賃貸「暖かい部屋」の選び方 寒い部屋から脱出できた4人の事例から学ぶヒント
賃貸幸せラボラトリー
2022/01/19
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寒い部屋は人を早死にさせてしまう?
「寒い住まいは健康によくない。住んでいる人の寿命までが縮んでしまう」――そんな衝撃的な内容の記事やコラムを数年前にインターネットなどで目にしたことのある人も多いはずだ。
出どころのひとつとして、国土交通省が2019年1月に公表した資料が挙げられる。「断熱改修等による居住者の健康への影響調査 中間報告(第3回)」というもので、いまも同省のサイトで閲覧することができる。
「室温が低い家では、コレステロール値が基準範囲を超える人、心電図の異常所見がある人が有意に多い」
「床の近くが寒い住宅では、さまざまな疾病・症状を有する人が有意に多い」
まさにわが家……!と、心当たりのある人ならばドキリとさせられるような知見がこの中で紹介されている。
そこでこの記事では、賃貸住宅の部屋探しをしている人、これからする人のために、寒い部屋を避け、なるべく暖かい部屋を見つけるためのヒントを示したい。
これらは、実際に部屋探しをし、引っ越したあと、「今度の部屋は前の部屋より暖かくて快適だ」とのラッキーな結果を手に入れた4名に対し、「新しい部屋はどんな部屋ですか?」と、その様子を尋ねた結果だ。
1.RCマンション&上下左右がほかの部屋でポカポカ
「前に住んでいた部屋は木造2階建てアパートの2階の端っこの部屋でした。窓が2方向にあって明るかったんですが、とにかくものすご~く寒かった!」
そう語るAさんが次に引っ越した先は、RC(鉄筋コンクリート)造5階建てマンションの3階の部屋だった。
「上下左右、四方向がほかの部屋に囲まれているワンルームです」
つまり、窓のある1面と玄関ドア側の1面以外は、壁、床、天井のすべてが他の部屋に接しているかたちだ。外気に晒されているのは2面のみ。ちなみに、Aさんが住んでいた前の部屋は4面が建物の外に接していた(壁3つと天井)。そのうえで……
「いまの四方の部屋はいずれも他の入居者で埋まっています。なので、私の部屋はそれらにいつも温めてもらっている状態なのかもしれません。以前の部屋に比べると、もう段違いの暖かさです。真冬の早朝でもベッドから出やすいです」
とはいえ、Aさん、入居前には心配していたこともあったそう。
「騒音です。接している部屋が4つもあると、うるさい人に出会う確率も当然上がるはずなので……」
しかしながら、幸いどの部屋の住人もマナーがよく、「いまのところは何の問題もなくホッとしています」とのことだった。
2.複層ガラス+樹脂サッシ+二重窓…その威力に感心!
住宅の仕様や性能にはほとんど関心のなかったBさん。いま住んでいる1Kの部屋にある大きな掃き出し窓を最初に開け閉めしたときは……
「うわ~重たい窓だなあ。内見のとき開けてみなかったのが失敗だった」
そんな感想だったそうだ。しかも、その重たい窓の外にはさらにもう1枚窓がはまっていて……
「いちいち2枚開けてやらないと窓が開かないのか。前の部屋は1枚で簡単だったのに、この部屋は面倒……」とさえ思っていたそうだ。
ところが、間もなく冬になると、今度の部屋は前の部屋よりも格段に暖かく、とても快適。そこで、やってきた友人に話をしたところ……
「それは多分窓のせいだよ。この部屋、賃貸では珍しいタイプの窓が入っている。二重窓で、しかもキミが重たいと言っている内窓は複層ガラスを樹脂サッシにはめた断熱仕様だ。これはあとから取り付けたものだね。オーナーさんがお金をかけてリフォームしてくれているんだよ。夏のエアコンもこれだとよく効いて涼しいはずだよ」
いくつかの研究によれば、冬は家の中の熱の50%以上が窓から外へ逃げ出していくとのこと。暖かい部屋に住みたいなら「窓」の仕様には要注目だ。
3.内廊下はおしゃれでカッコいいだけではなかった
まるでホテルのような雰囲気に魅せられ、家賃もちょっと奮発、カーペット敷きの「内廊下」が付いた物件を選んだCさん。初めて迎えた冬、あることに気付いたそうだ。
「玄関ドアが結露しないことです。外廊下だった以前のマンションの部屋では、冬はドアの内側に水滴が付くことがよくありました。とても寒い部屋でしたが、スチール製のドアが冷やされて、そこで空気も冷やされていたんですね」
一方、いまの部屋の場合、ドアの外は建物内を通る内廊下だ。外気に触れないため、ドアの素材は以前の部屋と同じスチール製ながら、さほど冷たくならない。もちろん結露も起こらない。
「高級感だけでなく、こんなメリットも内廊下物件にはあったんですね。選んでよかった」
自らのチョイスに大満足のCさんだ。
4.「広いロフト」「仕切りドア無し」仕様とはおさらば!
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「ものすごく寒かった以前の部屋。アパートの2階の広いロフトが付いた1Kでした。寒い理由はハッキリしていました。まずはロフトです。部屋をどれだけ暖めても、温かくなった空気はどんどんロフトへ上がってしまいます。床付近はいつまで経っても冷え冷えとしていました」
そう説明するDさん。しかも……
「その1Kはキッチンスペースと居室の間にドアも引き戸もないタイプでした。なので、玄関やバスルームのあるキッチン側から、床を伝って冷気がどんどん奥に流れ込んで来ていました」
そこでDさん、これでは耐えられないと引っ越しを決意――
「また同じ1Kを選んだんですが、今度の部屋はロフトが無く、キッチンと居室との間にはドアが付いています。以前の部屋よりも格段に暖房の効きがよく、いまはとても快適です」
ちなみに、前の部屋ではロフトは衣類や本などを置く場所としてそれなりに重宝していたそうだが……
「服や本はある程度断捨離して、残ったものは宅配型トランクルームサービスに預けることにしました。新しい部屋の方が家賃が安いので、トランクルーム代と合わせたコストは以前と同じです。ちなみに、暖房費の方はかなり下がりました」
暖かい部屋選びのヒントを4例挙げてみた。
賃貸に限らず、住宅の室温環境にはさまざまな内部・外部の要因が影響するため、例えば「内廊下物件は必ず暖かい」「二重窓の部屋は絶対に暖かい」など、一概にはいえるものではない。
それでも、暖かい部屋を手に入れる可能性を高めるためのヒントとして、紹介した4例はおそらく役に立つはずだ。ぜひ、参考にしてみてほしい。
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賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室