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賃貸一人暮らしの部屋で「同棲」したくなったらまずすべきこと

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イメージ/©︎paylessimages・123RF

同棲も半同棲も同じと考えよう

賃貸一人暮らしの部屋に恋人を招いているうちに、いつしか相手の「お泊り」が増え、同棲か、またはそれに近い状態になってしまう……。若いうちなど、特によくあることだ。

そこで、一人暮らししている部屋で同棲したくなったら、どうすればいいのか? 

なお、読んでいくと分かるが、いわゆる半同棲も、基本、同棲と同じと考えた方がいい。例えば、一週間のうちの半分程度、3~4日くらいはパートナーが部屋に泊まりに来るといった場合でも、周りへの影響を考えると、「同棲ではない。あくまで泊りが多いだけ」などと思うのはやめたほうがいいだろう。

つまり、以下のアドバイスをぜひ参考にしてほしいということだ。

まずは契約書を読み直す

一人暮らししている部屋で同棲したくなったら、あるいは、パートナーの宿泊が頻繁になってきたら……、まずは契約書だ。住んでいる部屋の賃貸借契約書を開いてみてほしい。

そして、3つの欄、もしくは条項を探し出す。

「居住者氏名」「物件使用目的」「禁止・制限事項」

この3つだ。なお、これらについては、契約書によって、表記のし方が大抵違っている。例えば、「禁止・制限事項」が、「禁止事項」「要承諾事項」「要届出事項」といった各項に分かれているなど、よく見られることだ。

なので、手元の契約書のどの部分が上記に該当しているかについては、各内容をしっかりと読み、適宜に判断していってほしい。

まずは「居住者氏名」欄だ。ここには入居者の氏名が明記されている。あなたがたった一人の入居者ならば、当然、書かれているのはあなたの名前のみだ。

次に「物件使用目的」を見てみよう。多くの場合、そこには「居住者氏名欄に記載の者の居住のみを目的として、本物件を使用しなければならない」などとあるはずだ。つまり、名前が書かれていない人を勝手に住まわせてはダメということだ。

よって、説明するまでもない。居住者氏名欄にあるのがあなたの名前のみであるならば、当然、その部屋では誰かと同棲してはいけないということになるわけだ(この段階では)。

そして「禁止・制限事項」だ。ここには、危険物の持ち込みや、楽器の演奏など、多くの「物件内でやってはいけないこと」の取り決めが明記されている。そこで、これらの中から、例えばこんなくだりを探してみてほしい。

「物件借主は、本物件の使用にあたり、物件貸主の書面による承諾を得ることなく、別表に掲げる行為を行ってはならない」

これは、裏を返せば、「貸主の書面による承諾を得た場合は、別表に掲げる行為を行ってよい」ということになるわけだが、そこで、指し示された「別表」を見てみよう。

すると、こんな記述が見つかるケースが多いはずだ(別表ではなく、条文内に直接書かれている場合もある)。

「居住者氏名欄に記載する入居人に、新たな入居人を追加(出生を除く)すること」

お分かりだろうか?

つまりは、さきほど挙げたように、物件使用目的の段階では「同棲はダメ」と、一旦シャットアウトされていたとしても、ここで状況は大きく違ってくる。すなわち、門前払いは、事実上撤回だ。

「同棲したいなら、貸主(大家・オーナー、あるいは窓口である管理会社)に相談してください」が、この契約書における最終結論となるわけだ。

ちなみに、以上のような契約内容のパターンは、単身用の1Kやワンルームにも、実は広く採用されている。2DKや1LDKなどいわゆるカップル向けの物件や、さらに広いファミリー向け物件ばかりに限らない。

なので、現在単身用物件に住んでいる人でも、ぜひ試しに手元の契約書を開いてみてほしい。かなりの確率で、上記と同じ“結論”が盛り込まれているはずだ。

他方、例は少ないと思われるが、「1名の居住のみ認める」「複数での入居は不可」など、複数人居住の禁止がはっきりと念押しされている場合は、もう仕方がない。その部屋での同棲は、スッキリと諦めることだ。

なぜなら、いうまでもなく、それはオーナー側の譲れない強い意志の反映にほかならないからだ。

また、繰り返すが、以上のようなことがらについては、契約書によって表記のし方や条文の構成等にそれぞれ違いがある。

例えば、物件使用目的や禁止・制限事項のところには何も触れられていなくとも、特約事項として、「貸主の承諾がなければ入居人員を増やせない」(=承諾があれば増やせる)などと記されている例も見かけられる。目をサラにして、よく探してみよう。

同棲を認められるのに大事なこと

そうしたわけで、契約書が上記に示すような「同棲相談可」の状態となっているのであれば、もはや躊躇する必要はない。

一人前の大人として、愛するパートナーと同棲を始めてよいか、オーナーや管理会社に堂々と相談をもちかけよう。

しかし、そうはいっても、「貸主の承諾が」と、さきほどから重ねて出てきているように、同棲をOKしてもらえるかどうかは、これらのケースでは当然オーナーの判断次第となる。

なので、もちろん結果として断られることもあるわけだ。残念だが、それは仕方がないことと考えよう。

では、その際、承諾・非承諾の決め手となるものはなんだろう?

誰もが思うのは、部屋の広さだろう。1K、ワンルームでは何やらイメージがよくなく、断られそうだが、1LDKくらいからなら大丈夫そう……そんな感覚だ。

もちろん、それもひとつの正解だろう。が、実はもっと大事なことがある。

何かといえば、それは普段の生活だ。あなたはこれまで、例えば夜中に人を集めて騒いだり、ゴミを分別せずに捨てたり、駐輪場に食べ物くずを放置したりなど、アパートやマンションという共同生活の場ですべきではないことをし、周りに迷惑をかけ、注意されたりしたことはないだろうか?

あれば、あなたは、オーナー側からしてみれば、出来れば早めに物件から出て行ってほしいお荷物な客かもしれない。

そんな客が「ツレをもう一人同居させたい」などと望んでも、「おそらくこの人と似たようなレベルの人がやってくるにちがいない」と、向こうは普通に思うだろう。拒絶されるのは、至極当たり前のことだ。

こっそり同棲・半同棲は不幸のはじまり

では、オーナー側には何も告げず、ひそかに、こっそり同棲・半同棲を始める……という判断はどうだろうか。

「パートナーとは真面目に付き合っているが、やはり申し出るのは恥ずかしい」

「自分の普段の生活ぶりからして、頼んでもどうせ断られる」

あるいは、「契約書のどこを見ても入居人員の制限に触れられていない。これなら勝手に同棲を始めても文句をいわれる筋合いはないだろう」(=そもそも不備な契約書ということになる)など、さまざまな理由があるだろう。

だが、結論は「それはやめておきなさい」だ。

物件が単身用の場合は特にそうだ。なぜなら、こうした「勝手に同棲・半同棲」は、高い確率で周囲の苦情を呼ぶことになる。

理由は騒音だ。とりわけ、同棲カップルが暮らす部屋からは、何かと声や音が漏れやすくなる。しかも、それが深夜にまで及びやすい。周りが単身住まいだと、そのことが特に際立つ。

なので、ひそかに同棲・半同棲状態がスタート、周りの部屋からオーナーや管理会社にクレームといったかたちが先に生じると、そのあとで同棲したいと申し出ても、「なぜ早く相談しない」「周りはもう迷惑している」と二重の腹立ちがオーナー側に生じていて、大抵は取りつく島がなくなる。これは実際あちこちの賃貸住宅で日々起こっていることで、大人として恥ずかしく、情けないパターンだ。

であれば、こんなやり方はまともな成人男女が選ぶべくもない。答えは、当然「先に相談」だ。

先に相談し、そこで同棲を“公認”されてしまえば、もしも周りから苦情が出ても、オーナーや管理会社は、両者の調整役を担うべき立場となる。相談せずに勝手に同棲を始めた契約違反の入居者を叱るような、一方的な立場には立てなくなるということだ。

もちろん、騒音被害は、受ける方は深刻だ。指摘された方は、迷惑をかけないための努力が当然必要となる。

ほどよい解決のし方を考えていくうえでも、最初に踏むべき手続きを踏み外すことは決してしないほうがいい。

「勝手に同棲」は軽い気持ちでもオーナーにとっては緊張の場面

最後に、多くの賃貸住宅の入居者が知らないことを伝えておこう。

実は、賃貸住宅の入居者が、オーナーに黙って勝手に同棲を始めてしまうこと、もっと広くいうと、勝手に同居人を増やしてしまうことは、入居者側が思っている以上に、オーナー側にとっては深刻な事態と受け取られる。

なぜか? 理由のひとつは、もちろん、素性の知れない人物が物件内に常時滞在する状態をつくられることへの不安だ。これは、自身がオーナーの立場に立ってみたらと想像すれば、誰もがすぐに理解できることだろう。

もうひとつ、ほとんどの入居者が知らないこととして、こうした件では、実はある弱みをオーナー側がはじめから背負わされているという事実がある。

それは、「信頼関係破壊の法理」と呼ばれるものだ。

聞き慣れない人も多いと思うが、裁判の場面で示される、司法上の論理のひとつだ。ごく簡単にいうと、こういうことになる。

「入居者が契約を無視してオーナーに相談なく勝手に同棲を始めた。オーナー側としてはこんな入居者にはすぐに出て行ってほしいが、今回の契約違反だけを理由にそれを求めても、万が一、入居者側との裁判になれば負ける可能性がある」

つまり、「契約を破られた。この人との関係は今後不安だ」だけでは負ける可能性があるのだ。

では、裁判に勝つためにはどうすればいいのかというと、オーナー側は、その同棲行為によって、オーナーと入居者との間の信頼関係が破壊されたか、もしくは破壊されるおそれがあることを明確に示す必要がある。なお、「明確に」とは、「裁判官に認めてもらえるかたちで」ということだ。

つまり、裏を返せば、賃貸住宅の入居者にとって、司法は基本的に優しく、手厚いのだ。仮に3人のジャッジがそこにいるとすれば、そのうち1人をはじめから味方につけているようなものといえるだろう。

とはいえ、賃貸住宅での「勝手に同棲」問題が、こじれた挙句、法廷にまで持ち込まれることは実際ほとんどないはずだ。なので、以上はオーナー側の杞憂といっていい。

それでも、とにもかくにもこの法理があるために、入居者側としてはほんの気軽な思いで、無断で同棲を始めたつもりでも、オーナー側にとって、入居者側が思っている以上の緊張状態を強いられるというわけだ。

このように、相談なしの勝手に同棲が、ますます罪深いことが誰しもよく分かるだろう。

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この記事を書いた人

編集者・ライター

賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

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