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昔からあった「道路族」の問題 なぜ深刻化?

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文/朝倉継道 イメージ/©︎jedimaster・123RF

近隣トラブルの原因 「道路族」

○○族――古くは1950年代の享楽的な若者を指す「太陽族」や、80年代に原宿を席巻したダンスムーブメントの「竹の子族」、身近なところでは「暴走族」といったように、族がつく言葉にはさまざまなものがある。

そして最近よく使われるワードに「道路族」というものがある。

一昔前までは、この言葉は政治の話題でよく耳にする言葉であった。いわゆる「族議員」の一つとして、道路族という俗称が存在したのである。主に「道路行政」に精通した国会議員の一団を指して、若干のひそみを加えつつ、彼らを呼ぶときに使ったものだ。

一方、近年の「道路族」といえば、政治の話ではなく、地域の抱える問題としての道路族となる。この場合の道路族とは、住宅地などの路上で、日常的に、長い時間にわたって遊ぶ子どもや、その親たちのことをいう。そしてこれらが騒音源として、さらには住民間トラブルの原因として各地で問題となっている。

道路族 クローズアップされたのは今春から

この道路族、以前に増して大きくクローズアップされるようになったのは、今年の春頃からだ。その要因の一つに新型コロナウイルスが挙げられる。いわゆる“コロナ休校”によって行き場を失った子どもたちが、路上にどっと増えた。それとともに、道で遊ぶわが子を見守ろうと、親御も外に出てくるように。すると、井戸端会議が自然にそこで開かれ、ついつい話に夢中になり、「子どもの叫び声に大人の話し声、笑い声。うるさくてノイローゼになる」と、悩む近隣住人を大いに増やした格好だ。

「Googleトレンド」というサイトがある。これはGoogleで検索される検索ワードの増減をグラフと数値で確認することができる。

そこで、この「道路族」をチェックすると、今年の3月を迎えるや、はっきりと増加トレンドに乗り始めている。その後、4月に入ると一気にグラフが伸び、5月のゴールデンウィーク頃には、検索数レベルが100を示すほどのピークに達している(相対的に他のワードを圧倒している状態)。その動きは、まさに「コロナ」の拡大と軌を一にする。

次いで、6月7月と、数値はやや落ちていくものの、道路族という言葉は、この間、速度をグンと増すかたちで世間に広がっていった。そのため、グラフは8月に入っても、もはや3月以前のようなレベルに下がることがない。道路族は、今年前半の国内で、もっともポピュラリティを獲得したであろう、要注目ワードのひとつとなっているのだ。

道路族による被害や迷惑といわれるものは、子どもの歓声や親の話し声などの「音」だけにとどまらない。よくいわれるのが、ボールを追って子どもが他人の家の庭やカースペースに入り込んでくるなどの事例だ。花壇を踏み荒らされる、クルマを傷つけられるなどの物理的損害が、怒りの対象として挙げられている。

また、ゴミ問題もある。スナック菓子の袋など、ゴミを敷地内に放置されるといった例もよく聞かれる。

ついには、それらに悩んだ挙句、「近所で子どもが騒ぎそうな日は家を逃げ出して実家に避難する」「毎日耳栓をしてしのぐ」「少しでも音から離れた部屋に籠る」と、いった人が現れたりもしている。

さらには、「マイホームを手放して引っ越すことを検討している」「訴訟の準備をしている」「すでにそうした」、そんな人もいると伝えられるほど、道路族はあちらこちらで問題化しているのだ。

昔からあった道路族の問題 なぜ深刻化?

とはいえ、「道端での子どもの大騒ぎや井戸端会議など、はるか昔からあったことじゃないか。なぜ今になってそんなに深刻化しているのか?」と道路族問題に関しては、これを不思議だとする声もよく聞かれる。

たしかに、これらがもっと盛大で普通だった過去を知る目には、道路族問題はやや不思議に映る。それこそがまさに時代の違いであろう。加えていうならば、一つには、「昭和の昔は当たり前に他人の子どもを叱れたが、いまはそれができなくなっている」ことが、おそらく背景として大きいのではないか。

「他人の子どもを叱れば、即、大人同士の深い軋轢になる」

これは、昭和の時代にはかなり珍しかった、ほぼ平成以降に育まれたといっていい、社会のメンタルである。なぜそうなったのかの理由はさておき、このことは心の重い手枷足枷となって、近隣関係に悩む人における近隣関係そのものへの不安や恐れをさらに増大させている。

すなわち、子どもや井戸端会議の声が、「うるさい」を超えて、「怖い」「恐ろしい」といったように、その場での生活の未来を塞がれるような感覚のものになっている点が、道路族問題の本質では? と、個人的にはそう考えている。

ちなみに、道路族は、その多くが一戸建ての並ぶ住宅地で発生するといわれているが、道路族問題とやや似たトラブルは、賃貸住宅でも起きている。

殺人事件にまでいたった例が、この5月に発生している。東京・足立区のアパートに住む60代の夫婦のもとに、時折子どもを連れて遊びにやってくる息子の身に悲劇が起こったのだ。一家が現れるたび子どもの声がうるさいと、業を煮やしていた隣室の住人が、突然刃物を持って乗り込んだのだ。息子は刺されて死亡、幼い子どもは父親を失ったかたちとなった。

事前の細やかな対応で結果が変わる

一方、筆者が以前より面識のあった、とある賃貸住宅オーナーは運営していたファミリー向けの物件に、新しい入居者が入ると必ずある準備をしていた。

それは当人ご家族の許しを得たうえで、家族構成を周りの部屋の人にあらかじめ伝えておくというものだ。

特に、新しく入居する家族に小さな子どもがいる場合は、そのことを入念に告げ、「声や音など、ぜひご寛大に」と、お願いしていたという。加えて、「もし、困った際は遠慮なく私に」と、フォローの約束もしていた。

結果的には、これがよい結び目となることで、入居者同士のコミュニケーションが生まれ、「見知っている相手の出す音はさほどうるさく感じない」ということで、この物件でトラブルが起こることは、ほとんどなかったという。

そこに照らしていえば、道路族問題は一方が悩むだけでなく、当事者同士が直接ぶつかり合い、あいだに立つ人がいない状態となっていることも根深い要因である。

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