくるのが車なんです。一例をあげると、東京都大田区にある大森駅のすぐ近くの交差点。サイトで、大森駅を検索すると出てきますが、こういった場所ではT字路の正面にある建物に車が飛び込んでくるんです。このような場所はここに限らず、全国にあります。

 
出典/『大島てる』 「大森駅」で検索すると見ることができる

こうした場所は風水が盛んだった時代から嫌がられていますが、実は、現代でも嫌がられて当然な場所です。こうした突き当たりにあるお店にトラックが突っ込んできて、店員や客が亡くなった事故、運転手あるいは助手席に座っていた人が亡くなったという事故はたくさんあるのです。

多くの場合はスピードを出していて曲がりきれずに突っ込むのですが、なかにはドライバーが運転中に急病で亡くなったために、車がそのまま突っ込んでしまったというケースもあります。

不動産の観点からいえば、運転中に亡くなったか、事故の衝撃で亡くなったかはあまり重要ではなく、注目すべきは、もう一度、同じことが起こっても不思議ではないということなのです。なぜなら、立地に原因があるからです。ただ皮肉なことに、目の前が道路で見晴らしがいいですし、将来的に目の前に何か建物が建つことはない場所なので、不動産としては人気があるのです。

再建築できないから「柱だけ」を残してリフォーム扱いに!?


出典/『大島てる』 柱だけが残された台東区下谷の火事があった物件

——なるほど。事故が繰り返される物件は、その理由を合理的に説明できるのですね。

大島:もうひとつ、別の例をご紹介しましょう。場所は東京都台東区の下谷。ここは火事で人が亡くなっているのですが、火事があった家は公道に面しておらず、周りは住宅に囲まれていて、一見、いったいどこから入るのだろうと考えてしまうような場所にあります。

その答えとしては、細い路地を入っていかなければならないのですが、消防車も救急車も入れないような場所に家が建っているわけです。その結果、消火活動さえできれば、小火で収まるような火事であっても、死者が出るような火事になってしまう。

建築基準法にしたがえば、ここには家を建ててはいけないはずなのです。ですが、昔からある家は既存不適格、つまり家よりも法律のほうが後からできたからということで特別扱いされているわけです。

そうすると何が起こるかわかりますか?

サイトには黒っぽい柱だけが残っている状態の写真を掲載しているのですが、この写真にある柱は火事の後の残置物ではないのです。どういうことかというと、「柱だけを残してリフォームをしています」ということにしているわけです。建て替えではなく、もともとあった家をリフォームするという解釈ですから、これで建築確認を得ようとしています。

そもそも危険だからここには家を建ててはいけない、すでに家が建っている場合はいいけれど、再建築は不可だということになっているのにもかかわらず、このような脱法行為ともいえるやり方でまた家を建ててしまったら、もう一度同じことが起こってもまったくおかしくないわけです。実際には、この場所で複数回の火事があったわけではないのですが、私の目から見ればやはり危ないなと思います。

事故物件であることを隠蔽するなどあり得ない

——情報を公開することで事故の再発防止につながることも期待できますね。

大島:そうはいっても人間ですから、事故物件であることを隠そうとする人はいます。 賃貸物件であれば、事故後に入居者を入れようとすると、どうしても家賃を下げなければいけなくなります。隠そうとするのは、家賃を下げたくないからです。もちろん、家賃を下げることは義務ではありませんが、下げなければ入居者が見つからないわけです。

そうすると、以前の家賃であれば入居できなかったような人が入ってくる。語弊があるかもしれませんが、入居者の質が下がってしまうことがあるのです。

その結果、物件全体の環境がどんどん悪化していって、優良な入居者が出て行ってしまい、その後にまた質のよくない入居者が入るという負のスパイラルにはまってしまう場合もあります。実際に、一棟丸ごと風俗マンションのようになってしまった物件もあります。一度そうなってしまうと、簡単には元に戻せませんし、もう一度事故や事件が起きても不思議ではない状況になってしまいます。

——所有者にとっては手痛い話ですね。

大島:だからといって、隠すという選択肢はあり得ません。以前、アパマンショップホールディングスが、入居者の自殺があったことを説明せずに新たな入居者に部屋を貸して問題になったことがありますが、そのとき、「安く貸してくれるなら気にしないのに」というコメントがネットのあちこちで見られました。

ならば、そういう気にしない人たちのなかで信頼できる人に部屋を貸せばいい。家賃を下げるのは確かに痛手ですが、それでも空室のままよりはましですし、隠蔽したままにして裁判を起こされたり、嘘つきと呼ばれたりすることもないわけです。

ひとつのことで嘘をつく人間はほかでも嘘をつく

——こうした情報を出してほしくない人もいると思いますが、「大島てる」を運営していてトラブルになったことはないのですか?

大島:これもサイトに公開しているのですが、黒川■一という事故物件オーナーから情報の削除と損害賠償と謝罪を求める裁判を起こされたことがあります。

裁判の結果は、野球でいえばノーヒットノーランに匹敵するほどの完勝だったのですが、私は、自分が運営するサイトの精神に鑑みても、訴えられていることを隠すべきではないと考え、提訴された直後から「いま黒川■一に訴えられています」ということをすべて公開していました。

これは私の考えですが、ひとつのことで嘘をつく人間は、ほかのことでも嘘をつきます。事故物件を隠す大家が、嘘をついて敷金を返さないということがあっても何もおかしくない。ひとつのことで嘘をつく人間が、ほかの点ではすべて正直だなどということはあり得ないわけで、そういう意味では、事故物件を隠すか正直に告知するかが、ブラック大家を見抜くポイントのひとつになるのではないかと見ています。

『大島てる』が無料サイトである本当の理由

——「大島てる」の今後の展開についてお聞かせください。新たなサービスを提供することなどは考えていないのですか?

大島:ユーザーの方からコメントをいただいたり、イベントなどでお客さんから直接言われたりすることとして、「サイトの使い勝手が悪い」という声が少なからずあります。運営側としてはユーザーの声を聞いて、改善していければベストなのですが、そのためにはコストもかかりますし、無料サイトとしてはなかなかむずしいところです。

だからといって有料化する予定があるかといえば、それはいまのところ考えていません。有料化は情報を出すことにおいては壁になるからです。有料化することで一部の人しか情報にアクセスできなくなってしまえば、それは情報を隠蔽したい人を利する行為でしかありません。それは私がなんとしても避けたいところです。

有料サービスとして成功すれば、いまよりもずっとお金が儲かるのかもしれませんが、私はこのサイトで必要以上のお金を儲けようとは思っていません。ですから、私もなかなかお金儲けはできませんが、情報を隠蔽したい人たちもそれはできませんよというスタンスでやっていくのがいいと考えています。

◆◆◆

どんな話題でも表情を変えず、淡々と話し続ける大島てるさん。その言葉の端々から「情報を隠蔽させてはいけない」という強い意思が伝わってきました。声高に正義を叫ぶこともなく、ひたすら情報を集め、公開していく姿勢に決して折れることのない強さを感じました。

このサイトの存在によって、知らないまま事故物件をつかまされる人が減ることは間違いないことと思われます。

※編集部の判断により、大島てる氏の発言を一部非公開としております。

【第1回、第2回はこちら】
第1回 圧力があっても削除しない! 【大島てる】が事故物件にこだわる意外な理由とは?
第2回 【大島てる】事故物件はすべて晒す。気にするかしないかはあなた次第です


大島てる(おおしま・てる)
平成17年9月に事故物件公示サイト『大島てる』を開設。当初は東京23区のみの事故物件情報を公示していたが、その後、徐々に対象エリアを拡大、現在では日本全国のみならず海外の事故物件をも対象としており、英語版も存在する。「事故物件ナイト」をロフトプラスワンウエスト(大阪)にて不定期開催中。公式Twitter・Facebook・Lineアカウントがある。元BSスカパー!「ALLザップ」特捜部最高顧問。その活動は『ウォール・ストリート・ジャーナル』でも紹介された。取材・執筆協力した書籍に『大島てるが案内人 事故物件めぐりをしてきました』(彩図社)、『事故物件サイト・大島てるの絶対に借りてはいけない物件』(主婦の友社)がある。

大島てる CAVEAT EMPTOR: 事故物件公示サイト
http://www.oshimaland.co.jp/

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この記事を書いた人

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