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賃貸借契約における敷金とクリーニング特約のいびつな関係性と内見数減少が示すいまどきの部屋探し (1/2ページ)

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文/朝倉継道 構成/編集部 イメージ/©︎Katarzyna Białasiewicz・123RF

賃貸契約者動向調査 注目すべきは敷金と礼金

9月1日、リクルート住まいカンパニーが「2019年度 賃貸契約者動向調査(首都圏)」を公表した。賃貸住宅を取り巻く業界関係者が例年注目しているレポートだ。

注目すべきトピックは敷金と礼金に関する数値だ。敷金の平均月数は2005年度の調査開始以来、ほぼ一貫して下がってきているが、今回の調査では少し戻している。具体的には05年度の敷金が平均1.7カ月分、以降はそのまま下落し、18年度には平均0.9カ月分となり、そして19年度には平均1.0カ月分となった。

この傾向を探るに、同調査内の「敷金ゼロ物件の契約割合」の増加にブレーキがかかっていることが挙げられる。特にひとり暮らし世帯でその様子が顕著だ。

敷金ゼロ物件の契約割合は、05年度が7.4%、18年度が28.1%と過去最高となり、19年度は25.5%と少し下がる。これをひとり暮らし世帯に限定すると、05年度が8.2%、18年度が38.5%、19年度は30.1%と、下落はより顕著となる。

一方、礼金はどうだろうか。

「契約した物件の礼金」は全体の数値こそ、ここ3年のあいだ平均0.7ヶ月分と横ばいだが、中身を覗くとそうでもない。ひとり暮らし世帯における「礼金ゼロ物件の契約割合」は、18年度が47.3%、19年度が42.5%とマイナス4.8ポイント。また、ファミリー世帯における同割合は18年度で46.4%、19年度で38.7% とマイナス7.7ポイントの下落となっている。19年度は敷金ゼロ・礼金ゼロ物件ともに程度の差はあれ、契約割合が下がった年であるといえる。

敷金とクリーニング特約のバーター関係

敷金・礼金をより多く預かり、もらえるという意味では賃貸住宅オーナー側に有利といえる方向性だろう。ただし、これが今後のトレンドとして続くのかといえば疑問符が付く。今年は新型コロナウイルスによる感染拡大がすべての経済分野に影響を及ぼし、不動産業界、賃貸住宅業界における動向を含め、いわゆるアフター・コロナについては、いまは誰も予想図を描ける段階にはない。

19年度を除いた敷金の下落要因については、原状回復費用に関わる特約の普及状況が対になっていると考えられる。いわゆる「退去時クリーニング代」の約定だ(入居時に支払うケースもある)。

原状回復費用は、経年劣化や普段の生活で自然にできたキズはオーナー負担、入居者の故意や過失によるキズは入居者負担が原則だ。しかしこのクリーニング特約を条件に部屋を貸すというオーナーは多い。つまり「敷金はいりませんが、クリーニング代はお願いしますね」ということだ。

これについて業界関係者はこう話す。

「クリーニング特約に関しては、ほぼすべての管理会社が契約時に付けています。これはオーナーサイドからの要望があるのはもちろんですが、ほかにも理由があります。それは入居希望者がポータルサイトで部屋を探すとき、少しでも費用を抑えたいため、『敷金なし』『礼金なし』にチェックする傾向があるからです。サイト上で『敷金なし』もしくは『礼金なし』にしておかないと、そもそも入居希望者に物件の存在を知ってもらうことすらできない。そういった理由で敷金をなしにする代わりにクリーニング特約を付けることが主流になっているのです」

ポータルサイトでの部屋探しが、敷金とクリーニング特約を、ある意味バーター関係にしているともいえる。 


賃貸借契約書 クリーニング特約の箇所。しかし、クリーニング特約については、その是非が論じられている

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