賃貸借契約の流れと必要書類を知っておこう
秋津智幸
2016/02/18
必要書類の準備は早めに
物件探しを始める前に、入居までの流れをざっと把握して、スケジュールを立てておきましょう。また急ぐ人は、それぞれの手続きで必要になる書類や費用も事前に確認して用意しておきます。連帯保証人のお願いなどは早めにしておく必要があります。スムーズに入居まで進められるように、余裕をもって準備しておきましょう。
物件探しから申し込みまで
それでは、物件探しから入居までの流れを確認していきましょう。
(1)物件を探す
インターネットや雑誌、不動産会社でまずは情報収集し、物件を探します。物件を探し始める前に、まず自分の希望と条件を確認しておくことをおすすめします。自分の希望や条件をある程度具体的に決めておかないと最終的に不動産会社のいいなりの物件を借りてしまい、後悔することもあります。
以下に具体的なポイントをあげます。
(a)立地
沿線や最寄駅、駅からの距離(徒歩○分以内)など立地に関する条件を決めます。
(b)家賃等
家賃や管理費など毎月支払うお金の上限を確認しておきます。生活費を考慮して無理のない範囲内で家賃等の上限を確認します。
(c)広さ
一般的には間取りを優先しがちですが、広いワンルームもあれば狭い3DKもあるので、できれば広さを優先して決めておきます。目安は自分の持ち物をどこまで新しい物件に持ち込む(購入する)かです。
(d)築年数
賃貸住宅は同じ立地や広さでも築年数で家賃が変わってきます。古くなればその分安くなるのですが、耐震性能など築年があまり古くなると強度に差が出ますし、付属の設備も古くなるので、最低でも築○年以内というような感じで決めておきたい部分です。
(2)気になる部屋の内見
気に入った物件が見つかれば、不動産会社の方と実際に訪れて物件を内見します。
不動産は紙面上の情報からのイメージと実際がまったく異なることがあるので、実際に見てみないとわかりません。管理状態の悪い築浅物件もあれば、築年は古いのに管理が行き届き、その古さを感じさせない物件もあるからです。内見時のポイントは、次の通りです。
(a)物件周辺
お墓などの気分的に嫌な施設や工場のような臭気や騒音を発生する施設、学校など人が集まる施設など自分の思う生活に支障が出そうなものがないかも確認します。
(b)建物の共用部
特にゴミ置き場や階段、廊下などにゴミが散乱していないか、草刈はされているか、など管理の状態が見える部分なので、きちんと見ておきたいところです。
(c)部屋の内部
もちろん広さや設備などのチェックは重要ですが、最近は防犯面も気になるので、外から目線が部屋に届くかなどもチェックしておきたいポイントです。その物件が気に入ったら、部屋の内部を見る際、大きな家具を持ち込む予定なら、この時点で部屋のサイズを測っておきましょう。
(3)申し込みをする
物件を決めたら「申し込み」です。不動産会社が用意する申し込み用紙に必要事項を記入して提出します。この時点で連帯保証人も決めなければなりません。あらかじめ連帯保証人をお願いする人が決まっていれば、連帯保証人の住所、生年月日、勤務先住所、連絡先なども記入する必要があるので、事前に聞いて用意しておくのを忘れずに。
ただ、最近は連帯保証人を立てず、「保証会社」を利用するケースが増えてきているので、その場合は、保証会社の審査書類にも必要事項を記入し、審査申込みをします。(物件によっては、保証会社の利用が必須というものもあります。)
申し込みの際は、必要なものとして、以下のものが必要です。
・認印
・身分証明書(運転免許証等)
・住民票
・収入証明書(源泉徴収票等)
・連帯保証人の同意書等(連帯保証人の実印、印鑑証明書、収入証明書等)
入居審査から鍵の引き渡し
(4)入居審査
大家さんや物件の管理会社、保証会社などによる入居審査に必要書類を提出してから2~3日程度かかります。
申し込み時に提出した書類をもとにした入居に適しているかの審査です。
勤務先の状況(在籍確認を行うことが多い)、家賃と収入のバランスや連帯保証人の負担力などが審査の対象となります。
本人以外でも連帯保証人が不適格で、保証会社の利用が必須になることもあります。その場合は保証会社の費用が増えます。
(5)賃貸契約
入居審査が通れば賃貸契約へと進みます。賃貸借契約でも重要事項説明と契約説明が行なわれ、質疑応答の後、調印を行ないます。賃貸住宅では、契約日(正確には家賃発生日)までに以下の費用を支払い、その入金確認後に鍵を受け取ります。
入居(契約)時に必要な費用は以下の通りです。
・敷金、礼金
・仲介手数料
・火災保険料
・当月分家賃(日割り)と翌月分家賃
・鍵交換代や消毒料など
・保証料(保証会社利用の場合)
(6)鍵の引き渡し、入居
早ければ、契約の当日または家賃発生日に不動産会社や大家さんからから鍵を受け取り、入居となります。
念のため用意しておくといいもの
不動産会社や物件によって必要書類は異なりますので、物件が決まったら、事前に確認します。
(1)収入の証明
安定した収入があることの証明として、源泉徴収票や納税証明書、確定申告書などの提出を求められることもあります。連帯保証人を立てる場合、必ず収入証明が必要になるますので、事前にお願いしておきましょう。
(2)銀行引き落としの場合
家賃が銀行引き渡しの場合は銀行口座と銀行の届印が必要になります。事前に家賃の支払い方法を確認し、必要な場合は口座の開設手続きをすませておきます。
(3)学生の場合
入居者が学生の場合、必要書類も増えます。学生証、保護者の住民票、保護者の所得証明証などが必要になるのでお願いしておきましょう。未成年だとほぼ間違いなく保護者が契約することになりますので確認しておきます。
(4)入居者が複数の場合
契約者(入居者)本人だけでなく、入居者全員の住民票を求められるので事前に確認しましょう。
必要書類と費用の準備は余裕を持って
契約時には数十万円と大きな金額が必要になります。希望家賃では初期費用はどのくらいになるのか計算し、かなり前から準備しておく必要があります。印鑑証明や収入を証明する書類など役所に行く必要があるものや用意に時間がかかるものもあるので準備できるものは事前に用意しておきましょう。
この記事を書いた人
不動産サポートオフィス 代表コンサルタント
公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、AFP、ファイナンシャルプランニング技能士2級。 神奈川県住宅供給公社にて、分譲マンション、一戸建・宅地分譲、高齢者住宅等の新規不動産販売部門に従事した後、同社賃貸部門にて賃貸物件の募集、管理業務に従事する。その後、不動産投資専門の仲介会社を経て、不動産コンサルタントとして独立。 現在は「不動産サポートオフィス」の代表コンサルタントとして、自宅の購入、不動産投資、住み替え、融資など多岐にわたる不動産に関する相談・コンサルティングを行なう。その他、不動産業者向けの研修や各種不動産セミナー講師、書籍、コラム等の執筆にも取り組んでいる。 主な著書に、「貯蓄のチカラ~30歳からのおカネの教科書」(朝日新聞出版)、「失敗ゼロにする不動産投資でお金を増やす!」「賃貸生活A to Z」(アスペクト)がある。